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「石榴」閉幕しました。そのよん。〜演出・全部署総集編〜

どうも。
劇団HEN/SHIN主宰のA-ta.です。

…え?もう2024年が終わるって?

そうなんです、あっという間にもう大晦日なんです。

10月には書き切ってるだろうな〜という当時の私のなんと見立ての甘いことか。

こちらは8月に上演しました劇団HEN/SHINの旗揚げ公演、石榴にまつわる備忘録の最終弾となっております。

ここまでの全3回はよろしければ以下からどうぞ。

これで本当の本当に最後です!!!!

ではでは早速いきましょう。


演出


客席を向く演出

まずは、知り合いから聞かれた客席を向く演出に関して書きます。

取調室のシーン、なんでわざわざイスを客席に向けたんですか?なんか意味があるんですか?

と終演後に聞かれまして。
たしかに取調べですから、普通に考えればお互い向き合った状態が自然です。

正直に答えましょう。

初めから向き合う形にしようと思ったことはありませんでした笑

石榴をやると決めた時から、何なら本を書いてる時からずっと客席を向く演出で行くと決めていました。

じゃあ何故そうしたのか?と改めて考えてみますと、客席を地続きにしたかったというのが一番の理由かなと思います。
私はこの作品を書いている時に、観客の皆様には見終わった後胃がキリキリ痛むような、そんな感覚を味わってもらいたいと思っていました。
そして同時に、あぁ現実じゃなくて良かったと思ってもらいたかったんです。
それもあって、いかに観客の皆様を巻き込むか、劇の中に没入させるかがこの芝居のでした。

なので、もう物理的に客席を向いてしまえば、必然的に観客の皆様はこの作品と向き合わなければなりません。

それが一番の狙いでした。

ところでまぁこの演出、お互いの表情が見えてないのに芝居出来んのすげえというところに行き着きます笑
毎回忘れちゃうんですよね、役者の演技があまりにも自然で、お互いの表情が見えていないということを。

もちろん稽古の時は鏡張りのスタジオだったので多少見ながらやっていたかもしれませんが、本番は当然そんなものはないので。

改めて役者、すげえなと思いました笑


その他の演出におけるこだわりをつらつら書いていこうかと思います。

メタ的こだわり

物語冒頭で、金成が千佳子に対して「芝居の稽古をしてるんじゃない」という台詞を放ちます。
そして物語終盤では、千佳子が「それは私の台詞でしょ」という台詞を吐きます。

実はこれちょっとしたこだわりではありますが、物語・演劇・芝居の「うそ」をチラつかせることで、これがあくまでお芝居であるということを提示していました。

没入させるけれども、あくまでお芝居ですということを忘れさせないという、本当にどうでもいこだわりです笑

イチャイチャシーン

こうやって書くとちょっとなんのこっちゃって感じですが。
具体的には千佳子聡一郎のシーンですね。
稽古の中で1番時間を使ったんじゃないかというくらい、2人のイチャイチャシーンは大変でした。

抱きしめる、キスをしようとする、等々触れ合いが起こるシーンで、川合と狩集がそれはもうぎこちなくてですね。

でも私は千佳子の自分の持つ女の部分で何とかしようとするところと、聡一郎の得体の知れなさを表すのに、どうしても2人が絡むシーンが欲しかったんです。

ただ2人をイチャつかせたいわけでは決してありません。
もしそうだとしたらあんな苦しんでまでやる必要ありませんでした笑

最終的にはなんとか2人の息も合ってきて大丈夫でしたが、あれを観た人はどういった感情になるんでしょう。ちょっと未だに気になります。

総菜作業場

観た方の中には、これいる?と思った方もいたかもしれません笑

ですが、私にとってはかなりこだわりのあるシーンでして。

私が手取り足取り教えたというのもありますし、わざわざYouTubeで総菜作業場の動画とかを探してきて役者に共有したりしました笑

今、何をやってるのか全然見えて来ない。

と稽古中何回も言った記憶があります。

でもこれって実はすごく大事なことで、マイムって役者の力量に関わってくると思うんです。
なのでおそらく川合、美晴、安永の3人はこのシーンによってマイムの能力がグンと上がったに違いありません笑

