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稽古場対談

今回の対談では、稽古場のお二人(役者:南方大幸さん、役者:板垣大稀さん)に作品を作っていく中でのお話を聞きました(二人のほかに、途中少しだけ出てくる人もいます)。
稽古場の裏側が垣間見られる対談となりました。お楽しみください。


自己紹介

渡邉
お2人自己紹介をお願いします。
南方
はい。劇団ケッペキ新3回生、今回のヤジルシの稽古では役者をさせていただいております、南方大幸と申します。よろしくお願いします。
板垣
劇団ケッペキ新2回生の役者をさせていただいております板垣大稀と申します。何卒よろしくお願いします。
渡邉
よろしくお願いします。
南方
そういえば2人ともだいきなんだよね。
板垣
そうですね。
南方
今思い出したわ。あだ名がどっちも名前じゃないから全然見落とされがちなんだけど。名前読みするとややこしいかなってのもあって。そう、そうだったわ。すごい。
南方
俺は大きい幸せのだいきで、
板垣
僕は大きい稀の。
南方
読み方は一緒、漢字は違うよって感じ、はい。一応わたちゃんの自己紹介していく?
渡邉
進行?進行…
南方
司会進行。
渡邉
司会進行をさせていただきます。今回制作チーフを務めてます、渡邉結菜です。よろしくお願いします。
南方
新2回生のね、
渡邉
はい。ケッペキ2回生の渡邉結菜です。お願いします。

はじめて脚本を読んで

渡邉
それでは対談始めます。
まず、稽古していく中でどうだったかみたいなことについて2人で話して欲しいです。例えば、脚本を最初に読んでどう思ったか、とかありますか?
南方
脚本を最初に読んだのはオーディション前やったんですけど、まず最初に出てきたのがわからへんなっていうこと。ちょっとこれは本番見てもらったらわかるんですけど、ストーリー性が少なくて、短めのシーンがポツポツとありまして…。その中でこれをどうやって面白いって思わせていくか、それこそ新入生の人たちに楽しんで見てもらうにはどうしたらいいんかなとか考えてましたね。
板垣
僕もわかんなくて。でもやるってなったら正解じゃなくてもいいんで自分なりに理解してやらないといけなくて、それが伝われば一番いいんですけど。どうでしょう、何だろうな。
渡邉
難しい。
南方
難しい脚本だからね。本当に本当に難しい。
渡邉
みんなで共有したりしましたか?読んだ感じとか。
南方
脚本全員で読んで、演出の井手美唯奈さん、これからいでみさんって呼ぶんだけど、いでみさんがこの脚本を通して何を見せたいのか、どう思ってもらいたいのかみたいな話をして、そのときにそれぞれも思ったことを言いました。この脚本は太田省吾さんって人が書いたんだけど、彼のエッセイも読んで着想はそこから考えたりもしてます。というか、脚本に絡んだ話のエッセイがあって、関連してるなと感じるところもあったので、そっちに話を広げつつ、みたいな。そんな感じですかね。
板垣
そうですね。はい。

左:板垣大稀 右:南方大幸

稽古場での苦労

渡邉
稽古は結構順調に進んだ感じでしたか?
南方
そんなことはない。
板垣
もう、そうですね、はい。例えば、進んだかなと思ったらやっぱよくわかってないよねってなって、1回戻りましたよね。脚本をちょっと理解しましょうっていう段階に戻った。
南方
うん。作品見たりとかして、一旦インプットに時間をまわす期間があったね。多分、俺のシーンなんかは第1回通しと第2回通しでめちゃくちゃ変わった。第1回通しやってみて違うなとなり、そこから魔改造したぐらいには相当方向転換をした。今のが完成かって言われたらそうでもないけど、方向性はそのときにガラッと変えて今に至るみたいな。そんな感じですね。
渡邉
いろんな試みを稽古場でしてたと思うんですけど、それは最初からやろうと思ってやってたのか、途中で方向転換したのか、どちらなんでしょうか。
南方
どちらっていうのは…。
柳澤(対談に立ち会ってくれていた制作ヒラ:柳澤祐太さん)
稽古場の状況を見ながらちょっと計画を変更したのか、それとも最初からそういうことをやろうとしてたのか。
南方
どっちもある。それこそエッセイを読もうってのは多分最初から考えてたことだと思うけど、それ以外のこと、それこそ俺のシーンの方向転換とかは見てて思ったことだろうし。他の稽古場では多分やらないだろうなっていうワークショップも、太田省吾のエッセイから着想を得てやったり。ものによりけり。
板垣
なるほどなるほど。
南方
なんでガッキーがなるほどって言うの、意味わかんないでしょ(笑)。
ガッキーはやったでしょ。一緒にやったでしょ。

