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祝『キングオブコント2021』空気階段優勝! 「ひとりじゃないってわかりました」やっと芽生えた、応援されている実感
10月2日に行われた『キングオブコント2021』決勝は、空気階段の圧巻の優勝で幕を閉じた。実は2年前、「月刊芸人」創刊号の表紙を飾ったのは、初めての『キングオブコント』決勝を終えた直後の空気階段。それから時が経ち、「今年が最後」と決めて臨んだ大会で、2人は見事に栄光をつかんでみせた。その背中を押し「ひとりじゃない」と教えてくれたのは、ファンたちの熱い応援の声だった――。
――『キングオブコント2021』優勝おめでとうございます!
2人:ありがとうございます!!
――「月刊芸人」では2019年11月の創刊号で巻頭に登場いただきました。
ちょうどそれが初めて決勝に行くも9位に終わった直後というタイミングだったこともあって、あれから2年で優勝できたんだな、と勝手に感慨深かったです。ただ、決勝進出会見で「今年いけなくても(出場は)最後にしようと思っていた」と言っていましたよね。なぜ「最後にしよう」と?
かたまり:今年結成10年目なんですけど、これまでに2回決勝に出て去年が3位で、『キングオブコント』でやれることはやってきたと思っていて。だから今年出たらもうこれ以上やることはないだろうって、予選が始まる前から2人で話をしていました。やっぱり戦うのはつらいというか……僕らは戦い続けることができないなと思ったんで。
もぐら:誰かがつくった作品と戦うんじゃなくて、自分の中で戦いたいんですよね。誰かの作品とは展示会みたいな場所で一緒にやるのが良くて、戦いはあくまで自らの中でいい。
――じゃあ今年、優勝という最高の形で戦いから卒業できたわけですね。
かたまり:はい。
もぐら:良かったです、本当に。今年で最後だったんで。
決勝と準決勝でキャラクターの名前を変えた理由
――決勝で披露するネタを決めたのはどれくらいの時期だったんですか?
もぐら:8月の終わり頃までに準決勝のネタを決めなきゃいけないんで、そのタイミングでした。
――毎年それくらいの時期に決める?
かたまり:いや、年々遅くなっていってますかね。以前は5月くらいに決めていた時期もありましたけど、一昨年あたりからは夏に入ってから決めていたと思います。
――なぜ遅くなってきたんでしょう?
かたまり:芸歴を重ねてくると、ライブでどれくらい調整すればネタが完成するかがわかってきて、コツも掴んでくるので、かかる時間が短くなっていってるというのはあります。それと、めちゃくちゃたくさんライブに出させてもらえるようになって、決めるのが遅くなってもそこから調整できるようになったこともあると思います。
――1本目の「火事」は今年から定期開催している新ネタライブ「産卵シーン」で、2本目の「メガトンパンチマンカフェ」は今年の単独ライブ『anna』で披露したネタでした。賞レースに向けた新ネタをおろす場として単独を開催する芸人さんもいますが、空気階段さんの単独はライブ全体での完成度を追求していますよね。だから単独のネタを賞レースの決勝でやったのが少し意外でした。単独の時点では、あのネタを『キングオブコント』でやることは考えていたんですか?
かたまり:単独の時点ではまったく考えてないです。
もぐら:賞レースでやるネタは、その時点であるネタの中で向いてる上位2本になるんです。単独ライブに向けてつくったけど、1本1本のネタとして考えたときに賞レースに向いてると思った、ということですね。
――2本選ぶとき、決め手になるのはライブでのウケ方ですか?
かたまり:そうですね、もちろんそれは大きいです。
もぐら:あとは、そのネタ自体の構成もありますかね。賞レースに向いてるかどうかとか。
――賞レースに向いてる構成とは?
もぐら:結局好みでいろいろあるんですけど、わかりやすくウケることが大切だと思うんで、そういうところで強いということですかねぇ。
かたまり:どっちも展開していくネタなんで。
もぐら:あと、出オチが好きっていうのもあります。
かたまり:あ、それはありますね。
もぐら:出オチが決まってそこから話が進んでいって、話でもウケて、っていうのが理想かなと自分たちの中で思うので、そこで「この2本かなぁ」となりました。
――YouTubeに上がっている「火事」だと、2人が演じるキャラクターの名前が決勝のときと違いますよね。消防士が動画では辻村だったのが決勝では崎山に、警官は堂本だったのが岡村になっています。ここは『キングオブコント』に向けてネタを磨く過程で変えた点ですか?
