【2月号】巻頭インタビュー・ニューヨーク
M-1グランプリ2019で、悲願の決勝初進出を果たしたニューヨーク。結果は残念ながら616点で最下位に沈んだが、年始の2人は決して落ち込んではいなかった。2人が2019年の1年間で得たものとは――。
――少し時間がたってしまいましたが、昨年は初めてM-1グランプリ決勝進出を果たしました。別の媒体で2019年初頭にインタビューさせてもらったとき「このままでいるとフェイドアウトしていくから、今年は自分たちで動いてみる」とおっしゃっていて、その通りにYouTubeを積極的にやったり単独の公演数を増やしたりと、挑戦の1年だったと思います。それが実を結んで結果につながった、という感覚はありますか?
屋敷:そうですね。M-1だけに全部ベットするのは危険やな、って考えていろいろやらさせてもうたら、そのタイミングで決勝いけて嬉しかったです。
嶋佐:去年はなかなか充実してたと思います。
屋敷:ただ、ビリやったけどな。
嶋佐:そうなんすよ。ビリなんすよ。
屋敷:決勝決まった直後やったらもうちょっと明るくしゃべれるんですけど、いま決勝いけたことを喜んでると、だせぇよな(笑)。
――結果は9位でしたが、ネタ後のコメントのくだりがいろんな芸人さんに評価されてますね。
嶋佐:「そんなに?」って思うくらい、会う方会う方褒めてくれますね。
屋敷:それがいちばん嬉しいかもしれません。やっぱり芸人は「ピンチをなんとか乗り切ったやつ」が好きなんですよね。
嶋佐:あれはもう今田さんがやってくれたんで。ちょくちょく名古屋の番組(CBCテレビ『本能Z』)に呼んでもらってるのもあって、いい感じにしていただきました。
屋敷:早く会ってお礼言いたいっすね。
――ニューヨークといえば、「偏見」「毒」が強いネタが持ち味とされることが多いですが、M-1では中川家・礼二さんに「もっと毒のあるツッコミを見たかった」と言われてました。今回、そのあたりは意識的に調整したんでしょうか?
嶋佐:たまたま今回はああいうふうになったっていう感じですね。毎回毎回、毒を入れようと思ってネタをつくってるわけじゃないんで。
屋敷:礼二さんもやし、僕らのファンの方や視聴者の方が「もっと毒がほしかった」と言っているのも見てて、「あ、そこにそんな期待してんねや」って逆に思いましたね。自分らではそこまでそんな意識もなかったので。
嶋佐:難しいとこですよね。今まではそういうのをやってきて、全然上がれなかったから。
屋敷:でも、あのネタがM-1でウケてたら誰もそんなこと言うてないと思うんですよ。結局、トップバッターで点数もふるわんかったからそういう意見が出てくるんであって。もし僕らが優勝してたら「毒々しかったのがマイルドになって良くなった」みたいなこと言われてたと思うんです。だからあんまり気にせんとこうって思ってます。
嶋佐:ただ、試行錯誤した結果、歌ネタで決勝いけたのはびっくりしましたね。俺たちに足りなかったのは歌だったのか……って。
屋敷:あのネタ、ほんまは「歌ネタ王」用につくったんですよ。もともと歌ネタが1本しかなくて、万が一決勝いったら2本必要になるから予選の3日くらい前に「1本つくっとこか」って。できたときは、これでM-1いくなんて思ってなかったです。
――そしてネタ以外でいうと、去年はやはりYouTubeが特筆すべき活動だったと思います。
屋敷:すべてですね。YouTubeが僕たちのすべてであり、未来です。
嶋佐:いや、YouTubeは俺らだけじゃなくてみんなの未来だからね。
屋敷:YouTube自体もあるけど、それを手伝ってくれるスタッフさんの存在がでかかったですね。運命共同体になった感じがしました。M-1の予選で勝ち上がるごとにチャンネル登録者数が増えていったんですよ。僕らが結果を出すほど幸せになる人が増えるのは嬉しかったです。単独は単独でまた別のチームがあるんで、そっちもそういう感じにできたらええなと思います。
――1年以上やってみて、面白さ・難しさはどうでしたか?
嶋佐:自分たちで発信して企画をやれる場はテレビではなかなかないので、そういうのがやれてるのはいいなと思います。難しさは……やっぱ最初は一気にバズろうと考えてたんですけど、うまくいかなかったですね。再生回数も登録者数も増え方は本当にちょっとずつで、どうやったら伸びるのかいまだにわからないです。
屋敷:YouTubeに合わせにいくと、全部スベりましたね。「誰が見んねん」くらいの動画のほうが意外と評判良かった。
――個人的に、屋敷:さんの「日プどハマり芸人プレゼンツ」がおもしろかったです。
屋敷:あれはマジでYouTubeのいいとこっすね。
日プ(PRODUCE101JAPAN)を好きな人は多いから、ある程度再生回数はいくやろうなと思いましたけど、ただ好きなことをしゃべりたかっただけなんで1回再生でも1万回再生でもどうでもよかった。何か好きになったときは、恥ずかしがらずに言おうと思いました。
嶋佐:それで日プ最終回の生放送の前説呼んでもらったしな。
――日プと「テラスハウス」が好きって、意外と屋敷:さんは女子ファンが多そうなものにハマりますよね。ネタの中では女子をいじりがちなのに……。
屋敷:マジで普通の女の子ですね(笑)。俺、芸人なってなかったらお笑いもそういう目で見てたと思いますよ。いわゆるお笑いファンというか。実際、無限大ホールでげんき~ずの宇野さんと写真撮ってもらったりしてましたもん。
――今も無限大に通っていたかもしれないわけですね。そしてYouTubeでの活動を通して、仕事に対する感覚が変わった部分はありますか?
屋敷:給与明細に「YouTube◯円」って書いてあるのを見たとき、初めて自給自足してる感じがしましたね。今までは与えられた仕事にお金がついてきただけやったんですけど、「これは俺らが生み出した金やな」って思いました。社員さん全員に嫌われて干されても、この金だけは入ってくる。
嶋佐:その日が来るまではマネジメント契約でいきますけどね。
――今年はM-1ファイナリストとして仕事の幅が広がるんじゃないでしょうか。
嶋佐:いろんな楽しい仕事したいですね。単独の動員も増やしたいですし。まぁでもいちばんはTWICEに会いたいのと、CM出たいかな。あとはドラマと映画。
屋敷:(笑)。いや、でもマジで出てぇな、映画。
嶋佐:どんなバラエティ番組より出たい。
――なんのCMに出たいんですか?
嶋佐:トヨタとか。
■インタビュー動画: 「BEHIND THE STAGE」
■ニューヨーク プロフィール
(左:嶋佐 右:屋敷)
山梨県出身の嶋佐和也と三重県出身の屋敷裕政で「ニューヨーク」として、2010年コンビ結成。ともにNSC東京校15期生。独創的な設定のコントや漫才で注目され、その実力は各界の著名人も絶賛。M-1グランプリ2019年ファイナリスト。
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ライター/斎藤岬 撮影/越川麻希
スペシャルインタビューMOVIE:CAMSIDE