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サンシャイン坂田の夜の高鳴り『語り継がなければならない、裏で起きたR-1グランプリ2022の伝説』

語り継がなければならない、
裏で起きた『R-1グランプリ2022』の伝説


2022年3月6日。『R-1グランプリ2022』決勝。
前回大会より参加資格が芸歴10年以内のプロと、同大会への出場が10回目以内のアマチュアとなったこの『R-1グランプリ』。記念すべき20回目を迎える今回、昨年を上回る3,199名のエントリーの中から見事優勝を手にしたのは、お見送り芸人しんいちさん。ラストイヤーでの優勝に、しんいちさんの歓喜の涙で幕を閉じた。

かくいう僕も今年が出場出来るラストイヤーで。普段はサンシャインというコンビで活動してるものの、『R-1グランプリ』というピンネタで戦い自分の力を試すことが出来るこの場は、いち芸人としても世間に日の目を浴びるチャンスの場でもあり、芸人人生の中でも切っては離せない勝負の場である。

賞レースというのは昨今の若手芸人にとって、千載一遇のチャンスでもあるが、巨大な呪縛でもある。永遠に続く闘いの螺旋。勝たない限りこの呪縛から逃げることはできない。そんな中、芸歴制限があるのは良いか悪いか。『M-1グランプリ』のように昔から10年以下、今は15年以下とある賞レースもあれば、『キングオブコント』のように芸歴無制限の賞レースもある。
そんな中、R-1は去年、前回大会より10年以下の縛りになった。急な芸歴制限により、実力者の10年以上のピン芸人の方々が出れなくなってしまったことは心苦しいところもあるが、若手にとっては皮肉にも大チャンスの到来。その大チャンスの風も吹いてか、僕も初めて準決勝まで進めることが出来た。ここに至るまで沢山の芸人仲間と周りの方々の協力があり、一回戦、二回戦、準々決勝、準決勝と勝ち進むことが出来た。いつものコンビではなく、たった1人で戦わなければならないこの孤独な闘いは、いつも以上に心臓が痺れたが、それでも闘えたのは皆さんのおかげだ。本当にありがとう。感謝の嵐。

一方相方のぶきよはというと、10年間の集大成を見せるR-1ラストイヤーで「DJポン」という新キャラのフリップネタで二回戦で落ちた。7年間毎日1発ギャグを作り続け、その年のベストアルバムで毎年挑戦していたのぶきよが、最後の最後2000個以上ギャグがあるにも関わらず、ベストアルバムを出さず、謎キャラフリップで戦っていた。本当に怖い。意味不の嵐。

決勝前日、3月7日。敗者復活戦。23名の中から、たった1名だけの枠を狙い、目をギラギラさせた屍たちが復活をかけ凌ぎを削る。僕も予選ではかけてない新しいネタで復活を狙った。同じ敗者復活の出場者である「TokyoEmotionalConte」というユニットを組んでるかが屋の賀屋くんがコロナの陽性により出れなくなり、その無念さと想いも背負い、同じユニットやってるトンツカタン森本くんとも、あいつの分までと気合いを入れた。

本戦はトップバッターの徳原旅行くんから、大トリのヒコロヒーまで、全員がベストバウトのウケの素晴らしい内容だった。賞レースの準決勝が1番世界で面白いライブと思ってるが、敗者復活戦はそこにワクワクというかお祭り要素なドキドキ感もあって、これまた並ぶくらいめちゃくちゃ面白いライブだと体感した。そんな中、敗者復活戦を制したのは孤高の天才ギャグ職人Yes!アキト。2番目の出順ながら、見事最高のギャグを連発し、圧倒的な視聴者投票を得て、納得の進出。1発ギャグのみで戦う、いわゆるステゴロのストロングスタイルでのこの勝利は同じ芸人として、本当にかっこいい。賞賛の嵐。さすが名前にYESが入ってるだけある。そう考えるとラストイヤーで武器のギャグ捨ててDJポンで挑むって逆に凄いかもしれない。さすが名前にNOが入ってるだけある。


そして敗者復活戦も終わり、決勝に進出したのは、アキト君。そしてその最強決勝メンバーの中から優勝したのは、お見送り芸人しんいちさん。全員最高に面白く、本当に素晴らしい大会だった。

