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屋久島漫遊記 その2 2-3日目 縄文杉~伊丹

 2日目
 縄文杉ツアーの朝は早い。4時にロビー集合なので起床は3時半。
 急いで身支度を整えてロビーに行くと、「おはようございます」と添乗員さんのにこやかな挨拶に迎えられました。あれ? この人、「12時くらいまではここにいますから」と昨晩の食事会場で言っていた人ですよね。双子でなければもしかして寝ていないのか。
 謎は深まるばかりですが、これは朝食と昼食ですと言われてビニル袋を渡され、その足でお迎えのバスに押し込まれました。驚いたことに、こんな早朝にもかかわらず半分くらいの席は埋まっています。どうやら各ホテルや旅館などでツアー客やガイドさんを拾って登山口まで行く様です。

尾之間からバスで荒川登山口 そこから徒歩です

 停留所で人が乗り込んでくる度、顔見知りのガイドさん達なのでしょうか、やあやあお久しぶり、今日は格別多いですねなどと楽しそうです。そうこうしているうちに5時過ぎには縄文杉ツアーの起点となる荒川登山口に到着。天候は安定の大雨。休憩所で雨具を装着して朝食なのですが、休憩所内は大混雑。眠いのと人いきれに疲れたのか、気が付いたらゆで卵の殻に塩をかけていました。

塩、染み込まんよね……

 食欲がないので、草とハムだけを口に入れて外に出てみると、トイレ待ちの長蛇の列ができていました。ガイドさんによると、本日は一年で一番登山客が多い日であるとのこと。そのため、もたもたしているとこの先のトイレ行列が長くなるので、前半は飛ばしていきますよと。

トイレは長蛇の列 
青いウエアのガイドさんはこれくらいの雨では傘もさしません

 今回の登山グループは7人。片道5時間半11kmの道のりなので、挨拶もそこそこに早速出発です。まずはトロッコの木道を8.5km歩きます。平地だから楽ちんと思っていたのですが、雨で気分が乗らないうえに微妙に上り坂。しかも、足元がグラグラして歩きにくい事この上なしです。一年で一番混んでいる日だけあって、登山客は途切れることはなく、まるで蟻の行列。万が一はぐれても道に迷うことはなさそうです。トンネルあり、橋あり、ひたすら歩くこと3時間、ようやく木道の終点まで到着しました。ここでトイレを済ませてやっと登山が始まります。イントロ長すぎ。

蟻の行列
トンネルあり
橋あり 意外と最近リニューアル
木道終点のトイレ 大混雑

 登りだすと途端に険しくなります。ストック突きながらの本気の登山です。40分ほど登ったところで突然広場に出ました。ガイドブックに必ず乗っているウィルソン株です。ただの切り株なのですが、これがとんでもない大きさ。400年ほど前に伐採されたとのことですが、もったいない話です。ここは中に入れます。中も相当な広さで10畳くらいはありそうです。切り株を見上げると、普通の切り口ですが、ある一点から撮影すると、あーら不思議ハート形に変わります。

ウイルソン株から見上げると普通の切り口
ある一点から撮影すると、インスタ用画像に
撮影ポイントはガイドさんが絶対知っています

 ウィルソン株を過ぎるとまた険しい山道です。途中、屋久島サルがいたり、こだまがいたり。

野生のサル
こだま 野生?

 速足で大王杉や夫婦杉などをチラ見して、出発から5時間で縄文杉に到着しました。

疲れていたのか、看板しか撮影していませんでした
とにかく歩きます その辺の杉も普通に1000年超

 縄文杉の前には見物台が設置されており、遠目からの観察になります。しかも、大雨で良く見えません。ガイドさんに、もう来られないかもしれないのでしっかり目に焼き付けてくださいと言われるものの、真っ白です。
 よくできた旅行記ならこのあたりで晴れ間が出て来るくだりなのですが、この旅ではそんなサプライズは起きません。前世で何か悪いことでもしたのかしらんと思うほど、雨は強くなる一方です。
 昔はもっと近くまで行けたのですが、数年前に見物台が設置されたとのことです。なんと無粋な。何枚写真を撮っても真っ白なのですが、昼食を含めて20分ほどの滞在で撤収です。というのも、帰りのバスの時間が決まっているのです。

