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M-1優勝、紅白、コロナ、そして結婚。さらに108本の新ネタ。すべてひっくるめて2020年のミルクボーイ

「M-1グランプリ2019」で漫才師のシンデレラストーリーを見せてくれた彼らに改めて6周年を迎えた彼らのホームグランド「よしもと漫才劇場」と、いろいろありすぎた2020年を振り返っていただきました。

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ーー「よしもと漫才劇場」6周年。おふたりは初期から舞台に立っているので感慨もひとしおだと思いますが。

内海:「よしもと漫才劇場」ができる前は、その前身である「5upよしもと」を僕らも含め、2014年2月に卒業した芸人たちが、あべのハルカスの9階にある「スペース9」というホールで「High Stageよしもと」っていう卒業組の受け皿的なライブイベントに出演してました。

駒場:月1回か2回くらいの出番でしたね。楽屋も小さいので、僕ら社員食堂にいましたから(笑)。そこで着替えたりしてましたけど、さすがに百貨店の社員の方もおられるので禁止になりましたが(笑)。

当時はそのイベントがメインで、正直ただ出番をこなすだけという感じでした。それが「よしもと漫才劇場」として再び劇場がオープンするっていうのは、漫才しかやってなかった僕らにとったら良かったなぁって。でも、正直コンビとしては漫才をサボってた時です(笑)。

内海:「THE・MANZAI」も一回戦で落ちて……。坊主にもしたり、蝶ネクタイに半ズボンでピンクの革靴履いたり、模索してた時期でもありましたね。ネタもマッチョの駒場と太ってる僕がいじり合うみたいな前説みたいな喋りをやってて、そンなんでも笑っていただけるんですけど……。

一度、同期のタナからイケダから「なんやねん、あのネタ」ってめっちゃ言われて。その言葉がずっと残ってて、ちゃんとネタせなあかんなと思い出したんですけど、それでも色々模索してました。

だから漫才での出番よりもオープニングアクトというのによく出たり……。そこでけん玉芸人としてその技を披露してたりしてました。あと、デブ芸人集まってワイワイしたり(笑)。

駒場:無茶苦茶なオープニング(笑)。今はあかんのちゃう? デブ芸人とかってネーミング。もし現在なら“ぽっちゃり”っていい直さないと(笑)。僕もアイロンヘッドの辻井と、マユリカの仲谷らと“口笛芸人”ってのでオープニングアクトしてました(笑)。5分くらいそれぞれ口笛を披露して、最後にSMAPの「夜空ノムコウ」をみんなで吹くってコーナー(笑)。

そういや「やすとものどこいこ?」って番組に出てた時、ロケ終了後に海原やすよさんに「これからどこに仕事なん?」て聞かれた時、「漫才劇場で口笛芸人の舞台なんですよ」って言うたら、やすよさんめちゃめちゃウケはって、「見に行くわ」ってわざわざ劇場まで見にきてくれはったことあります(笑)。

内海:とりあえずあれこれ試行錯誤しつつも何らかの形での劇場への出番が増えたのは嬉しかった。

駒場:1分のショートネタイベントとかもあったし、そうやって徐々に自分らの居場所ができたのは大きかったです。

内海:それと持ち時間もそれまでは3分くらいやったけど5分になって、僕らもちゃんとネタに向き合わないとって思ったし、周りのみんなも漫才に対しての力がついていったんじゃないかなと思います。

駒場:2~3分やとワンアイディア、ワンボケだけで突っ走れますけど、5分となるとちゃんと構成を考えないと後半ダレますからね。

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ーーネタで起承転結を構成するって大変ですからね。とはいえ、オープニングアクトでけん玉芸人をやったことが、昨年の「紅白歌合戦」出演に繋がるのは、凄いことですね。

内海:そうですよ。12月31日はもうすでにけん玉芸人として寄席に出るって先にスケジュール決まってたんです。けどM-1グランプリで優勝したことによって急遽、「紅白歌合戦」での三山ひろしさんの出番の時に一緒にけん玉のギネスを狙うというオファーをいただきまして、そちらに。
まさにけん玉芸人ドリームを体現しましたね。

ーー現在の内海さんの角刈りも模索してた中で生まれたものですか?

