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【11月号】巻頭インタビュー・空気階段
現在、無限大ホールのランキングで最上位「TOP5」に君臨する空気階段。多くのファンの期待を背負い、『キングオブコント2019』決勝に挑んだが、結果は438点で最下位に沈んだ。だが無風に終わったわけではない。不思議な爪痕を残した2人の胸中やいかに――。
――まずは『KOC』決勝お疲れさまでした。決勝は緊張しましたか?
かたまり:僕らの前にうるとらブギーズさんとネルソンズさんが出ていて、二組ともよくライブでご一緒する先輩たちなので、それを観ている間は緊張はしてなかったです。そのあと、幕が開いて自分たちのネタが始まる瞬間に一気に緊張しました。でも一発目のボケで「あ、これは良いときのウケじゃないな」と感じて、そこからは普段通りの心境でした。
――一発目のボケというと、もぐらさんが「迷路書いてるんですよ」と言うところですよね。言っているご本人も、ウケはいまいちだと感じていたんですか?
もぐら:「あ、あんまりうけなかったな」っていうのはありましたよね。だからもうあとは「飛ばさないように」「噛まないように」とか思いながらでした。一応、ここまで残れたので、ちゃんとはやろうと思って。
――空気階段さんにはいろんなタイプのネタがあると思うんですが、なぜあのネタを決勝に選んだんですか?
かたまり:わりと僕ら、「ちょっと、どうなんだろう?これ」みたいな部分があるネタが多くて、去年準決勝で落ちたのも、言っちゃいけないことを言ったのが原因なんじゃないかっていうのがあって。
もぐら:一部分ね。
かたまり:「タクシー」のネタはそういう心配要素がない健やかなネタだし、一見のお客さんが多い無限大ホールでも、お笑い好きのお客さんが多いライブでもウケていたので、最大公約数を考えるとこれかな、って感じで選びました。
――そしてもうひとつ、かたまりさんの敗者コメントとその瞬間の表情がすごく話題になりました。あれは用意していたわけじゃないんですよね?
かたまり:暫定席に座ってモニターでビスケットブラザーズさんのネタを観ていたら、こんな大掛かりなセットでたくさんの人が関わっていて、テレビの前でいろんな人が観ているんだ、お笑いってすごい良いなと思って……。本当に純粋に、その気持ちを伝えたいと思いました。
もぐら:あんなにバーンと長く映してもらえる時間があるのは、ありがたいですよね。それをあらためて言うんだ、って感じでしたけど。
かたまり:録画で後から観たら、松本さんが「いつでも言えることやん」って言ってたんですけど、いつでもは言えないですよね。でも「いつでも言える」って思ってるのはすごく素敵だと思います。
――今回、銀杏BOYZの峯田和伸さんが応援コメントを寄せてくれていました。その中で2人のことを「聖者と愚者」と表現されていたのですが……。
もぐら:僕が聖者ですよね。
かたまり:そんなわけがない、そんな世界はない。
――たいへん失礼ながら、ラジオ『空気階段の踊り場』リスナーとしては、「愚者と愚者」では? と思ってしまいました。
かたまり:ライブのアンケートでもありました。「なぜかたまりさんが聖者と呼ばれるんでしょうか」って。
――もとは借金600万円で風俗とギャンブル好きというもぐらさんの“クズ”な部分が際立っていましたが、『踊り場』を通じて、ファンやリスナーの間で「意外とどっちもヤバい人」という認識ができてきている気がします。
かたまり:でも僕は借金とか、人に嫌悪感を抱かせることはしていないので……。
――そういう意味ではないです、すみません。『踊り場』のプロポーズ回は、ものすごく話題になりましたよね。フラれたばかりの元カノに、泣きながらラジオでプロポーズするという。
かたまり:(顔をしかめる)
――やっぱり嫌だったんですか?
かたまり:嫌です、めちゃくちゃ嫌です。未だにふと思い出して「ウ゛ェ゛ッ!」って言っちゃうことがあります。今日もここに来るとき、あのプロポーズの収録をした後で彼女に会いに行くときに買ったバラの花を預けていたコインロッカーの近くを通って……(変な笑い)。
もぐら:でもあのプロポーズの言葉、3時間くらいかけて考えてましたからね。嫌だって言っても行動はノリノリですよ。
――もぐらさんとしては、ラジオを通じてかたまりさんの人間味が知られるようになったことは、どうとらえてますか?
もぐら:ラジオは距離が近いメディアだと思うんで、変につくるよりは人となりが伝わるのが一番いいと思います。別にあえてそういうふうに持っていこうとしているわけじゃなくて、そこに触れざるを得ないようなことを水川がしてくるんですよ。リスナーのことを考えるとそれは見過ごせないっていう、当たり前のことをやっているだけです。
――もともとネタについては、芸人さんや業界の方の間でも評価が高かったと思いますが、ラジオがあることで人柄も伝わっているのかな、と。
かたまり:たしかに、漫才は人となりがわりとネタに反映されると思うんですけど、コントは全然別の人を演じるので、そこが伝わる機会はあんまりない。それが毎週ラジオやってると露呈しちゃうというか、お伝えしなくていい部分までお伝えしちゃってる感じになってるのかなと思います。でもラジオを聴いてライブに来てくださるお客さんが増えたのはめちゃめちゃありがたいです。
――今となっては、単独ライブを紀伊国屋サザンシアターで再演するほどの人気ぶりですよね。
かたまり:そうですね、ありがたいです。
もぐら:でももともとは全然チケットが売れないコンビだったので、怖さはめっちゃあります。
かたまり:もとに戻っちゃうんじゃないかっていうね(笑)。
もぐら:まだ人気があるって全然思えてないですからね。出待ちもそんなにいないですし、ファンレターも生涯で2〜3通くらいしかもらったことないし。しかもそのうちの1通は「かたまりさんに迷惑をかけないでください」みたいな直訴でした。僕の中ではそれもファンレターとして受け取ってます。
――最後にちょっと酷なことを聞きますが、少しずつテレビに出るようになって知名度が上がってきている今、KOCで最下位だったのはその流れに水を差すことにならないか? と勝手に心配していました。もちろん、決勝に上がったこと自体がすごいのですが。
もぐら:すべてのものに勝者がいれば敗者がいますからね。僕らは敗者なわけで、敗者としての生き方の道があると思うので。
かたまり:基本的に、敗者として生きてきたので。ただ、優勝したら1000万円もらえるってことを今年は忘れてて、「決勝でネタを観てもらえたらいいな」っていうモチベーションだったんです。でもやっぱり1000万円ほしいので、来年は優勝したいですね。
もぐら:そうですね。1000万円という忘れ物を取りに行きます。
インタビュー動画: 「BEHIND THE STAGE」
■空気階段 プロフィール
(左:鈴木もぐら 右:水川かたまり)
2011年に結成、東京NSC17期生。鈴木もぐらと水川かたまりからなるコンビ。TBS‐R毎週金曜24:30から『空気階段の踊り場』放送中。
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ライター/斎藤岬 撮影/越川麻希
スペシャルインタビューMOVIE:CAMSIDE