アイナナ スロットメーカー創作SS
暗い海の底で、空を見上げながら死んでしまいたいと思った。
バンがいなくなってからの世界は何者でもくすんで見えた。
色のない世界で紡ぐことのできる音なんてありやしないのに、あの子は今日もやってきて、
「音楽をやめないでください。」
だって。
知ったような口を聞くなよ。お前に僕の何が分かるんだ。って、ずっと追い返してきた。
でも、海の底で考えてるうちに気づいたんだよ。
お前こそ、何も分かってないじゃないかって。
バンがどうしていなくなったのか、バンが僕のことをどう思っていたか、バンが僕にどうなってほしいのか。僕は何一つ分かっちゃいなかったんだ。いや、分かろうとしなかったんだよ。
音楽をやめると言った僕にあの子は言うんだ。
「そんなことバンさんは望んじゃいない」
って。
もし、それが本当だとしたら?
僕はバンの失踪を無意味にする。まるで犬が自分の尻尾を追いかけてぐるぐる回るみたいに。
だから、
「5年だけ。」
そう言ったあの子と一緒に走り続けるから。
お前が無視できないくらい大きくなるから。
そしていつかお前の方からやってきて、
「Re:valeのファンなんだ。」って言わせてやる。
だからその時は、教えてよ。
バンから見えてたものをさ。
今日の空は何色に見えるかな。