このシーンの一番の目的は、千佳子の多面性を描き出し、彼女の背景に何があるのかを示すことでした。
そのため、個人的にどうしても外せないシーンでした。

モノローグと現実と妄想と

私はいつも役者に意識の使い分けをして、と言います。

例えばモノローグのような1人語りの時と、対誰かと話す時、また観客を意識した時では自意識の範囲が違ってきます。

一応役者たちには本の段階でここは千佳子の回想ですよ、ここは現実ですよ、という風に説明してはいました。

アンケートにどこからが本当なのか分からない!という声がありましたが、それはもしかすると役者たち自身がこの意識の使い分けに成功していたからかもしれません。

呼び方

気づいた方がいるかは分かりませんが、実は千佳子と聡一郎には、お互いの呼び方にこだわりがあります。

千佳子は過去のシーンでは聡一郎のことを一貫して「聡一郎さん」と呼んでいます。そして現在では、聡一郎のことを終始「」と呼び、ラストシーンの最後の対話で10数年ぶりに名前を口にします。
それに対し聡一郎は、千佳子のことをずっと変わらず「千佳子」と呼び続けます。

一切名前を口にしない千佳子と対照的に、変わらず千佳子と呼び続ける聡一郎という構図に、実はものすごいこだわりがありました。

自分の未来のために過去に復讐しようとする女と、いつまでも過去に固執する男ですね。

なぜ聡一郎がそんなにも過去に固執しているのかについては、実は私の中で1つの明確な理由があるのですが、それを明かしても解釈を狭めるだけなので、あくまで皆様のご想像にお任せします笑

ラストシーン

最後の千佳子と聡一郎が面会するシーン、あれは特に観客の皆様に悩んで欲しくてこだわりました。
聡一郎の言葉が本心なのか?はたまた保身なのか。

特に聡一郎の「だって……愛してた」という台詞は、私が石榴の中で最も好きな台詞です。

稽古中、何度違うと言ったことか分かりません。
愛してないね、と毎回言っていた記憶があります。

第三者から見たらそれが例えば執着であったとしても、どんな形であれ、聡一郎にとってはなんです。

愛してた、が納得のいく形になったのは本番直前の通し稽古の時くらいだった気がします。

それでも、本番前のシーン練習の時は上手くいかなかったりと、成功率はかなり低めでした。

自分で言うのもあれですが、ただでさえ難しい台本の、最も難しい台詞であることは間違いありませんでした笑

それでも千秋楽には1番いい愛してたが出たので、こだわり続けてよかったなと思うと同時に、聡一郎役の狩集によくぞここまでやってくれたと心の中で特大拍手を送っていました。

音響照明


照明

照明に関しては、演劇祭共通の汎用性の高い照明の中から我々が当たりに行く、という感じでした。
なのでこだわれるポイントは正直あまり多くありませんでした。

その中でも一応、場面によって色の温かさだけは変えていましたね。
例えば室内の時は少し温かみのある地明かりに、病院の時は無機質な冷たい地明かりに、といった風に変えていました。
あとは、シーンの切り替わりや空間を分けるのにも照明の力を使いまくりましたね。照明様様です。

音響

音響に関しては、結構こだわった記憶があります。

まずは客入れ客出し曲ですね。実はこれ、にテーマを絞って選曲していました。もし気づいた人がいたらちょっとした喜びなのですが笑

物語の中で、雨というのが意外と鍵になっていまして。一番最初に決めたのはショパンの雨だれです。これは開演直前、また客出し中に流していました。

また雨だけに絞ると曲が限られてくるので、モトミヤから愛をテーマにしたものはどうかと提案があり、最終的に雨と愛がテーマのピアノ音楽で統一されることになりました。

そして、なんといっても極めつけは劇中の赤子の泣き声と笑い声ですね。

モトミヤが子供が産まれたばかりの職場の同僚に動画を送ってもらい、極限までリアルな音源を作ってくれました笑

そうなんです、あれは既成のSEじゃないんです。

私も初めは既成のものでいいのないかな〜と探していたんですが、しっくり来るものがなく。
とりあえず私のイメージする泣き声と笑い声の素材だけかき集めて、モトミヤにぶん投げた次第です。

いやぁ、音響に関しては本当に申し訳ないなと毎回思います。

この辺でいい感じに入って、とか、ここまでで消えてて欲しい、とか。

音にこだわるだけでなくきっかけもその人のセンスに任せるという横暴ぶり。

いやだって音響なんて気付いたら音がして気付いたら音がなくなってるのが一番最適じゃないですか?!?!?(暴論)