もぐら:これは戻した形なんです。もともとは決勝のときの名前でやっていたんですけど、調整の途中で一回変更してまして。
かたまり:準決勝の段階では辻村・堂本でした。“辻村”がSMクラブを予約するときは“加護村”って偽名を名乗ってて、そこが辻ちゃん加護ちゃんになってるっていう……(笑)。でも“加護村”って耳馴染みがないし、聞き取りづらいなと。
もぐら:そこらへんのニュアンスがちゃんと伝わってるのかな? っていうのもありました。僕は風俗の店員だったんで、お客さんが予約するときに名前を変えるのは“あるある”として認識してたんですけど、そこでさらに別のものに関連付けた名前を入れても、観てる人の頭に入っていかないんじゃないかと。だったらもう、そこの要素を削ってわかりやすい名前にしようってことになりました。
――なるほど。いま言われて初めて辻・加護の仕掛けに気づきました。
もぐら:警官の“堂本”はあの方々からいただいて、コンビとコンビの名前で対比させるみたいなことでした。でも、観てるときにちょっと考えてそこに気づいてもらったとしても、その間にコントのシチュエーションだったり二人のやり取りだったりがあって「火がすごい」とか話がどんどん進んでいっちゃうんでね。
――没入を邪魔するくらいなら、いっそ一発で分かる名前にしよう、と。
もぐら:そうです。「西川/東川」とか「田所/所田」とかいろいろ考えたんですけど、わかりやすさで崎山/山崎になりました。
――ー方、2本目の「メガトンパンチパンカフェ」はもともとかなり長いネタでした。そこから「ここは残したい」「ここは削ろう」とコンビで話し合って決めるんですか?
かたまり:そうですね。
――その過程で意見が食い違うことはないんでしょうか。
もぐら:あるときもありますけど、最終的には納得できればやるし納得できなかったらやらない、みたいな感じですね。
――「メガトンパンチカフェ」では、デビルキック伯爵が娘さんからの電話をとるくだりや、終盤のMr.I HOPEのくだりがなくなっていましたね。
もぐら:娘さんからの電話も、尺があと1分長かったら入れてたかもしれないです。
かたまり:やっぱ入れたいですよね、あそこに。
もぐら:「あの人がお父さんなんだ」とか「これで子どもを養ってるんだ」ってところですからね。ただ5分となるとどうしてもここは入らないな、と。Mr. I HOPEもそうです。10分だったらそこもまた入れたいんですけど、なにしろ5分なんで。
――その中で、両替のくだりは2人とも残したかった。
もぐら:あそこも、もっと長くやりたかったですね。
かたまり:本当はそうですね。単独のときはもっと長かったんで。
もぐら:「いつまで言ってんだよ」くらいまで言いたいんですよね、やっぱり。
もぐらの『踊り場』生放送フライング発表にかたまりは…
――10月4日には『空気階段の踊り場』(TBSラジオ)が急遽生放送になり、リスナーに優勝を生報告されました。情報解禁前にもぐらさんが『ラヴィット!』(TBS系)でフライング発表してしまうというハプニングもありましたが……。
もぐら:あ〜、ありましたねぇ。
かたまり:最低の行為だと思います。
もぐら:いや、まさかまだ発表してないと思わなかったんでねぇ。
かたまり:言われてたよ、「正午解禁だからね」って。
――その瞬間のかたまりさんの表情の変化もSNSで話題に。
かたまり:(そいつどいつ・市川)刺身に教えてもらいました(笑)。「うん、そうそう、今日生放送……あれ? いま午前中? まだ出てない、(解禁は)正午って言ってたよな??」ってババババッと頭の中に浮かんできて、あんな感じになってました。
――おめでたい話なのでフライングもギリ許されそうですね(笑)。そして生放送の中で、イベント『空気階段の大踊り場』の11月22日開催が発表されました。発表時にはオフィシャルサイト「空気階段の屋上」が接続困難になっていたようです。
2人:えぇ!?
もぐら:マジっすか。
かたまり:えー、すご。
――あらためてリスナーの方々の熱を感じました。このタイミングでやるイベント、どんな空気になるんでしょうね。
もぐら:まぁ、何が起きても動じないようにって感じですかね。本当に何も聞かされてないですし、多分まだ何も決まってないんですよ。
かたまり:岡野(陽一)さんが来ることしか決まってないです。
――2年前の「月刊芸人」の取材では「まだ人気があるって全然思えてない」と言っていました。それ以前に他媒体で取材したときもずっと「人気がない」と言っていた印象なのですが、さすがに今は、応援してくれる人が増えた感覚はちゃんとありますか?
