今がいちばんの成長期――若きコント師・オフローズが語る着実な進化と実直な野望
7月上旬に東京・神保町よしもと漫才劇場(以下、神保町)にて開催された所属芸人約60組によるネタバトルライブ『Jimbochoグランプリ』にて、
オフローズ(カンノコレクション/宮崎駿介/明賀愛貴)が1位になりました!
前ランキングバトル含めてコント師が劇場の頂点となるのは、今回が初めてのこと。昨年、『キングオブコント』準々決勝進出後、『おもしろ荘 2021』出演など、少しずつ活躍の場を広げる彼らに、現状や今後について語ってもらいました。
明賀、バンジージャンプで厄払い
――1位おめでとうございます! 率直な感想を聞かせてください。
カンノコレクション(以下、カンノ):単純に嬉しいです。以前の花鳥風月っていうランキングシステムでは、いつもあと一歩というところで上がれなくて。悔しい思いをしたんですけど、今回、コント師として神保町で初めて1位になれました。
宮崎駿介(以下、宮崎):ニューヨークさんのYouTubeチャンネルで、花鳥風月問題としていろいろと取り上げられてたんですけど、僕が思ういちばんの問題は花クラスにコント師が1組もいないということだったんです。だから、1位になれたのは大きいことやなと思いましたね。
明賀愛貴(以下、明賀):嬉しい気持ちはもちろん存分にあるんですけど、前回の1位だったナイチンゲールダンス不在だったんですよ。
カンノ:ナイチンがいたら状況が変わってたんじゃないかという声も、チラホラと聞こえてきたので。
明賀:次回はナイチンに勝って、1位になりたいですね。
――今回、割とブラックで動きの激しい感じのコントでの挑戦でしたね。
カンノ:体感的にウケるなぁっていう感覚があったので、(勝負にも)強いネタなんじゃないかなと。
宮崎:僕と明賀くんの揉み合いが多いネタで、『Jimbochoグランプリ』に向けて、揉めるところをどんどんブラッシュアップして。
明賀:何度か揉めるシーンがあるんですけど、元々は首を絞める動きだけだったんです。けど、それだと代わり映えがしないなということで、動きに差をつけた結果、どんどんヒートアップしてしまって。
宮崎:揉み合いが激しすぎて、本番では僕のシャツのボタンが吹っ飛びました(笑)。
カンノ:ネタが終わって袖にはけたら、次の出番だったサンタモニカのマイムくんが「すごいですよ! 神だ!」みたいな褒め方をしてくれたのも嬉しかったですね。
――昨年度でいえば、『キングオブコント』準決勝進出、年末の『おもしろ荘 2021』出演もありましたが、『頂~鳥~』では先ほど話していたように惜しいところまで行きながらも最上位の花クラスに上がれなかったりと、いい意味でも悪い意味でもあと一歩が届かなかった1年でもあったのかなと思います。
カンノ:たしかにそうでしたね。それで言うとね?
明賀:僕、昨年は厄年でして。おじいちゃんが亡くなったり、肩を脱臼するほどの大怪我をしたり、大変だったんです。
宮崎:昨年の『キングオブコント』準決勝で僕らだけ動画審査になったのは、明賀くんがコロナで陽性になってしまったからで。その影響で、『頂~鳥』にも出られなかったりといろいろと災難が重なったんです。
明賀:ホテルの療養期間を終えて家に帰ったら、宮崎くんがリビングにポツンと座ってて。「お帰り」って声をかけてくれたんですけど、「明賀、厄払いにバンジージャンプ飛んでこい」って言われて。誕生日も近かったので、宮崎くんのおごりでバンジージャンプしに行きました。
――どこまで行ったんですか?
明賀:長野県の猿ヶ京っていうところです。ちゃんと飛んで無事だったので、厄払いもできたのかなと思ってます。
カンノ:そこから、年末は『おもしろ荘』に出られて……年明けてからはどうやったかな?
宮崎:ほとんどの人に知られてないんですけど、4月くらいにあった『ぐるナイ おもしろ荘 オンラインTHE LIVE』っていう配信ライブで、フタリシズカと同率で優勝させてもらいました。賞金もいただきまして。
カンノ:初めてネタで賞金をもらえて、自分らのネタに価値がついたように思えてすごく嬉しかったですね。
宮崎:けど、反響はまったくなかったんですよ(笑)。
明賀:お笑いナタリーさんにさえ、この結果は載ってなかったです。
3人が刺激を受けたコント師は?
――新ネタは毎月、何本くらい作ってるんですか?
宮崎:月2~3本くらい……いや、もっとかな? 今、神保町ではいろんな芸人が主催ライブをやってまして。僕らは特にやってないんですけど、呼んでもらえるのが大体、新ネタライブなんです。
カンノ:∞ホールの先輩方のネタライブに呼んでもらうことも増えてまして。この前は、∞ホールのネタバトルで優勝されたうるとらブギーズさんのライブに呼んでいただいたり、しずるさんやGAGさんと同じ舞台にも立たせていただいていたりしてるので、今がいちばんの成長期かもしれないですね。
明賀:かなり刺激をもらってます。9月25日には、大阪の森ノ宮よしもと漫才劇場での出番をいただいてるんです。僕ら、3人とも大阪出身なんですけど、大阪での仕事は初めてなので嬉しくて。カンノは僕らに伝える前に、家族へ電話してました(笑)。僕はまだ言ってないんですけど。
宮崎:僕もまだ言ってない。
カンノ:あぁ、そうなん? 母親は仕事の関係で今まで一度も僕らの舞台を観に来たことがなかったんですけど、今回は観に行くよって言うてくれてるんで気合を入れてやりたいですね。
――以前の『ラフマガ』で、カンノさんが自分たちの強みはいい意味でネタに色がないところだと話しつつ、宮崎さんは型にハマってないのは悩みでもあると言われていました。その辺りの意識に変化はありましたか?
