「蹄」「背中」(2023/12/06)
国王マリウスが死んだ。
寝室で短剣を突き立てられ絶命していたのだ。
国の一大事ともあって、何よりも優先して犯人探しが行われた。
マリウスが最後に確認されたのは寝室に入る直前、発見されたのは朝方、従者がマリウスを起こしに行った時であった。
犯行は警備の薄い真夜中に行われたということになる。
それゆえに目撃証言などもなく、短剣も寝室に飾られていたものが使われており、手がかりはほとんどない。
捜査が停滞する中、一人の男が声をあげた。
「私は犯人を見た」
その男の名はイサク、宮廷御用達の金細工職人である。
国の威信にかけてなんとしてでも犯人を捕まえたい警備部はこの証言に飛びつく。
「確かに見たのか」
「ええ、私は確かに見ました。宮廷から素早く夜道を馬で駆けていく男を。あの国王から賜った隊服の背中と、あの馬の独特な蹄の音は、間違いなく騎士団長ギャバンでございます」
証言をもとに騎士団長ギャバンは投獄された。
「なぜ私が捕まるのだ」
「酒好きのお前のことだ、酔って感情が抑えきれなくなったんだろう。なにより、お前の親友イサクの証言である。親友を貶めるような嘘はつくまい。」
お題提供:ピカソケダリ メロス(蹄)/ポポポ(背中)