これも全て、モトミヤに全信頼を寄せているから出来ることかもしれません笑
1人で良くぞ頑張ってくれました。

こうして考えてみると、やっぱり照明も音響もその場にいる臨場感というか、劇にのめり込まないと成り立たないなって思ってしまいます。

だからこそ、私はいつも一番最初にスタッフさんも交えてワークショップをするんです。

ある程度「演じる」ということに慣れてもらうといいますか、間合いだとか、そういう感覚を掴んでもらうためにもやってます。

だから私は音響照明の方々にはいつも稽古場に来ることを勧めています。
すべては稽古場から生まれるというのが私のポリシーなんです笑

宣伝美術


実は石榴が公演として動き出した時、一番最初に立った部署が宣伝美術でした。

というのも、我らが劇団HEN/SHINのロゴ作成と共に石榴のフライヤーの話をしていたので、案が固まったのもすごく早かったです。

初めはフライヤーだけのつもりでしたが、案の段階でものすごくいいものがたくさんあったので、没案ではなく仮チラシとして採用させてもらいました。
また、今や我が劇団員の優七から提案があり、当日パンフレットまで作成しました。

当時から優秀な宣美ーズでしたが、今回再確認しましたね。

仮チラシ。情報公開で初お披露目。
本フライヤーの原案。
最高にアチアチなフライヤー。
裏のザクロにも実はこだわりが。

フライヤーの原案を初めて見た時、ひと目でぎゅっと心を掴まれました。(恋?)

そして、松原光音はやはり天才だという結論に至りました。

私的1番のお気に入りポイントは、子宮と卵管に見立てた伸びるです。

実はこれ、千佳子の盗癖を表しているとか…!

どうやったらそんなこと思いつくんだと毎回感心させられます。

優七、安永ともに宣美の皆様には今も頭が上がりません。

いつも私のわがままに答えてくれる女神たちです。

ちなみにこちらの本フライヤー、FLCOふらこさんの第4回フライヤーコンテストに応募させていただいております!

なんとなんと2024年12月31日(火)〜2025年1月27日(月)まで投票期間となっております。

もしいいなと思っていただけたら!下記より投票いただけると幸いです。

衣裳メイク


衣裳メイクに関しても、結構早い段階から決まっていました。

大体いつも私は第1回の部署会議までに、ある程度頭の中にあるイメージ図を描いて持ち寄ります。

例として聡一郎の衣裳案。

ざっくりとしたメモ書きと共に、何となくのイメージで殴り書きします。(全登場人物分)

それに基づいて手持ちの衣裳を持ち寄ってもらったり、購入したりします。

今回は大体本番の2週間前に衣裳合わせしました。

今回はメイクの方は私が一人一人実際にやって決めました。

なかなか自らやる演出もいないかなぁと思いますが、私の場合は指示してやってもらうより手を動かしてイメージを具現化していく方が性に合うのでそうしました。

メイクを施す様子。
めっちゃ時間かかりますがこれがまた楽しいんです。

そして完成したのがこちら。

看板女優の安永は顔出しNGです。申し訳ありません。

本番だと照明でメイクが飛んでしまうのであまり感じなかったかもしれませんが、みんな結構濃いめのメイクを施しています。

終演後になぜ衣裳が白と黒で統一されてるのかという質問をいただきまして、いい機会なのでここでも回答します笑

最初に言いますと、一応、意味はあります。
ただ、感覚的なものもあるのではっきりとこう!と上手く説明が出来ず…。

例えば白には、真実/純真//などなどの意味があります。

対して黒には、虚偽//黒子などなどの意味があります。

また1色で統一せず、白と黒の2色が混じった衣裳は、真実と虚偽が入り交じっていることを示しています。
つまり、この作品のテーマの一つである何が本当かは分からないという意味もあります。

あとは、夫婦同士はなるべく色を揃えてみたり。

メイクに関しても千佳子と聡一郎は近いテイストで仕上げました。

一部から聡一郎のメイクが耽美的で好きだというお褒めの言葉をいただき、大変光栄です笑

なので全体を通して衣裳メイクには私のこだわりが強く出ているかもしれません。

制作web


制作Webに関しては、例のごとく折り込みや、インタビュー企画をしてもらいました。

インタビューは何となく私が質問を考えて、それをみんなに答えてもらった感じです。

大活躍だったのは間違いなく優七でしたね…色んな提案をしてくれました。

各所へのインタビューだったので中々に大変だったと思うんですが、みんな忙しい中文字起こししたり、まとめたりしてくれて素敵なインタビューが出来上がりました。

気になる方はぜひご覧下さい。

ちなみに宣伝時よく使っていた⚖️については、私と安永で考えたものです。

天秤と言えば、弁護士バッジにも描かれる「自由と正義」「公正と平等」の象徴です。

この物語は観客の皆様に判断を委ねる、言ってしまえば観ている方に自分の中で裁きを与えて欲しいという意味も込めて、天秤にしました。

実はもうひとつ、あまり使ってませんでしたが🫗こんなのもありました。

覆水盆に返らず的な意味でこれにしていたんですが、なかなか使う機会がなく笑

覆水盆に返らずって、皆さん、語源知ってますか?