内海:(笑)。結果としたらそうだと思います。坊主にした後、やっぱりこれは何だかなぁと思って、次髪の毛切れるくらいまで伸ばしてたんですよ。それで今も通ってる散髪屋さんで何気に切ってもらううちに角刈りになったんですよ。

それでちょうど漫才劇場に出てる漫才師たちが全員出るお笑いの夏フェスみたいなイベントがあって、その時にめっちゃ角刈りをいじられて、それがお客さんにもめっちゃウケて。

駒場:でもあの時、めっちゃ顔真っ赤にしてたやん。

内海:そら最初は嫌やもん。そんなん別にいじらんでいいやんて。

駒場:そら角刈りしてたらいじるやろ(笑)。

内海:まぁなぁ(笑)。そのあとはまた伸ばしてたりしてたんですけど、漫才劇場に出てる芸人たちが原点回帰というか、漫才ならスーツやろということで、それまでのTシャツにジーンズとかラフな感じから徐々にコンビで衣装を揃えるようになったりして。

駒場:着の身着のままでしたからね。オーディションの時でもTシャツからTシャツに着替えるだけとかしてましたからね、多分漫才劇場という看板もそうさせる雰囲気があったかもです。

内海:それで僕らも舞台衣装も変えたりするようになって、じゃ、衣装に合う髪型ってなんやろ? って思った時に、いじられてウケた時のこと思い出して、角刈りにして。で、今の僕になったんです。

ーーそれで覚えてもらえるようになったと。

内海:いえいえ。悲しいかな、別な意味で覚えてもらったかもしれませんが、それは人気とは全く関係なかったです(笑)。

駒場:グッズで売られてた僕らのキーホルダーとかハズレ扱いでしたから(笑)。

内海:イベントでMCさんが「今日、ミルクボーイ見にきた人〜」って聞くと「おるか〜」ってやりとりがあって、僕らが「何でやねん」みたいなこと言いながら舞台に呼ばれてってのがひとつのつかみのパターンみたいにもなってましたし。

駒場:手売りチケットも全然売れませんでしたからね。僕、目つき悪いから(笑)。そんな思い出もあるので今やっと僕らをこのよしもと漫才劇場まで見に来てくれはる方々も増えて、やっと僕らなりに貢献させてもらえるようになったかなと。

まず、まさか僕らが劇場のポスターの真ん中になるなんて去年じゃ考えられなかったですからね。それまで端も端、ド端でしたから。

内海:劇場やないですけど、駒場くんが少女雑誌の「りぼん」に2ヶ月連続で載るやなんて誰も想像しなかったですから。あぁこれが結果を残すってことやねんなぁ(笑)。

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ーーその結果である「M-1グランプリ2019」の優勝から約1年経ちますが。

内海:優勝後、漫才劇場に出してもらった時に、“ミルクボーイ”ってモニターに出た瞬間、「ワーッ」って歓声が上がったんですけど、僕らそれまでそんなことなかったんでめちゃめちゃ恥ずかしかったし、“ウソつけーっ”って思いました。でも、舞台に出ると僕らを見に来てくれてるお客さんが居てるのを実感して感激しました。それに出番順もトリとかにしてくださって。

駒場:それまでは2番目とかでしたからね。ネタ終わっても「今日はスベってしもたなぁ」「アカンかったなぁ」ってヘラヘラしながら楽屋に戻ってたりする事もあったんですけど、今は僕らがスベるわけにはイカンので……。
優勝してからの方が、責任感もあるし、さらに緊張するようになりましたね。

内海:僕らのルーティンワークで出番の30分くらい前には舞台袖に行って再度コソコソとネタ合わせするんですけど、実際、後輩とかはイヤやろね。

駒場:ほんまやったらベテランさんみたいに出番前、満を持して舞台袖に来るってのがかっこいいと思うんですけどね、こればかりはしょうがない(笑)。

内海:今回はM-1出ないですが、これまでで初めてなんですよ。だから変な気持ちです。M-1で優勝した方々たちは東京で頑張るぞって活動拠点を移しはったりしてますけど僕らは大阪をベースにやるってなってるので、それだけに周りのみんなの熱量やM-1でやろうとするネタを劇場で見ることができて、リアルに感じられるのが、かえって自分たちも刺激になるし、とにかく頑張ってくださいという気持ちが溢れまくってますね。

