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現代版アレンジで大宮が本当嫌なヤツになったよね【『友情』感想】

どうも皆様、劇団員のミネカワと申します。

普段は役者や宣伝美術を担当しています。と同時に、主宰のファンをやっています。


「この見出し画像のポーチは何だ!」と思った方、鋭いですね……! こちらは私が最近制作した劇団的屋非公式グッズです。ここでしれっと紹介させておくことで、グッズ化の布石を打っておこうと思います。

あざといね!

さて、旗揚げ公演『友情』から約1年も月日が流れてしまいました。私は杉子役として出演させていただいたのですが、ようやく、原作小説を読破することができました。


さっくり感想

・仲田が面白い

想像以上に仲田がしっかりと面白い人で驚いてしまいました。現代アレンジではチャラい感じだったけれど、原作は何というか……シュッとしてる(?)

序盤の政治の話をしている仲田くん、別に特段面白い内容という訳ではないが、言葉選びが面白い。リズム感がある話し方をされてますよね、羨ましいね。「恋愛は画家で相手は画布」っていうたとえはちょっとよく分からなかったけど、多くの人、恋愛的に好きになる要素(資格)はあるという論理は十分理解できるし、仲田くんが結婚も恋愛もその位重くないものだと捉えているのは、面白いなぁと思いました。

私は恋愛や結婚を究極激重に考えているけど、恋愛や結婚を「人生を潤させる手段、充実した暮らしのための手だての一つ」という見方もおんなじ位分かるよ。

もちろん、当時は今よりも結婚=恋愛で、するものだという価値観が強かったので一概には言えないかもだけど。

それはそれとして、その話を野島づてに大宮が「恋があって相手の運命が気になり、相手の運命を自分の運命とむすびつけたくなるのだ」と言ったのが印象的でした。

運命を結びつけたくなる、ってすごく素敵な言い方ですよね。恋愛ってそんなきれいな言い方できるんだ! 誠実な表現で素敵だと思いましたね。


・大宮がいい人

そして大宮はいい人。友人が不安を感じていたら、つかさず安心させるような言葉を使ういい人。しかもそれが、道徳や美学の形をした友人への信頼と尊敬であることは、私でもわかったつもりです。

そんな人信頼しちゃうに決まってんじゃん、ばか。ばか!

なおかつ、運動ができるのでスタイルがいいらしい。

す、すげー……!

これで売れっ子作家なんて、モテの擬人化が衣纏ってる感じですよね? ぼくのかんがえたさいきょうの友人じゃないですか、たぶんイケメンだろうし、そりゃ書生服で荷物を持ってすれ違った時に笑いかけられたら「!?」ってなりますね。


大宮って現代アレンジで嫌なヤツになったよね

ここからが本題です。現代アレンジで小説→ノベルゲームになりました。これによって、最後のシーンの意味合いが変わってしまったと思っています。

野島や大宮がサークルで作っているノベルゲームというのは、恋愛シュミレーションゲームのことを指します。加えて、大宮の「その反応ってことはあのエンディングだね。」から、マルチエンディングのゲームだと分かります。

これが、現代アレンジ大宮の性格が悪くなったと感じる要素です。

原作大宮が公開したのは私小説だった。手紙をそのまま公開したので、文面はほとんど事実のままでしょう。

それなら誠実だ、と私は思います。言葉に乗せて、行動に含んで友情を示した大宮(加えてイケメン、ルックス◎、世間に認められた作家なのだ)には、十分にその道を選ぶ権利はあると、原作を読んで思いました。

野島ってちょっぴり自分勝手だしね。

ただ、それがゲームに置き換わると話は変わりましょう。

恋愛ゲームで描かれた杉子は「杉子ちゃんに似たキャラクター」であり、杉子ではありません。脚色されて可愛く仕立て上げた、キャラクターです。

とっても意地悪な言い方をすると、可愛いところだけを抽出した、媚びたキャラクターです。

しかも大宮が書いた作品は、自分視点の私小説ではなく、野島視点を想像して書いたゲームです。野島が杉子に萌えている様子を書くなんて、原作大宮なら「君を侮辱することになる」と言って絶対にしないでしょう。

野島の恋心に対しても、杉子の恋心に対しても失礼です。

しかもマルチエンディングなら、もう言い逃れはできません。エンディングが複数個あるゲームは、プレイヤーの選んだ選択肢を最も重要視しています。

「ここで○○を選んだから、好感度が上がった」「□□を選んだから、■■を回避できた」という、女の子に好かれるための恋愛ゲームの選択肢は、裏を返せば説教くさいものです。

大宮には、野島の杉子に対して取った選択の正誤判定ができるというのでしょうか。

きっと無意識なのでしょう。これまでゲームを作ってきた大宮が、ゲームという手段で思いを伝えるのは自然なことです。

しかし、自然なこと以上の意味が生まれてしまった。

私はそれが現代アレンジされた大宮の「友情」を疑ってしまう理由です。どうしても、野島を下に見ている感じがしてしまいます。

私はノベルゲームを作っているので「そんな選択の一つでヒロインの人生が変わってたまるか!」という思いと戦う日々です。どうしても、大宮のこと性格悪いと思っちゃうよ。


他にも変更点が

原作を読んでびっくりしたことは、他にもあります。杉子はと、大宮の作品のファンでした。ちゃんと、読んでいました。

恋愛ゲームに置き換わったことで、この設定は透明になりました。

作品には作家の思いが深く籠もります。それに共感していることは、野島じゃだめで大宮じゃないといけない理由に説得性が増しますよね。

原作で「私のいい性質をそのままに認めていて下さるのはあなたばっかりです。」と杉子は言っていましたが、友情のために杉子に冷たく当たっていても、それは友情に厚いからだと、本質を見抜けるからだと思っちゃいますよね。

しかも、原作では杉子は大宮に会ったことがありました。十四歳のときに、野島とも会う前に見かけたそうです。昔いいな、と思った人が素晴らしい文章を書いていて、なおかつ思った理想通りの性格をしていたと知ったら……嬉しいでしょうね。本当に、嬉しくて嬉しくて仕方ないでしょうね。

恋よりも友情を選ぶ人は、信頼しちゃいます。


野島の人生はカッコいい

結果的に大宮は恋愛を選びました(選ばさせられました)。

大宮は拒んだものを手に入れて、作家として大成した。

野島は手に入らないものを強く望んで、作家として大成した。

どちらの生き方を私はしたいのでしょうか。

私は、野島かなぁ……。友情も愛情も失って、残った仕事に打ち込んだ結果成功することを望みます。

別に「友達いーらない!」って言ってるわけじゃないですよ! 本当! 信じて、待って、行かないで!

孤高の天才に憧れるのです。他は全くだめなのに、これだけは、負けない人になりたいです。私は良い環境に恵まれたので、絶望から這い上がったその物語性を恐れています。

世界中の誰もが認める作家は、その物語があるような気がしています。天才になりたいですね、本当。


まとめ

野島に元気もらっちゃったよ、武者小路実篤の策略にまんまとハマっちゃいましたね。

原作もちゃんと読んだことだし、藤木さんにもどうしてこんな形になったか改めて聞いてみたいな〜。

アレンジって面白いね。語りたい!


それでは、またどこかでお会いしましょうね!

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