もぐら:あります(笑)。
かたまり:あります、はい(笑)。
もぐら:やっぱりラジオからなんですかね。劇場だと、出待ちとかで実感するわけじゃないですか。僕らはほんっっとに出待ちがいなくて、マジで劇場でファン0人なんだなって思ってました。でもその状態でも単独にはみなさん来ていただいていたので、じゃあもうファンは劇場じゃなくてラジオにいるんだなって。今は劇場で見てくれてファンになってくれた方もいるのかな? ご時勢的に出待ちの方がいらっしゃらないですけど、できるようになったら劇場でもいるのかなと思ったりはします。本当に大切なファンの方々です。大事にしていきたいですね。
ひとりじゃないと教えてくれた横断幕の存在
――決勝前には、「屋上」会員の方々から応援メッセージの横断幕も贈られて。
もぐら:いやー、あれは嬉しいっすよね。あんなのつくってもらって、本当に心強かったです。
――今日撮影させてもらおうと思ったんですが、かたまりさんが……。
かたまり:忘れてしまいました、すみません。
――決勝当日、会場に持っていったそうですね。
かたまり:はい、持っていきました。本当に嬉しかったです。
もぐら:あれで、ひとりじゃないってことがわかりましたね。
別日に撮影した横断幕
――優勝後のコメントで「ちょっとでも自分たちにかかわってきてくれた人に感謝したい」ともぐらさんがたびたび口にしていたのが印象的でした。
もぐら:そうですね。本当に、人に助けられた人生ですから、私は。それがなかったらどこで野垂れ死んでいたことか。野垂れ死にエンドルートが多分むちゃくちゃ無数にあったと思うんです。
かたまり:ほんとに外で寝てたしね(笑)。
もぐら:はい。細い、ほそ〜いところをかき分けて今があるので、みなさんに感謝したいですね。
――最後にひとつ聞かせてください。大きな賞レースで優勝することは、芸能界で売れる切符をもらうような意味合いも含んでいたと思います。ただ、テレビがすべてではなくなってきたという変化もあって、各賞レースの初期に比べると近年はそういうニュアンスが薄まっているように感じます。今回優勝した先に、いわゆる“芸能界”で活躍する未来は想像しますか?
もぐら:いや、ないですね。
かたまり:ないです。
もぐら:でも多分、『キングオブコント』は初期からそうだったんじゃないですかね。東京03さんが優勝したときも「これからも単独を中心に」って言ってたんじゃなかったかな。僕らはコントのコンテストで優勝したのであって、テレビ番組のコンテストで優勝したわけじゃないんで、コントでやっていくのが当然かなと思います。
かたまり:でも、優勝して今いろいろテレビに呼んでいただけて、芸能人を見れるのは嬉しいです(笑)。
もぐら:ご褒美ですよね。「がんばったから芸能人たくさん会わせてやろう」みたいな(笑)。
――その波が落ち着いたら、板の上に帰っていくわけですね。
かたまり:はい。
もぐら:そうです。芸人ですからね。芸能人じゃないですから。
■空気階段
(左:鈴木もぐら 右:水川かたまり)
2011年に結成、東京NSC17期生。渋谷・ヨシモト∞ホールの看板芸人“ムゲンダイレギュラー”。テレビ朝日毎週水曜日深夜26:16から初冠番組『空気階段の空気観察』、TBS‐R毎週月曜日深夜24:00から『空気階段の踊り場』放送中。
■撮影協力
SHIBUYA SKY
東京都渋谷区渋谷2丁目24−12 渋谷スクランブルスクエア 14F・45F~屋上
■空気階段INFO
・空気階段の大踊り場
【日時】 2021年11月22日(月)開場18:15 開演19:00
【会場】 ヒューリックホール東京
【出演】 空気階段、岡野陽一(人力舎)
【チケット概要】
発売:空気階段オフィシャルサイト「空気階段の屋上」、FANYチケット、FANYオンラインチケット
料金:会場前売のみ 4,000円(全席指定)/配信 2,000円
<配信チケット>
発売期間:2021年10月30日(土)10:00~11月29日(月)21:00
見逃し視聴期間: 2021年11月29日(月)23:59
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ライター/斎藤岬 撮影/越川麻希(CUBISM)
企画・編集/かわべり