【歩子】14年間毎月ライブで16本ネタ披露…元Bコースのタイツアート芸人【ムゲンダイユース】
「すげー間違ってることしてるんだろうなって思う時がある」
https://www.youtube.com/watch?v=Q7yMxy5weYA
ーー歩子さんが毎月開催されているライブ「歩子-1グランプリ」。ご自身のギャグやタイツアートを、司会やコメンテーターの前でひとつひとつ披露して、トーナメント形式で「その月最も優秀なネタ」を決めるライブですよね。
ひとつのトーナメントを終えるまでに、16本のネタを戦わせていく、と。
これは、いつ頃から始められたんですか。
歩子 放送作家の松本真一さんって方に、ルミネでネタ帳を広げてたら、声かけられたんですよ。「それだけネタ数あるなら、自分のネタとネタを戦わせてみたらええやん」って。
松本さんがイベントの構成とか考えてくれて。それが14年前で、そこから毎月。
ーー14年! 最初から、今のトーナメント形式は変わらず?
歩子 そう。第一回からキクチ(ウソツカナイ)に司会をやってもらって。最近は投票の形式をネットでもできるようにしたくらいで、昔からあの感じでやってます。
ーー並々ならぬ継続力を感じます。
歩子 うーん。でも、成功してないじゃないですか?(苦笑)
ネットで成功した経営者のありがたいお言葉みたいなのを見かけて、よく思うんですよね。ビジネスモデル、って言うんですか? 僕は絶対、間違ってる。
ゴールに最短で向かうとか、成功のために必要ないことを見極めて損切りするとか、それっぽいことはやらなきゃなぁとか思って、耳に残るけど、別にやってない。すげー間違ってることしてるんだろうなって思う時、ありますよ。
歩子-1グランプリは基本配信でやってるんですけど、舞台でやりたいって思って、劇場でお客さんを入れてやらせてもらった時もあったんです。
でも、結局お客さんはそこまで来ない。「ってことは見たくないのかな?」「形から変えなきゃいけないのかな?」とか思いながらも、やりたいし、やれるのがありがたくてやってしまう。吉本が機会をくれる状況に、甘えさせてもらってますね。
https://live.nicovideo.jp/watch/lv343186020
歩子 来月以降も、やらせてもらえる限りはもちろん続けさせてもらいます。
あと、キクチがやってくれる限りは。彼がいなくなったら……どうしよう。
ーートーナメントだと、勝ち上がったネタを複数回披露することになりますよね。
特に歩子さんのギャグは、システムチックになっているものも多くて、変化をつけて一回戦も二回戦も面白い印象です。
歩子 いやあ、司会とゲストのガヤに、かなり助けられてます。
自分で「システムのネタだ」って気づく前に、キクチとかが言ってくれてることも多いんです。それを受けて「システムは変えずに中身を変えればいいんだ」って気づかされることもある。自分で考えておきながら「これこんなに幅があるんだ?」、みたいな。
あとね、ゲストコメンテーターとして毎回きてもらってるのも、ちゃんとギャラが出てるんで来てくださるんですよね。吉本……めちゃめちゃありがたいです。
芸歴長いんで、それなりに色々ありましたけど。今、ありがたさしかありません。ライブやらせてもらえるだけじゃなく、設備もちゃんとしてる。
今出さしてもらってるムゲンダイ(ヨシモト∞ホール)とか、音響も映像も整ってるから、めちゃくちゃネタやりやすいんです。し、コント師は特に、複雑なキッカケのネタもできる。だから、ネタの質を高めていけるんだと思います。
「もっと知ってもらって、もっとウケなきゃいけない」
歩子 タイツアートのネタを一番最初に作ったのは20年前で。TV番組「ザ・細かすぎて伝わらないモノマネ」のオーディションに行ってる時でした。
一番最初は茶色いタイツを使って「手羽先」のモノマネをしました。それでオーディション受かって、味をしめて。