しかし、僕はこのことを伝えずには終われない。歴史を目の当たりにした生ける証人として、後世の芸人たちに語り継がなければならない。


敗者復活戦のあの日。ある1人の芸人の漢気(おとこぎ)を見た。

賞レースでのネタ被りは、致命傷である。例えば同じ銀行強盗のネタを2組がやった場合、最初の1組目は正常にネタを評価出来るが、2組目の場合、あ、どん被りだ!という笑いが最初に確実に起きて、なんならその1発目の笑いがデカすぎてそのあとの展開に完全に支障が出てしまう。漫才や漫談の場合、被っても最悪リカバリーの一言は出来るかもしれないが、1発勝負の賞レースの、しかもコントで設定被りは完全に致命傷どころか即死レベルなのである。

現に準決勝で、トンツカタン森本くんと、真輝志くんが、結婚式で花嫁を奪うという設定でどん被りした。最初のセリフも「ちょっと待ったー!」こんなの絶対に笑ってしまう。中身は全く違うものの、普通の寄席だったら最高に面白ハプニング。しかし賞レースとなると、その笑いがネタの本質のウケと異なってしまうし、審査に影響が出ないとは言いがたい。ネタ被りは避けるにこしたことがないのだ。

しかしそんな中、敗者復活戦でも同じ事態が起きてしまった。Gパンパンダ星野くんと、サノライブくんの設定が被ってしまったのである。本番当日、全組リハが終わってからのこの事態。ただこれは自分の100%の最高のネタで挑む上で、この事態は致し方ない。お互いが本気で挑んだ上での偶然のこの状況に誰が文句を言う。誰も何も言う権利は無い。致し方ないことなのだ。誰もがそう納得し、お互い最高の状態でネタを出来ることを祈ったが、そこに侍がいた。

星野くんがサノライブくんにその設定のネタを譲ったのだ。


侍すぎる。


話を聞けば、厳密にネタの内容は全然違うものの、2人ともお寿司のネタを扱うネタで。ちょっともうネタネタややこしいが、観てるお客さん一緒の設定かもなと思ってしまうネタだった。
これを急遽、自分はコンビでやってるから、ピン芸人のサノライブくんに全力で全うしてもらいたいという想いで、自分は本来やる予定では無いネタをしたのだ。今大会の予選、星野くんは税理士とは全く関係ない、生粋の1人コントで勝ち上がってきて、自信も信頼もあるのに敗者復活戦でそのネタを譲るなんて、、、

ちょっと侍すぎやしないか。

しかも順番がサノライブくんよりも、星野君が先だったのもある。設定が被った時は、やはり1番目の星野くんはしっかりと真っ当な評価だろうが、2番目のサノライブくんの時は初ボケの時に純粋な見方は出来ないだろうから。サノライブくんが後輩ということもあるだろうし、ピン芸人さんを尊重してということもわかるが、真剣勝負の場でこんなこと誰にも出来やしない。それをサラリとしていた。

ラストサムライ2。主役決定。


これを聞いた僕と森本は、一生語り継がなければならない伝説だ、安心してくれ、お前が死んでも、絶対に後世に伝え続ける。お前はとんでもない漢だったと。共に鼻息荒くフガフガと星野くんに約束した。

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そしてやってきた星野くんの出番。


信じられないぐらい大ウケだった。

急遽やったはずの税理士漫談。爆ウケの爆。満点大笑い極。

なんならその日1番の瞬間最大風速を叩き出していた。

ちょっと待ってくれ。それはちょっと、なんか違うんだよな。

それでそのウケすぎちゃうってカッコよすぎるというか。スベッても、実は裏でこんなことがあって、あいつは侍、侍だったんすよ!!!!って言いたかったけど、その、その状況で1番ウケすぎちゃうってもう、侍というか、お殿様だから。統治できちゃうから。

ぶっちゃけ僕の10倍ウケてたし、普通にめちゃくちゃ仕上げて自信満々でなんの邪魔もなく100%全力尽くした僕のネタの10倍ウケてたし。森本は変えずにそのまま花嫁奪うネタしてたし。


結果、サノライブくんもめちゃくちゃ面白くてウケてたから、結果最高だったんだけど。結果最高すぎたんだけど。


ちょっとかっこよすぎるよ。


私めは共に戦った1人として、殿の伝説をこれからも後世に説いていきたいと思う所存であります。

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P.S.
ZAZYはやっぱりZAZYやったな


サンシャインINFO


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著者/ サンシャイン・坂田光

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