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ストリップ劇場で働いていた体験記~赤青緑のパーライト~ たくみ
たくみの連載小説。
自身の経験に基づいた「ストリップ劇場のバイト」のお話をストレートな気持ちで綴ります。
初めての照明
とあるストリップ劇場。
そこで僕はバイトをしています。
働き出して幾分かの日が過ぎいよいよ照明をやる日がやってきました。
最初にアナウンスをしてその後音楽を流して指示書と呼ばれるどのタイミングで暗転してどのタイミングで明転をすることが書かれた紙に沿って照明をつけたり消したりする。
これがざっくりと言う一連の流れなのですがなんとその間につける色などはほとんどの場合照明をする人の裁量に任されるのです。
曲や踊りや衣装によって合う色があるだろうに照明が突拍子もない色をつけてしまったら台無しです。
とてつもなく怖いです。
そしていよいよする時がきました。
もうここからの記憶は声は震え終始指は震えていたという本当にそれしか覚えてないくらいのパニくり具合でした。
これが僕のはじめての照明の記憶です。
そしてその直後。
横で見ていてくれた先輩に謝りに行ってこい。
そう言われて我に帰って舞台袖に謝りに行きました。
ストリップでは普通の一般的な劇場と違いステージの真ん中に突き出ている花道というものがあります。ファッションショーで言うランウェイみたいなものです。
その先に丸くなったステージがありそれが盆と言われています。
大体の演目では踊り子さんはその盆で脱いでいきポーズを取り演目を進めていきます。
ほとんどのストリップ劇場では踊り子さんがその盆に行った際に盆が回るようになっています。
360度お客様がみえるように盆が回るのです。
一概に言語化しにくいのですがそれもとてつもなく格好良くて美しいのです。
話が戻るのですが僕はその盆を回すスイッチを押すのを忘れていました。
大事な見せ場のそのきっかけを忘れる。
大失態です。
あんぽんたんです。
あほんだらです。
お笑いのコントでいうと台詞きっかけで音楽をながさなきゃいけない場面でなにも流れずにただ時間が過ぎていく。
いやそれよりもっと良くないことをしてしまいした。
踊り子さんは許してくれましたが申し訳ない気持ちで一杯になりました。
この日から業種は違えど当たり前のようにお笑いの舞台をこなす照明さん音響さんに尊敬と憧れの気持ちを抱きました。
本当にいつもありがとうございます。
そして僕は出勤のたびに照明をするようになったのですが失敗の連続でした。
指示書には1分25秒の場面で暗転と書いているのにも関わらずそれを忘れてしまったり台詞きっかけで明転なのにも関わらずいつまで経っても明転をしなかったり。
今思うと途轍もなくふざけた野郎です。
時には踊り子の方にべらぼうに怒られた事もあります。
当たり前の事です。
自分の舞台を台無しにされてしまったのですから。
怒られた方ほど普段はとても気さくで良い人です。
怒ってくれるだけ有り難かったです。
そんな照明をする日々をてんやわんや過ごしていきました。
そんな日々の中でより真剣に照明も自分の活動もやっていかないと
と思うようになった踊り子さんに出会うことになります。
たくみ(1990年8月14日)(31歳)
千葉県船橋市出身、NSC東京校20期
ナミダバシとして5年間活動、先日解散を発表。
著者/たくみ