たつ屋
特別美味しいというわけではないが好きな店というのがある。
なんというか、そのお店に漂っている空気やグルーヴのようなものを味わいに行く感覚。
そんなグルーヴを感じに行きたくなるお気に入りのお店がある。
新宿「たつ屋」
1969年創業の今では珍しいチェーンじゃない牛丼屋。
ここには戦う男の覇気と、食事という束の間の休息が相まって独自の空気がある。
お客はほとんどスーツ姿のサラリーマンだ。
それを迎える店員さんは初老の男性で、優しい笑顔でテキパキと仕事をこなしている。
席はカウンターだけで、お客さんは皆もくもくと丼を口へと運び、その表情は緩んでいるような真剣なような面持ちである。
この空気感はチェーンの牛丼屋では味わうことができない。
どこか一体感というか仲間意識すら感じる。
「俺達、仕事とか人生いろいろ大変だよな。でも飯食ってまた頑張ろう」
って言っているわけもないのに、どこかそんな声が聞こえてきそうな空間。
これを味わうことでまた生きていくことを少し頑張ってみようと思えるのである。