カメラ愛を語る〜田津原理音・前編〜
芸人といえば、カメラで“撮られる”ことが圧倒的に多い。その一方で、“撮る”ことに並々ならぬ情熱を注ぐ者もいる。ピン芸人・田津原理音もそのひとり。
「工場夜景で(ラニーノーズ)山田を撮りたい」。田津原が山田を連れて、クルーズ船で向かったのは堺市と高石市に位置する堺・泉北臨海工業地帯。お目当ては工場夜景だ。前半では、きらめく夜景を前に興奮を抑えきれない田津原がカメラ愛を一気に語る。
以前から、携帯電話で写真撮るのは好きやったんですけど、一眼レフカメラにハマって本格的に撮り始めたのは2〜3年前からですね。彼女から「EOS Kiss」(キヤノン)をプレゼントしてもらったのがきっかけです。
操作方法は、「EOS Kiss」を使っていたポートワシントンの笠谷さんから教わりました。いろんなシチュエーションで撮ってみたら、ポスターで見たことあるような、携帯電話では撮られへんすごい写真がいっぱい撮れるんですよ。「こうやって撮るんや」ってわかった途端、どんどんのめり込みました。教えてもらったらめちゃくちゃ撮れるようになるので、やっぱり身近にカメラの使い方を知ってる人がおるのとおらんのとでは、のめり込む度合いはだいぶ違うと思います。
今、僕が使っているカメラは「EOS R」(キヤノン)というミラーレスの一眼レフカメラで、「EOS Kiss」からちょっとレベルアップしました。カメラには、センサーサイズ(※レンズから入ってきた光を受け止める場所)というのがあるんですけど、簡単に言うと、それが大きければ大きいほど画質がよくなるんです。
「EOS Kiss」は入門機といわれていて、「APS-Cセンサー」というのが内蔵されているんですが、初心者は「APS-Cセンサー」のカメラから入って、撮っていくうちにもっといろんな機能を使いたいとか、画質にこだわりたいとなると「フルサイズセンサー」が搭載されたカメラに移行していきます。僕が使っている「EOS R」にも「フルサイズセンサー」が内蔵されています。
あともう一台愛用しているのが、「A-1」(キヤノン)というマニュアルのフィルムカメラです。このカメラは、マンションの大家さんからいただきました。僕のYouTubeチャンネル(『田津原理音のリオンダー越しの私の世界』)で、カメラの使い方や撮り方を教える動画を上げているんですが、それを観た大家さんが「カメラ好きらしいやん。これ、あまってるからあげるわ」ってくれたんです。そこからフィルムカメラにもめちゃくちゃハマりましたね。
————どんどん熱を帯び、止まらない田津原のカメラ談義。田津原により「専属モデル」として連れてきたラニーノーズ・山田は、田津原の隣で眠そうな顔をしている。そこで、なぜ山田を専属モデルにしたのか聞いてみた。
僕はよしもと漫才劇場の中でも友だちが少ないことで有名でして、何をするにしてもだいたい山田くんを誘うんです。それもあって、山田くんと一緒に遊ぶことが多いから、自然と撮る頻度も多くなるんですよね。でも、それだけじゃないんです。彼は、ポーズを取るのが抜群にうまいんですよ。だから撮りがいがある。僕のYouTubeチャンネルのレギュラーでもありますし、今回のようにちゃんと撮らせてもらうような機会なら、モデルは山田くんやな、と思いました。
普段、よく撮るのは風景と人。半々くらいですね。結構、いろんな場所に行って絶景を撮るのが好きです。最近では工場夜景を撮りに三重県四日市まで行きました。あとは、奈良出身なので地元の桜を撮影したりとか。奈良は写真を撮りたくなるようないいスポットが多いです。
芸人を撮る時は、「EOS R」じゃなくて、基本的にフィルムカメラの方で撮ります。「EOS R」だと、僕の場合、どうしても作品撮りをしている感じがめっちゃ強くなるんです。その場にじっ……として撮るからだと思うんですけど。だけど、フィルムカメラでは、その時だけの楽屋の雰囲気を撮るといい味が出るんです。なんて言うんかな、現像した時に「この時、撮ったなぁ」とか「こんな話してたなぁ」と、当時の記憶が蘇ってくるんです。だから人を撮る時は、その瞬間を切り取ってくれるフィルムカメラが多いですね。
————デジタル一眼レフと昔なつかしのフィルムカメラを使い分けるほどのハマりぶり。その魅力を朗々と語り尽くす田津原だが、のめり込めばのめり込むほど葛藤も生まれるという。
自分で撮りすぎて、撮られる側になった時にどんな顔をしたらいいのかわからなくなってきました。「あれ? いつもどんな顔してたっけ?」って緊張してしまいます。それに僕の場合、カメラでオシャレなものを撮ろうとする時は、オシャレな脳みそに切り替えるんです。そしたら、ふざけたことを考える脳みそがなくなってしまうんですよ。ネタも書かなくなってしまって……。
これは僕の持論ですけど、芸人さんって服がダサい人が多いんです。それは、普段からいつもおもしろいことばかり考えているからだと思うんです。笑いを追求すればするほど、オシャレからかけ離れていく。みんなオシャレをセーブしながらおもしろいことを考えていると思うんです。
でも、カメラを撮る時はオシャレ脳を使わないといい写真が撮れないんです。カメラに夢中になっちゃうと、おもしろくなくなるんです。だから、賞レース前はカメラを控えないといけない、と思っています。
to be continued
後編では、ラニーノーズ・山田をモデルに工場夜景を撮影した感想をお届け。さらに、田津原がいつかたどり着きたいと語る“カメラの境地”にも迫ります。
■田津原理音 プロフィール
ピン芸人。NSC35期。
大阪市24区住みます芸人(生野区担当)。
特技はカメラ、ポップなイラストを描くこと、ムーンウォーク、モノマネ、大乱闘スマッシュブラザーズ64。
田津原理音INFO
=====
取材・構成/中野純子
写真/月刊芸人編集部
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?