言葉のワークショップ

渡邉
面白かったワークショップとかありました?
南方
稽古場特有のワークショップは、机の上にぼんって物を置いて、それに対して思ったことを書くやつ。直接的な表現をせずに、書く。五感的に感じたことを。
見たまんまこれはペットボトルですっていうことはできるんだけど、ペットボトルから感じられる、例えば温かさとか、そういう一見わからないものを頑張って感じ取って書くみたいな、そういうことをやってましたね。
これがめちゃくちゃ効果あるかって言われたらわからんけど、新鮮ではあったかな。物に対する見方が多分結構変わったような気がしますね。
渡邉
物の名前とかから解放される感じがしますね。
南方
このワークショップも多少太田省吾から着想を得ているものなんだけど、エッセイに直接書かれてたというわけではない。太田省吾が2001年の同時多発テロで飛行機が突っ込む映像を見て、それを、ショートケーキに入っていくナイフっていう表現をしてて。そういうのを見たときに、こういう発想の仕方があるんだなみたいな事をみんなで思って、挑戦してみるかってなった感じですね。
板垣
それが一番特殊だったんじゃないですかね。やっていくうちにちょっと頭がおかしくなってくるような感じがしましたけど。
渡邉
そんなに何回も何回もやった感じですか?
南方
5人で2周したから、合計10個とか。
渡邉
すごい。
板垣
物の名前とか役割とか、そういう固定観念から離れられるまでやるみたいなんで。当然頭がおかしくなるまでやるわけで。

柳澤
太田省吾の比喩もかなり危険ですよね。本来は進んで破壊されないものを簡単に切れるもので例えてるから、かなり危険な比喩だと思う。
南方
そうそう。彼もエッセイの中で、あんなに立派に見えるビルでも飛行機が入っていったら簡単に崩れてしまったって言ってて、そこからビルを資本主義の象徴とみたてて、資本主義は意外と地盤が緩いっていう話に繋げてた。モノ社会っていうのが、簡単に崩れてしまうって思ったって言ってて。はあ?って思って、正直。あーそんなこと考えたんやな、あれで、って。といっても僕が生まれる前ですけど全然。うん?全然でもないか、生まれる1ヶ月前とかですけど。
板垣
この太田省吾の沈黙劇自体がだいぶ、反資本主義じゃないですけど、資本主義によって強いられている速度から脱する、社会性速度から脱するためのものらしいので。うーん、難しい。
南方
難しい。あとちゃんとこれ最後に個人の感想ですってつけておかないと、ちょっと太田省吾のファンの方にめちゃくちゃ言われるかもしれない(笑)。
川村(対談に偶然居合わせた人:川村有毅さん)
学生から見た資本主義論…。
板垣
でも僕はちょっとまだマルクスまでしか知らないから(笑)。まだ労働は搾取で止まってる。
(※彼は経済学部です)
殿垣内(対談に偶然居合わせた舞台監督。経済学部の板垣の先輩:殿垣内隼さん)
大序盤じゃねーか。
南方
すごいな、経済学部なのにそこなんや。
板垣
まだそこで止まってます。

板垣大稀

好きな場面

渡邉
次はお互いの好きな場面の話をしてほしいです。
板垣
好き…めっちゃ浅はかなことしか言えない。
南方
いいんじゃない別に(笑)
板垣
やっぱ、やっぱタンゴ好きですよね。
南方
わかるわかる、めちゃくちゃわかる。タンゴはいいね。
板垣
人が踊ってるのを見るのはやっぱ気分がいいですよね。
南方
いやタンゴはいいね。
板垣
もう言葉からもいいですもんね。
南方
タンゴはすごくいい。
板垣
好きな場面はそこでしょうね、これ。そう。
南方
あと、自分が出る場所はやっぱり愛着ありますけどね。
脚本を見た段階では、最初と最後が好きだったかな。最初と最後はやっぱいいよね。何がいいかはちょっと見に来てもらって(笑)。お楽しみに、っていう感じでございます。

