ストリップ劇場で働いていた体験記~赤青緑のパーライト~ たくみ
たくみの連載小説。
自身の経験に基づいた「ストリップ劇場のバイト」のお話をストレートな気持ちで綴ります。
踊り子さんの様々な踊り
とあるストリップ劇場。
そこで僕はバイトをしています。
何日かの出勤を終えてなんとなく本当になんとくなくというくらいのチケットのもぎりや劇場の掃除などの事を覚えた頃に次からは照明をやらないとな。そう言われて僕は照明もやることになりました。
照明。
普段お笑いライブでしていただいている照明。
業種は違えどその照明をまさか自分がやることになるとは驚愕という他ありませんでした。
実家のDVDレコーダーの予約すらも儘ならないくらいの機械音痴が機材を動かせるのだろうか。
音楽に合わせて照明をつけるということはリズム感が必要不可欠ではないのだろうか。
ピアニカが出来なさすぎて学校を休みたいほど悩んでいた僕ができるのだろうか。
そんな負の思い出が頭の中にぐるぐるん動き回って恐怖心で一杯になりました。
はじめのうちは劇場の照明室で投光をしている方の横で見学をすることになりました。
僕の働いている劇場では場内の左後方の一角が小さな部屋のようになっています。それが投光室です。
ロビー方面からニ段ほどの段差をのぼると入れるようになっています。二畳ほどのスペースで前方にはステージ全体が見れるように壁がくり抜かれている。そんな部屋です。
そのスペースの至る所に機材が置かれています。それらを当たり前のように動かしながら店長は照明の仕事をされていました。
後でわかることになるのですが沢山の機材がそこにはありました。
照明卓と呼ばれる音楽の音量を上げ下げするようなつまみが沢山ある機材。
ムービングと言われるいろんな方向に光を当てることのできる機材。
CDを入れて音楽を流すための機材。
マイクを通す機材。
他にも機材。
機材機材機材。
なんのことやらまったくわからない機材だらけのそのニ畳のスペースが僕にとっては宇宙でした。
これはこう動かすんだよというレクチャーを受けながら照明を操作している店長をみながらもお客様がいらっしゃったら覚えたてのもぎりをする。
こんなてんやわんやなルーティーンでバイトをする流れに変わりました。
働くようになってからは場内で踊りをみることはなくなっていたのですが投光室から沢山のお姐さんの踊りをみることができました。
照明の操作を横で見ながらも時折夢中になってしまい目を奪われることもしばしばありました。
ごめんなさい。
当たり前の事ですがお姐さん一人一人全く違った踊りです。
さらには同じお姐さんでも演目によっても全く違う人に見えたりもします。
ストリップはそれぞれの踊り子さんに色んな持ち演目があります。
お笑いでいうところの持ちネタです。
白鳥の湖のようなクラシックな演目もあれば某有名アニメのキャラクターの演目もあります。
全編コント仕立ての演目もあります。
ゴキブリに扮した踊り子さんが人間と戦うという演目のあと次に出てくる踊り子さんがオペラ座の怪人の演目をされたりすることもあります。
ゴキブリ。オペラ座の怪人。ヤクルトレディ。バニーガール。鬼。バーレスク。
これら全てがストリップではみることができます。
多岐にわたるにもほどがあるだろということがストリップでは沢山あります。
確実に他ではみれないようなエンターテイメントです。
沢山の踊りをみながら機材の本当に微々たるほどの操作をふわっとしたくらいに覚えたころに次の出勤の時から照明実際にやってみような。
そう店長から言われました。
こうして機械音痴でリズム感のない僕がいよいよ本当にいよいよ実際に照明をすることになりました。
たくみ(1990年8月14日)(31歳)
千葉県船橋市出身、NSC東京校20期
ナミダバシとして5年間活動、先日解散を発表。
著者/たくみ