1度離れた夫婦は元には戻れないってお話から来ているそうです。 

いやピッタリじゃね?!?!?!

1度したことは取り返しがつかないというのもこの物語にピッタリですし、大元の話もピッタリ。

細かいですが、意外と色んなことを考えてこういうのも決めてました笑

おまけ〜オフショットの盛り合わせ〜


最後に、(おそらく)まだ世に出していないけれどもA-ta.が個人的に好きな写真たちを並べていきます。

なんとなく時系列順で貼り付けます。

座組の雰囲気が少しでも伝われば幸いです。

一番最初のワークショップの様子①
ワークショップの様子②
役者のみの一番最初のワークショップ。
稽古終わりにみんなでバーミヤンに行った時の様子。
台湾カステラを前に妖怪と化したA-ta.と仕事でヘトヘトなおじさん。
役者の増田いわく、自画像らしいです。
役者の美晴。
底抜けの明るさに毎回救われてました。
稽古終わりに飲みに行った時の美晴。
よく飲みよく食べるので見てて清々しい。
たしか2回目の土砂降り事件の日です。
不覚にもA-ta.が指定する日は雨が降りやすいという都市伝説が生まれてしまいました。
たしか土用の丑の日が稽古の日のこと。
鰻は買ってあげられないので蒲焼きパンを差し入れたら役者に崇められました。
真剣な稽古中のこの美晴よ。最高です。
衣裳合わせでテンションが上がっている主演女優の川合星奈。
非常に可愛らしいですね。
衣裳合わせの待ち時間に台本と向き合う狩集。
なぜこんな楽しそうなのかは分かりません。
増田が出張土産で買ってきてくれたお菓子と集合写真。
美味しすぎておかわりバトルロワイヤルが発生。
公正なるじゃんけんの結果1番食べたがっていたA-ta.が負けました。
後輩の狩集が扇子で増田を仰ぐ図。
見慣れすぎて当たり前の光景に。
写真撮影の日の1コマです。
テンション上がりすぎて増田がノリノリでした。
スキップスタジオでの最終稽古の日①
スキップスタジオでの最終稽古の日②
増田が最後の記念に撮りたいと言うので撮ってあげました。
寂しそう。
母である香里と息子である聡一郎の距離感がおもろくて撮ってしまった1枚。
あんなに仲良くしてたのになんで帰り道こんな離れてんの?ってなりました。
初日の集合時の様子です。
朝からイチャイチャしてました。
初日のゲネプロをやり、そのままの格好で移動する男。
"ジャージ貴族"と名付けられました。
初日本番直前の様子①
みんな思い思いに過ごしています。
初日本番直前の様子②
A-ta.がソワソワして楽屋を覗いてます。
池袋にある我々の故郷、ケバブ屋でザクロジュースを嗜む神先とA-ta.です。
テーマはホステスと太客です。
千秋楽本番直前の様子①
増田と狩集はいつもイチャイチャしてましたね。
そして美晴はいつもカメラを捉えている…
千秋楽本番直前の様子②
不安要素が多すぎて泣き出してしまったモトミヤを抱きしめてなだめるA-ta.です。
最後はやっぱり打ち上げです。
今思うと、結構飲んだり食べたり多いかもしれません笑
年内最後に揃ったメンバーたち。

いやはや、こうやって見ると本当に楽しかったなぁと思います。

改めて見ても、座組のみんなの表情が本当に良くて。

ありがとう石榴。さようなら石榴!!!!



そして今、我々劇団HEN/SHINは次回公演に向けて、着々と準備を進めています。

手始めに!誰でも気軽に参加できる演劇ワークショップを開催します!
開催日時は以下の通りです。

・1/13(月・祝) 14:00〜16:00
・1/26(日) 14:00〜16:00

なんとなんと参加してくださった方の中から、第2回公演のメンバーが決まるかもしれないワークショップです。

演劇をやりたい人なら誰でも歓迎です。

詳細はまた追って公式Xからお知らせしますので、ぜひともフォローしてお待ちください!


今回こうしてわざわざ公演を振り返ってみたのも、実は次回公演に向けた第1歩のひとつです。

劇団HEN/SHINって、どういう雰囲気なんだろう?

そもそも、公演ってどういう感じで進んで行くんだろう?

等々、我々をはじめ、そもそも演劇と関わったことのない人たちにも分かりやすくお伝え出来ればいいなと思い、やってみました。

どんな方々と出会えるのか、今から楽しみで仕方がありません。

たくさんのご応募、お待ちしております。

それでは!また会う日まで。

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