エヴァンゲリオン愛を語る~ヘンダーソン子安・後編~
今年公開された「シン・エヴァンゲリオン」は興行収入102億円以上を叩き出し見事完結を迎えたが、日を待たずしていきなりAmazon primeで配信されることになり、劇場に幾度となく足を運んだエヴァンゲリオン(文中ではエヴァと略します)ファンはざわついた。そんな中に当然ヘンダーソン・子安もいたわけで……。
前回に引き続き独自の“エヴァ愛”を抱える子安に、突如の配信のことも含めて、さらに語っていただきます。
エヴァの一番の魅力って「考察」やと思うんですよ。
あーでもないこーでもないって言い合う、ディスカッションするのがいちばんの醍醐味やと思うんですけど、それが、よりネット社会の普及とかで広がった感じがして、余計にのめり込んだ人が増えたと思うんです。しかも考察が世界規模になってきてるのも面白い。
その考察も、ズレてるなと思うものから、共感できるもの、再発見と再認識させてくれるものと千差万別で、さらに深読みさせてくれる。これもエヴァに対して愛を感じる部分です。
かつてmixiが主流やった時、エヴァコミュニティで僕の書いたことが一度バズったことがあって。あれは気持ちよかったですね(笑)。
こいつらを沸かした! 自分の見解は間違ってなかったぞ!と。
新劇場版の「破」で、2号機に乗った真希波・マリ・イラストリアスが、バカほど強い奴に対して、普通じゃ戦われへんので裏コード“ザ・ビースト”っていうのを使うんですよ。
エヴァがいいように変形して、攻撃に特化する獣みたいになるんですけど、“ザ・ビースト”ってフレーズが初めて作中には出てきた感じやったんですね。で、「破」が面白すぎたのでテレビアニメの1話から見直したら、日本語タイトルが出てCMへ行く前に一瞬、英語のタイトルが2話だか3話だかの時に見えるんです。そこに“THE BEAST”って言葉を見つけて、「破」のあの時に初号機が暴走したのは“ザ・ビースト”みたいなことやったんですかね。って書いたら、エヴァ信者たちがめちゃめちゃ賛同してくれたんです。
見てない人にはさっぱり理解できないと思いますが、僕にとっては忘れ難い経験で、やっぱスゲーって言われることがこんなに快感と喜びを覚えるんやって。だからこそ様々な考察がされるようになったって、経験してわかりました。
「エヴァンゲリオン新劇場版:序」は上映館が少なかったのに、「エヴァンゲリオン新劇場版:破」で一気に上映館が増えたんです。内心、ほら見てみろと思ってたんですよ。しかも「序」を上回るくらいに「破」が新しいストーリーで面白かったんです。盛り上がったし。でもエヴァ好きからしたら、これって良くも悪くもエヴァっぽくないなと感じたのも事実で。と言うのも「アレ? わかるぞ、全部」て、なったんですよね。一般向きというか、これまでの作品を人が見てもわかるように、新規開拓するために迎合してるんちゃうかと感じてしまったんです。
そんなモヤモヤと期待が入り混じった中「エヴァンゲリオン新劇場版:Q」を見に行ったら急に良くも悪くもエヴァっぽく戻ったんですよね。で、「なにこれ?」ってなって、手がかりをいろいろ調べたら考察してる人たちも結構わけわからない状態でした。
さらに調べてみたら、どうやら庵野さんは、結構昔からネットの声を気にしはる人で、予想された通りに行きたくなかったんじゃないかと。周りのスタッフと相談してわかりやすい感じに作り直してるのに、急にひねくれモードに入って理解しにくいように話を作り直してしまったのが「Q」なんじゃないかと。そして僕らは宿題を出された感じで、ずっと考えて、結局その答え合わせをするために9年待たなければいけないんですけど(笑)。しかもその間に庵野さんは「シン・ゴジラ」を監督しはるんですよ。正直、何してくれるんやと。先にエヴァをやってくれよと思いました。
でもやっぱり僕は「シン・ゴジラ」見に行くんです。そしたら中身、むっちゃエヴァなんです。だから面白くて、これやったらまぁいいかと(笑)。勝手なもんです。
そして今年ついに公開された「シン・エヴァンゲリオン劇場版:||」を見た感想は?