縄文杉、真っ白……
望遠で撮っても真っ白

 行きは良い良い帰りは恐い。下り道でどうやら左膝の内側側副靭帯を痛めたようで、膝が伸ばせなくなりました。ストックを突きながら這う這うの体で下山して、ここからまた8.5㎞の木道です。後続のグループにガンガン抜かれて3時間かけてようやく荒川登山口に帰還。余裕がないので帰りはほぼ写真なし。

荒川登山口まで戻ってきました

 ホテルに着いてバスから降りる際も、ストックを杖代わりにしてでないと膝が痛くて歩けません。情けない話です。しかしながら、後で聞いた話ですが、別動隊の白谷雲水峡トレッキングチームは、大雨のためトレッキングコースが川の様になっていて催行中止だったそうです。恐るべし屋久島のラッキョ雨。縄文杉は真っ白だったのですが、たどり着けただけでもラッキーだったのかも知れません。
 くったくたになってホテルに戻って、まずはお風呂です。
 いわさきホテルのある尾之間地区はアルカリ温泉です。温泉成分分析表を見てみるとpH9.6となかなかのアルカリ具合。疲れをとるというよりも皮膚を清浄にする、いわゆる美人の湯系統です。さて、湧出量はと探しますが書いていません。しかし二枚目に手掛かりがありました。内湯は循環ろ過しているけれども露天は加水のみですよと親切に書かれております。内湯で暖まった後に露天風呂にじっくり浸かり、疲れが取れたかは知らないけれどもお肌すべすべになって一日を終えました。

大浴場 ホテルHPから拝借
温泉成分分析表 アルカリ温泉
露天は加水のみ OK!

 3日目
 耳なし芳一の様に全身シップだらけにしたおかげで思ったほど筋肉痛は来ていません。でも、年なのでたぶん明日以降に出るのでしょう。
 本日は帰るだけかと思っていたら、千尋(せんぴろ)の滝を案内すると。バスに乗って30分ほど。膝を引きずりながら短い遊歩道を歩いた先に大きな滝がありました。屋久島自体が大きな花崗岩でできた島なので、滝の左右も一枚岩です。このつるっとした岩肌で、ファイトー!イッパアァーッツ!でおなじみのリポビタンDのCMが撮影されたそうです。

ファイトー!イッパアァーツ!

 余談ですが、宮崎駿監督は屋久島がお気に入りのようで、もののけ姫のロケハンに何度か来ていたようです。千と千尋の神隠しでは、滝の名称を主人公の名前にしてみたり、果ては作中の養豚場の音は屋久島の養豚場で録音していたなんて言う話もあります。エンドロールにも屋久島養豚場のみなさんと書いてあるようですし、強(あなが)ち嘘でもないような気もします。  
 滝の見学を済ませると空港近くまで行ってから昼食です。トビウオのフライなどがどっさり乗った定食ですが、刺身の中に天然の縞鰺が入っていました。三宮の鮨屋でもめったにお目にかかれないのに……。恐るべし屋久島。

右上の刺身に縞鰺が混じっていました

 昼食を済ませて食堂併設の土産物屋で少し物色したのち、屋久島空港に向かいます。
 空港に着くころには、ようやく雨は止んだものの、しかしこれがまたとんでもない強風が吹いているのです。空港職員と話し込んで、浮かない表情の添乗員さん曰く、「飛行機来ないかも……」 ええっ! 屋久島空港はプロペラ機なので、本土から来た飛行機があまりの強風時は引き返すことがあるそうです。
 それでも添乗員さんは涼しい顔で、最悪飛行機が来なくても船で九州まで行けば陸路で何とかしますよと。さすが、海千山千のドクターズツアー添乗員。あらゆる事態を想定済です。なんでも、元旦の能登地震の時には添乗員として加賀屋に居たそうです。そりゃ、飛行機が来ないくらいでは動じませんわ。

やっと雨やみました

 やきもきしながら待つこと30分。何とか飛行機が到着して、無事屋久島を後にすることができました。
 これも全くの余談ですが、伊丹空港もひどい強風で、飛行機はぐらんぐらん揺れながら、滑走路へはななめにアプローチしてました。やるやん、パイロット。
 結局、自分用に買ったのは、屋久杉のコースターだけ。神戸に帰ってから、何か屋久島にできることはないかと考えて、ふるさと納税で縄文杉ボールペンを調達しました。
 現在、絶賛職場で活躍中です。

コースター 木目が細かいのが屋久杉の特徴です
縄文杉の泡瘤を使用したボールペン 絶賛愛用中


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