SATO=UKIBIの白い粉(このお話はフィクションです)
SUNAGIMOです。この話はフィクションです。砂糖農家さんたちや、砂糖の歴史を侮辱する意図は一切ございませんので、お許しください。
遠い昔、はるか彼方の銀河系に、シュ・ガーレス星があった。名前の通りこの星には”甘味”という概念がなかった。どれくらいなかったのかというと、レモネードをレモン汁原液100%で飲んでいたほどだ。そのため、この星の住人たちはいつも梅干しのような顔をしていた。
ある日、銀河の外(シュ・ガーレス星は恒星オ・シオを中心とするショウユ・オ=ス銀河に位置する)から、来訪者があった。外交官たちである。彼らは群星サ=トウ・イゾンからやってきた。好きでこんな辺鄙な(シュ・ガーレス星の住民たちが聞いたら怒髪天である)惑星にやってきたわけではない。彼らの母星がSATO=UKIBI畑(この植物は茎を折ってしゃぶるとうまい)に覆われてしまったので、やむなく過疎銀河に土地を買いに来たのである。
当然ガーレス星の住民たちはいい顔をしない。当然である。ガーレス星は過疎銀河の弱小田舎星である。一度群星の侵入を許してしまえば植民星になることは明白である。しかし、相手が外交の名目でやってきた以上もてなさないわけにはいくまいて。ここでガーレス星の神シ=オ・タイオウのような対応をしてしまえば、あそこの星は貧しい上に心まで醜い、どうりでやつらの顔はいつもシワッシワなわけだ、心の醜さが顔に出ているのだ……などという悪口を百光年は言われることになる、多分。
そんなことを考えたのかどうかは知らないが、ガーレス政府は外交官たちを盛大にもてなした。外交官たちもお返しとばかりに、群星の自慢、これこそ群星の誇り、SATO=UKIBIから作られた白い粉をふんだんに練り込んだ、茶色い薄型の焼き菓子を振る舞った。
ガーレス政府の要人たちはいぶかしんだ。このKUKI?(ガーレス語の発音ではこうなる)という菓子?とやらからは、なんだか、とても、鼻につく匂いがする。嗅いだことのない匂いだ、しかし不快ではない……要人たちは恐る恐るKUKIを口に含んだ。そしてその瞬間、菓子といえばSU昆布か、UME干ししか知らなかった老人たちは、SATO=UKIBIから作られた白い粉の虜になってしまった。
おお、大神タイオウよ、哀れみたまえ! そこからは早かった。「土地を売ってくれればSATO=UKIBIの白い粉を分けてあげるよん。なんなら製造法教えてあげるから、ガーレス産のSATO=UKIBIの白い粉を我が国に輸出しない?」という甘言(SATO=UKIBIの白い粉をふった言葉である)に踊らされ、ガーレス星の表面はあっという間にSATO=UKIBIだらけになった。原液100%のレモン汁とSU昆布、UME干ししか知らなかった人々に、SATO=UKIBIの白い粉は毒すぎたのだ。
同じようなことが各銀河で繰り返された。そして最初にイゾン群星がSATO=UKIBIの白い粉に取り憑かれてから3100000光年後、SATO=UKIBIはついに超過疎過疎田舎銀河に位置する超過疎過疎田舎星、地球にたどり着いた。地球の人々も無事にSATO=UKIBIの白い粉の虜になり、今現在までマドレーヌやシフォン、チョコレートなどのうめえ菓子が生み出され続けている。
何人たりとも、SATO=UKIBIの白い粉の魔力から逃れることはできないのである、その白い粉の名は、SATO(地球の日本国にはこれと同じ発音の名字が存在する。佐藤さんである)である。
おしまい
砂糖プランテーションが実在した歴史を考えると、笑い話にはできないかもしれない。白い粉の力に人間は逆らえないのだ……(締め)。
砂糖に依存性・中毒性があるのは”ガチ”なので、お気をつけください。
公演をやります。公演にも依存性があってほしいものです。よろしくお願いします。
劇団ダダン冬公演「オカシナヤツラ」
2月9日 (金)18:00~
2月10日(土)14:00~/18:00~
2月11日(日)13:00~/17:00~
会場:雑遊(新宿三丁目駅 徒歩1分)
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