(ここで役者:髙野皓太さん登場)

板垣・南方・渡邉
おー、髙野。お疲れ。
渡邉
髙野くんも入る?
南方
途中参加。途中参加めっちゃおもろいな。対談で途中参加してくんの意味わかんないもん。
渡邉
確かに意味わかんないか(笑)。じゃあ好きな場面だけ教えてほしいです。
板垣・南方
タンゴ、タンゴ!
髙野
一場のしりとりじゃない部分。全部しりとりだけ除いてもらって(笑)。
南方
なるほどね、あの会話ね(笑)。

上:髙野皓太 下:殿垣内隼

稽古で面白かったこと

渡邉
稽古で面白かったこととかあります?
南方
稽古でってていうか演劇しててになるんだけど、絶対普段しないことができるのが、許されるのがいいね。すごい非日常って感じがする。特に今回の俺のシーンが非日常だからっていうのもあるんだけど、ああいうことできる機会は本当になかなかないなと思うから、しんどいけどね、やってて楽しいかな。
板垣
自分が出せないと思ってた声を出しなさいと言われて、頑張って出そうとするのは、新鮮で楽しかったな。地声的に、大きい声となると高めの声しか出せないかなと思ったんですけど、(いでみさんが)低く出せ、と。出せと言
われたら出そうと頑張る!(笑)。というのがよかったですね。

稽古場エピソード

渡邉
何か稽古場でのエピソードはありますか?些細なものでもいいです。
南方
稽古始まって一週間とかのときに誕生日の役者が何人か連続でいて。誕生日のときは帰省して家族と一緒に祝う、みたいな形になりがちだから、稽古場には本人はこれないけど、せっかくだからいる人たちでお祝いの言葉を録音して、稽古場のグループラインに送るっていうことをやってた。でもなんか毎回ちょけたね。何でかわかんない。なぜかちょけた。
でも稽古の序盤ってやっぱり初めましての人も多くて緊張しちゃうから、そういうのがあったのはちょっと良かったんじゃないかなと。今思い返すと、ちょっとちょけすぎたかもしんないけど、ちょっとそれはごめんって感じなんだけど。
板垣
エピソードかあ。だんだん楽しくなっていったことは覚えているんですけど。
渡邉
最初の方とか、やっぱみんな緊張していたり、よそよそしかったりした?
板垣
僕も結構初めて話す人が多くて。本当にケッペキの活動として、今まで制作ヒラしかやってなくて。だから全然、はじめましてはじめましてはじめまして。ほぼ全員、はじめましてで始めさせてもらって。
結構気を使って話しかけてくれたいただいた方とかもいて、そういう方のおかげで順当にそこそこ喋れるようにもなって。
南方
よかった。
板垣
ありがたくやらせてもらってました。そういう感じです。
渡邉
なんかあれですよね、帰るときにしりとりとかもしてましたね。 
南方
そうだね、結構特徴的だね。特にいでみさんの演出のときに、稽古終わって解散する前に何かしようみたいなのがあって。いでみさんの演出は今回で2回目なんだけど、一回目の一昨年の新人公演のときは星座占いをやろうって言って。1位と12位の人で写真撮ろう、って言ってやってた。それで、今回の稽古場でも何かやろうって言ってしりとりを1周回すっていうのをやってるね。
板垣
しりとりは一応コンセプトとしては、速く言うっていうのがある。もうすごい、どんどんどんどんめちゃくちゃ速くなってったらいいよねっていうのもあったんですけど、一向に速くならない、と。
南方
本当に速くなんないね。
板垣
でも一向に速くならないのは、これ実は速度から脱せられているのではないか。この脚本ゆえの。
渡邉
しみこんでるね、みんなの身体に。
板垣
速度にこだわらない。
南方
うんこだわってないね。
板垣
これもまたこの稽古場の色なのかな。
南方
でもなんでなんだろうと思うよ。俺めちゃくちゃ前傾姿勢でさ、何来るって予想してんのにさ(笑)。まあ面白いからいいけど、全然。

