ドラマとドキュメンタリーで刻む 戦史の記憶

阿見町制作「若鷲に憧れて~元予科練生の回顧録」(2021年8月13日公開)

※月刊「広報」2021年10月号【広報動画館~地域発の動画がおもしろい】

 戦時中、海軍航空隊が置かれ、昭和14年には航空機搭乗員を養成するための海軍飛行予科練習部(予科練)が設置されるなど、「海軍のまち」として知られる茨城県阿見町。戦史の記憶をいつまでも風化させないようにと、重要な歴史遺産である「予科練」や「海軍」に関するドラマを制作し、町の動画チャンネルで公開しています。ドラマ編(53分)に出演しているのは、俳優の石井正則さん。同じく石井さんが案内役となって現在の阿見町を巡るドキュメンタリー編「阿見町の戦跡めぐり」(37分)の2編が公開されています。

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 「予科練」というと、2020年に放送されたNHK・連続テレビ小説『エール』が思い出されます。予科練を題材にした映画『決戦の大空へ』の主題歌をつくるため、主人公の古山裕一が予科練を訪れ、予科練生である若者たちと交流するシーンがありました。実際、主人公のモデルとなった作曲家の古関裕而さんは、予科練が置かれていた霞ヶ浦海軍航空隊に体験入隊し、ヒット曲となった『若鷲の歌』を書き上げたそうです。『若鷲の歌』はドラマ編の中で何度も歌われるなど、物語でも重要な役割を果たしています。

 2021年春、阿見町にある予科練平和記念館を訪れた石井さん。写真を撮るのが趣味という石井さんですが、記念館に展示されている、予科練生を写した多くの写真に圧倒されます。撮影したのは“写真の鬼”とも呼ばれた、写真家の土門拳さん。土門さんが予科練生を撮影していたことは、あまり知られていません。なぜ、土門さんはこれだけ多く、予科練生を撮影したのか。石井さんが疑問に思っていると、そこに、制服を着た予科練生が現れます。昭和19年の予科練へタイムスリップした石井さん。予科練生に館内を案内されながら、当時を振り返ります。

 ドラマ編は、阿見町に住む元予科練生、戸張礼記さん(92歳)の経験を基に、訓練の再現シーンや、当時の映像、写真などを織り交ぜて構成されました。飛行機に乗ることなく終戦を迎えた戸張さん。ドラマ編には戸張さん自身も出演し、終戦当時は「気持ちよく歌えなかった」という『若鷲の歌』を歌い上げています。

 当時の若者たちの、そうした葛藤も伝わってくる『若鷲の歌』。そして、戸張さんの「人間は二度死ぬ。一度目は亡くなった時、二度目は忘れ去られた時」という言葉が、心に響いてきます。予科練に関する戦争遺跡などを巡るドキュメンタリー編では、その『若鷲の歌』誕生秘話や、町内にある小学校の校歌を作曲した古関さんにまつわるエピソードも紹介されています。

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