初日に行ったんですけど……正直、最高でしたね。
ほんまにこれどうやって終わらせるんやろうって、ずっと思ってましたから。でも、ちゃんと終わったんですよね。この言葉がもうネタバレやと思うんですが、本当にありがとうございましたって感じで、納得のいく形でしっかり終わらせてくれはったんですよ。
もう正直、途中からこれで本当に終わってしまう! 俺たちの青春が! 自分の半生に一区切りつけられてしまう感じがして。とにかく終らんといてくれって思いました(笑)。)でも後味がすごくいい終わり方で。満足感と喪失感を味わいましたね。
劇場には3回観に行ったんですけど、ある時は小さい子とお父さん、お母さんが来てたのを見たんです。こんな幸せなことがあり得るのかと。まぁお父さんお母さんは僕と同世代でリアルにエヴァに触れてきたと思うんですけど、子どもさんと一緒に見るって、もうエヴァの英才教育ですよね。心からいいなって思いました。
そんな「シン・エヴァンゲリオン劇場版:||」が8月に急遽Amazon primeで配信されることに。もちろん子安は再び対峙する。
映画の舞台挨拶が何回かあったんで、オンラインで見てたんですけど、その時に記者さんから庵野さんに、足したい映像とかありますか?っていう質問をされて、「当初は上映時間を2時間以内にしたかったのでカットしてたけれど、結局収まらないから2時間半になりました。なので今は、足したい映像はないです」って言うてはったんですけど、Amazon primeでは特別映像を含むって書いてあったんですが、正直わからなかった(笑)。とはいえ、何度も見ることができることが本当に嬉しくて。正直、映画館の大きなスクリーンで見てほしいとは思いますが、それでも嬉しいですよね。
それに過去作も全て配信されてるので、まだ見てない人は予習できるし、僕らは復習もできる。後、庵野さんと松本(人志)さんとの対談番組も配信されて、当然見ましたけどただただ凄いなと。思わず、もし僕が庵野さんとお会いした時はどうしようかって謎のシミュレーションしてしまいました(笑)。
それとNHKで放送されてた庵野さんのシン・エヴァ制作のドキュメンタリー「プロフェッショナル 仕事の流儀」も配信されていて、それも改めて見ましたが、庵野さんがみんなの意見を取り入れると思ったらやっぱ止めるとか、それによって現場があたふたするとかが、ちょっとうちの相方の中村フーと似てるなぁって(笑)。先日もネタをええとこまで作って、おもろいなって言うてたのに翌日、ネタ合わせしたら何もなかったようにノートの真っ白なページを開いてまして。
「あれ、昨日のは?」って聞いたら、「ちょっと変かなぁと思って止めた」って。明日新ネタ発表やのにってあたふたしたんですけど(笑)。ま、庵野さんの現場はその比じゃないですけど。相方は庵野さんやなぁって、ちょっとネタ作りに対して理解できそうって思いました(笑)。
では最後に子安視線でのエヴァンゲリオンを楽しむ方法を。
「シン・エヴァンゲリオン劇場版:||」を楽しむ方は、ほんまのことを言うとエヴァ信者と同じ道程を歩んでほしいです。
僕ら、新作が発表されるのを2年待ち、9年待ちしてきたので、それと同じ日々を経てシン・エヴァを見てほしいんですけどって、まぁ無理ですけど(笑)。先ずは「シン・エヴァ」見て、「プロフェッショナル」を見て、「序」「破」「Q」を経て、再度「シン・エヴァ」を見てほしいですね。
ここ一からやり直させられたとこやってわかるんですよ。そういうスタッフの苦労も含めて、物を作るって凄まじいなって感動すると思います。
Amazon primeに入ってはる人は、字幕付きで、イヤホンで見てください。結構セリフだけだとわからないと部分や、兵器の名前、言い回しとかが明確になるので。
そしていつか、マンゲキか京都や沖縄の映画祭で上映会しながら喋りたいですね。これはマジやりたいです。正直、見ながら喋りたいですね。
■ヘンダーソン プロフィール
子安裕樹と中村フーのコンビ。
子安の趣味はサッカー、アニメ。特技は自衛隊体操、ホフク前進、自衛隊都市伝説。
中村の趣味は絵、お酒、パチンコ、スロット、カラオケ、ファッション。特技は歌、 人差し指でボール以外なんでも回せる、ネガティブ。
ヘンダーソンINFO
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取材・構成/仲谷暢之
写真/月刊芸人編集部