南方大幸

南方から板垣への質問

渡邉
私から聞きたかったことというか、用意してたトークテーマはそんな感じなんですけど、お2人お互いに聞きたいこととか、何かあります?
南方
ケッペキの稽古場はどう?高校の時と似てる、みたいな話あったけどどうだった?
板垣
そうですね。僕が中高入ってた関係の演劇部を作った方が、ケッペキに入った方だったので、そこからちょっとワークショップとかも引き継がれてて。ちょっと差はあれど。どっちが独自の進化を遂げたのかわかんないですけど。
南方
でもあまりシーンの作り方とかは似てない?
板垣
シーンの作り方…。中高の演劇部ってやっぱそんながっしりとしたものじゃないですし、演出も僕が適当にやってた…別に適当にやってたわけじゃないですけど(笑)、ある種適当にやってただけなんであんまり…。でもシーンの作り方自体は、ケッペキでも稽古場によって違うんじゃないですか?
南方
うん。演出によって全然違う。
板垣
ですよね。だから、そこに関しては同じとかそういうのはなかったですね。
南方
ケッペキは結構、作品ごとに演出がバラバラで。初演出です、っていう人が何人もいるような感じでバラバラなんだけど、でもこの先輩に憧れて演出やりたいみたいな感じで連綿と受け継がれてるところもあるから、流派っぽいものがないことはない。うっすらと、何かちょっとこの人のあれを受け継いでいるな、みたいなのはある。
演出をよくやる人が2人いて、ある人はA先輩のやり方を受け継いでて、ある人はB先輩のを受け継いでて、それぞれがバチバチみたいなのもあったりする。一応。
だから、ケッペキが特殊な感じがする。いやどこの団体もそうなのかな。わかんない。学劇っていうと結構、演出が固定な団体もあったりするんじゃないかな。団体によっては何か演出部ってのがあって、何人かで話し合って演出つけるみたいなところもあるそうなんですけど、うちはそうじゃないね。

板垣から南方への質問

板垣
なんで演劇始めようって思ったんですか?大学2回生から入団したんですよね?
南方
俺が入学したときがコロナ禍で、オンライン授業が多くてあまり課外活動ができませんっていう感じになっちゃったから、1回生の間に単位を取って2回生から遊ぼうみたいな気でいた。それで実際1回目のときに卒業に必要な単位の半分ぐらい取って、よし遊ぶぞってなったんだけど、1回生で結構頑張って単位をとったから燃え尽きちゃって。昼の12時に起きてご飯食べて、夜の6時まで寝てご飯食べて、また昼の12時まで寝るみたいな生活をしてたのよ。それを中高の同期のやつに言ったら、いやそれはあかんやろと。今自分演劇やってるけどやらんかって言われて、やるわって言って入ったっていうのがきっかけだから、そんなに大した理由ではない。マジで、人に誘われたから。
板垣
なるほど。でもすごいですね、そんな計画的な単位取得が。
南方
単位取得は計画的だったね(笑)。
ただ演劇自体には、結構みんなより適当に入ってる気がする。
板垣
そんなことないんじゃないですか?
南方
みんな演劇を見るのが好きだったとか、中高から演劇やってたりとかね、そういう人がチラチラいるから。ガッキーもそうだし。ガッキーは演劇は高校から?
板垣
中高ですね。
南方
なんか俺は全然そういう演劇とは縁のない生活をしてきたから、いきなりポーンと入って、なんかすげえって。それこそ、入ったきっかけだけで言うとだいぶ適当なんじゃないかな。だいぶハマったけど。
渡邉
そうですよね。
南方
きっかけの割には変わったんじゃないかなって。
渡邉
この先もずっと続けたいと思ってます?
南方
いや、わかんない。とりあえず続けるつもりはあるけど、この公演が終わったらとりあえず院試までは休憩して、院試終わったらまたやろうかなみたいな。院に少なくとも2年行くからその2年の間は演劇して、就職するときにもう一回ターニングポイントがあるかな、みたいな感じです。でも多分仕事しながらもそれなりにやってんじゃないかな。そんな感じです。
板垣
すごい、すごい。
渡邉
将来楽しみですね。
南方
なんだそのコメント。なんだ。
渡邉
そんなところですかね。はい。今日はありがとうございました。



編集:畑島綾・渡邉結菜

劇団ケッペキ
2024年度新入生歓迎公演『↗ヤジルシ』
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