宮崎:神保町でオダウエダさんが主催してるライブに出させてもらった時、先輩方に僕らに足りてないものはなんなのか、質問したんです。それを楽屋でレインボーの池田さんが観ていたみたいで。僕らに足りないものとして、真っ先に“スター選手がいない”と話されていたと聞いて……たしかにそういうところはあるかなと。
カンノ:決定的な働きをするポイントゲッターがいないっていうことですね。
宮崎:そう。この人が喋ると笑えるっていう強いボケのポジションの人がいないって。ネタに色がないだけではなく、僕ら自体にあんまり色がないので。けど、ネタに応じてなんでもできるっていう意味で、(色がないことは)強みでもあるんですけどね。
明賀:7月の単独ライブでは6ネタやったんですけど、僕の役は最初のネタが女性で、そこから少年、青年、おじいちゃん、一般の人でした。老若男女、なんでもできるのはいいことなんかなって。
カンノ:僕らはネタをお客さんに観てもらうためのサポーター。ネタの内容やお話を観てほしいと思って、やってますから。
宮崎:たしかに、キャラクター先行でネタは作らないですからね。けど、印象に残りにくいっていうのは、シンプルに弱みでもあるのかなとも思ってます。
――宮崎さんがネタを作られてるんですよね。ほかの2人からは、いつもどんな反応があるんですか?
宮崎:どうだろう? あんまり返りがないので、いいのか悪いのかわからないんですよ(苦笑)。
カンノ:僕は監督である宮崎くんからいただいた台本を、役者としてお風呂場だったりで覚えて演じるっていう感覚だけですね。
宮崎:たしかに、カンノくんは「この時の役の感情がわからん」とか、役者みたいな意見ばっかり言ってきます。
明賀:僕は……宮崎くんから送られてきた台本を読んで、面白いなと思うこともあったり、どうなんやろうって思うこともあったりします。けど、実際に(舞台で)やってみるまでわからんなぁって。どうなんやろうと思ってたけどやってみたら意外と面白かったり、めっちゃ面白いと思ってたものがあんまりウケなかったりするので、とりあえずやってみようと思ってます。
宮崎:っていう考えを1人、心の中でやってるので、僕はまったく知らないんです。
――言葉にしていくと、よりらしさが見えてくるかもしれないですね。
宮崎:そうですね。僕らに足りないのは、そういう話し合いかもしれないです。
――先輩のイベントに呼ばれることが多くなったとのことでしたが、特に刺激を受けた方はいましたか?
カンノ:GAGさん。めちゃくちゃ自然にお芝居しながら、役に入られていて。坂本さんは色気がすごいし、福井さんは声を作って演じられていて。お三方とも声量がすごいし、お芝居に厚みもあって圧倒されました。
明賀:僕は、金の国ですかね。あと、最近ぐいぐい来てるゼンモンキーは僕らより後輩だけど、ファンの人もたくさんいて。ネタを観て、負けられないっていう気持ちが強くなりました。
宮崎:僕は……この前、ライブで一緒になったしずるさんのコント。5分くらい、1つの遊びだけで見せるものだったんですけど、表現力と空気感がすごくてめちゃくちゃ面白かったです。
今年は『KOC』決勝へ行きたい
――昨年、準決勝まで進んだ『キングオブコント』ですが、今年は進めなくて残念でしたね。
宮崎:そうですね。昨年、準決勝に行ったことで、周りの先輩方に認知していただけるようにはなりました。けど、決勝まで行かないとお客さんが劇場に足を運んでもらえないというか。準決勝だと、“面白いって聞いたことがある”どまりなんです。実際、劇場まで観に来てもらったり、多くの人にファンになってもらったりするためにも今後、必ず決勝へ行きたいです。
明賀:いろんな先輩方のライブに呼んでいただく中で、先輩方のネタを観てもちろんすごいなと思いつつ、負けてないと感じるところもあったんです。賞レースはナマモノなので何が起こるかわからないですけど、しっかりとしたネタができれば可能性はあるんじゃないかなって思ってます。
――そのほか、今後の目標はありますか?
宮崎:僕はネタ番組に呼ばれるようになりたいです。
カンノ:それでいうと、お笑いだけで食べていけるようになるのが1つの目標です。
明賀:バイト辞めたい!
カンノ:辞めたい! とりあえず月収15万円を目指して、この下半期はがんばっていきたいです。
明賀:あと、テレビに出て知名度が上がったら全国ツアーをやってみたいです。この前、単独ライブをやったんですけど、観に来てくださった関係者の方々に「1回だけだともったいない」とか「ツアーにできるくらい面白かったよ」と言っていただいたんです。だから、全国ツアーにお客さんが来てくれたり、地方にもファンになってくれる人がいたりするような存在になりたいですね。
宮崎:僕は……目の前のことしか見えないんですけど、最終的にはルパン三世の脚本を書きたいんです。僕の知ってる中で最強のトリオは、あの3人だと思うので。
カンノ:あれ、ルパン三世の3人ってそういう認識?
宮崎:そう。最終的な目標はそこですけど、とにかく『キングオブコント』。今年はダメでしたけど、決勝へ行ったり優勝したりしていろんな人に知ってもらえるようになりたいですね。
■オフローズ
2016年結成。カンノコレクション(左)、宮崎駿介(中央)、明賀愛貴(右)のトリオ
■撮影協力
rébon Kaisaiyu
〒110-0004 東京都台東区下谷2-17-11
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ライター/高本亜紀 撮影/瀧川寛(CUBISM)
企画・編集/重兼桃子
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