駒場:出たらあかんというのはないんですけど、もうアレ(去年のM-1)以上はないですからね(笑)。

内海:でも、銀シャリの橋本さんに「もし出るなら、今年はこのネタやったっていうのを作ったら、自分らのモチベーション、きっと保てるよ」って言われたんですけど、なるほどなって一応、そのネタは作りました。

駒場:後輩からも「めちゃめちゃ仕上げてますね」って言われましたから。別に大会とかに出る予定はないんですけど、気持ち的には橋本さんのいう通りになってますね。

内海:それに実は今年、ベースのネタはあったとしてもCMやPRもんやテレビからのオファーとかで新ネタを108本作ってるんですよ。だから常に毎日、脳は動いてる状態なんでネタを作る事が当たり前になってます。

駒場:テレビでは新ネタを披露することが多くて、毎回緊張しまくってます。「アッコにおまかせ」で生放送で初披露とかは、もうたまりませんでしたね。

ーー現在だけで新ネタが108本とおっしゃいましたけど、コロナ禍でなければもっと作っていたかもしれないですね。

内海:そうですね。でもコロナ禍ならではのネタやシチュエーションの漫才もしてますしね。リモート漫才やソーシャルディスタンスを守ってのマイク2本、パーテーションを立ててとか、無観客とか。リモート漫才は難しかったですね。回線のラグもあったりして“間”というものの大切さを改めて知りました。

駒場:漫才の歴史やないですけど、本来なら漫才は、マイク2本でも、距離を取ってやってもいいわけじゃないですか。それが1本のマイクを奪い合ってやり取りするという形になったのはやはり理由があってこういうスタイルになったんやなと改めて知ることできたのはある意味すごい経験をしたんだなと。そして演芸史の一項目に残ることではないのかなと。もし加える時は、僕らの舞台写真を使って欲しいですけど(笑)。

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ーー将来、上方演芸史のニュースとして載るであろうおふたりに今年の現時点での個人的三大ニュースを教えていただきたいんですが。

内海:そうですねぇ。まずはコロナに感染してしまったことですかね。めちゃめちゃ気をつけていたのに……。ほんまに味覚と嗅覚がなくなるんですよ。洗ってなかった頭をガーってかいて匂っても、耳の裏こすった指を鼻先に持っていっても、お尻の穴を触って嗅いでも。

駒場:もっと別に確認するとこあるやろ!

内海:自分的にわかりやすいかなと。本当に匂いがわからない。もちろん味覚もです。あと、あんなけ会っていた相方とも濃厚接触者ということで2週間会わなかったのも。まぁ色々考えさせられました。経験者が改めて言いますけど、本当にみなさん気を緩めずに気をつけてください。

駒場:ほんまに予防することは全部して欲しいですね……。僕はなんばグランド花月の昼出番に立てたことでした。前説や夜のイベントには出させてもらったことありましたけど昼の香盤表に名前が出たのは嬉しかった。小学校の頃から見に来ていた劇場の舞台に、しかも名前が後ろのスクリーンにドーンと出て。感無量でしたね。

でも、実際は昼のお客さんの違いをしみじみと感じました。NGKの洗礼でしたね。先輩方、やっぱり凄いと思ったし、パワーが違います。これからもしっかり舞台を務めさせていただこうと思いましたね。

内海:次は結婚したことですね。実は9年付き合ってたんで、いつでも入籍したかったんですけど、条件が3ヶ月連続で吉本からの給料で暮らせるというものやったんですけど、無事に達成したので6月に入籍をしました。

小さいだるまを買ってね、願をかけてたんです。ひとつは3ヶ月連続で月収が30万以上になることと、NGKの本出番に出ることっていうのを。両方叶いまして、目を入れましたもん。

本当に結婚してよかったなと思ってますね。ありがたくも忙しくさせていただいてて、ちゃんと帰る家があって、奥さんがいてくれるって感謝しかないですね。

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駒場:僕のもうひとつは「紅白歌合戦」に出させてもらったことですね。

内海:ちょっと、これ、僕がけん玉芸人やなかったら出られてなかったんやで。

駒場:確かにそうやけど(笑)。MCの内村光良さんや嵐の桜井翔さん、綾瀬はるかさんらと横並びしてたのは、自分でも信じられなかったです。

出ること、マネジャーにNGKのロビーで言われたんですけど最初、マジでドッキリやと思いましたから。周りにおった芸人さんらも「え? 紅白?」ってざわついてましたからね。

内海:紙吹雪持って帰ってたもんな。

駒場:エンディングに「来年もよろしく〜」って時に紙吹雪が降るんですけどしっかり実家に持って行きました。あと、台本も。内海はすぐ捨ててましたからね。

内海:捨ててないわ! 楽屋に置いて帰っただけや。

駒場:結局捨ててるんと一緒や!

内海:そんなことない! もう! 僕の残りのニュースはたくさんの方に応援してもらえたことですかね。カッコつけてるようですけど、これはマジです。

そういや、2年間、角刈りをタダでしてくれてはった行きつけの散髪屋さんがあるんですけど、M-1優勝してからお金をお支払いするようになりまして、そして賞金でこれまでの感謝を込めて散髪用の椅子を贈らせていただいたんですね。そしたらこの前、駒場がたまたま店のおっちゃんに会うたみたいで……。

駒場:僕が行ってるジムで撮影するって時に、そこの会長のお父さんが散髪屋のおっちゃんで、ジムに来はったんですよ。それで色々お話ししたり、サイン書かせていただいたりしてロケ終了した後に「さっきはサインとかすまんかったなぁって」ってお電話いただいたんですけど。

「そういえばあの子にもよろしくなぁって」言われて、僕、誰か分からなくて「もしかして内海ですか?」って言うたら「そう、そう、それや」って(笑)。

内海:2年もお世話になっていろんなこと喋ってるのに、52万円の椅子プレゼントしたのに、名前を覚えてくれてなかったんやと。これは調子に乗るな、いつも言ってるけど忙しいから刈ってもらったらすぐに帰ってた戒めやと、もっと愛情を注ぐべきやと言う教えやなとショックと反省しまして、それが個人的にはいちばんのニュースかもしれませんね(笑)。

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駒場:僕の個人的にいちばんはダウンタウンの松本さんとご飯に行けたことですかね。昔から大好きで、昔監督された映画「大日本人」の試写も応募して行ったり、「ガキの使いやあらへんで」を録音して通学途中に聞いてたりしてくらいの好きな方で、そんな方が優勝してから漫才面白いなぁと言うてくださったりしてしてたんですけど、「一回、メシ行こうか」って内海と一緒に誘っていただいて食事したんですけど、これは本当に嬉しかったですね。

飲んでる時も僕らの漫才につかみの部分でいちばん気持ちええのなんやろ? とかやりとりして、僕らが審査させてもらってそれはちょっとちゃいますわみたいなノリもやりながら、あぁこの人はやっぱりずっとお笑いのこと考えてはるんやな、逸話はウソやなかったんやなって夢みたいな時間を過ごさせていただいて、一後輩として会うのではなく、M-1で優勝して結果残した一芸人としてちゃんとお会いできたと言うのは個人的には大きかったです。

内海:ほんまやな、どちらにせよ、夢は叶うっていうのを、この一年体感できたのは、色々ありましたけど心から嬉しかったです。

ーーでは最後に、来年はいかがですか?

内海:新しいM-1チャンピオンが生まれるので、ちやほやされる一年はもう終わると思いますんで、自分たちが試されるはずなんで、やりたいことをどんどんやって行きたいって目標はあります。

駒場:周りにも負けないようにしないといけないし、2019年から2020年の自分たちにも負けないように、さらにアップデートするよう来年も頑張っていきたいですね。

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■ミルクボーイ  プロフィール
2007年結成。NSC大阪校27期生と同期。駒場(左)、内海(右)。
2019年ABC「M-1グランプリ2019」にて、大会歴代最高得点を記録し、堂々の優勝を果たした。
内海:けん玉準2段を持っている。
駒場:2018年大阪オープンボディビル選手権で優勝経験がある。

ミルクボーイ INFO

よしもと漫才劇場5周年記念ネタ動画


よしもと漫才劇場


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ライター/仲谷暢之(アラスカ社) 
撮影/佐藤純子、ポートワシントン笠谷


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