「タイツで何かやろう」じゃなくて、手羽先に似せるために手羽先っぽい色のタイツを被っただけだったんですけど、タイツを使った芸ってあんまり(他の人が)やってないところだったんで。じゃあもう手羽先以外もやっていこう、で、どんどん広がっていった。
歩子 フィリピンの方で、全く同じではないんですけど、似たような路線のインフルエンサーがいて。めちゃくちゃバズってるんです。
ーーたしかに、日本以外にも通じますもんね。
歩子 だから、体でモノマネする芸自体は悪くないと思うんです。でも、パクりたくないとか言いつつ僕は見せ方を工夫できてもないなって思う。自分の中での正解というか、面白いだろうと思って画像や動画にしてSNSに投稿してますけど、全然見られてないから、まあ、ちょっと、内心ふざけんじゃねえよって思いながら……。まあでも、それでも、思い立ったらやってる。
今が完成形なわけはないから。もっとやった方がいい。普通にやっぱり、もっと知ってもらって、もっとウケなきゃいけない。
僕の現状でいうと、ヨシモト∞ホールにレギュラーメンバーとして所属することを目標にやって、2 年くらい経つんです。でも多分、今のままでは上がれない。だからやっぱり、その環境に合わせて「この劇場だからこう見せよう」みたいなことを考え出す。自分だけ面白くてもしょうがないなと思いながら、お客さんに笑ってもらえるものを提供したいから……。
……でも、そうですね、なんか。難しいですよね。ムゲンダイは若いお客さんも多いから、ニッチなネタでいくのは合わないし。
ーーコアなファンとしては、ニッチなネタを歩子-1でやってほしい気持ちもありますね。
歩子 歩子-1はもう本当に自分の好きなやつをやれてるんで(笑)、メンタル的にも良い場になっています。
歩子 今回みたいなメディアで取材されたとき、たとえばくっきー(野性爆弾)さんみたいな、全編ボケで回答するような……そういうの、めちゃめちゃ面白いなと思ってて。そんな風に僕もやりたいなと思いながら、でもしゃべると意外と超普通のこと言っちゃってますね。後で後悔しそう(苦笑)。
「お笑いって、辛いことではないですからね」
ーー24年のR-1グランプリは、芸歴制限が撤廃されましたよね。
歩子 ねぇ。僕、年齢制限がかかる前の最後の年、1 回戦で落ちちゃったんです。翌年から制限かかりますって言われて、ちょっとなんかホッとしたんですよね。結果出ないし。
ただ、今回出場チャンスが復活して。また熱い大会が始まったんだ、と思って。自分ごとに思えて。うん。嬉しかったですね。
優勝はもちろん目標ですけど、ともかく決勝に行けたら。とりあえず吉本のピン芸人ではある程度、注目されると思うんですけどね。
前に出場していた頃は「自分らしさを出さなきゃ」っていつも迷走して、毎年結局脱ぐっていうのがオチだったんですけど……。次は、突拍子のない変なことやって、すぐに落ちないようにしたいと思ってます(苦笑)。
ーー今回歩子さんに取材して「純粋に自分が面白いと思うことをやる」という、芸人の方の根幹的な魅力を強く感じました。
ムゲンダイはレギュラー陣を中心に、すごく華やかな劇場だと感じていて。
その華やかなエネルギーももちろん素敵なんですが、華やかなだけではなくて、そもそも自分が好きな、楽しい、面白いと思えること。それが芸人の方の根幹的な魅力だと思うので。それをいつも考えているんだなと。
歩子 結局、お笑いって、辛いことではないですからね。お笑い、ですから。
歩子 今回のインタビューね……。トリオだった時とか、ツッコミがいたらボケ全編でやりきってたのかな。ツッコミがいてくれることってありがたかったですね。
最後まで謙虚な言葉を紡いだ歩子。
撮影時には「僕、電車のタイツアートは新宿が一番好きなんです」と笑顔を見せた。別れ際はキャップを取って、深く、何度もお辞儀をして去っていった。
取材・文・カメラ/小野寺美咲
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歩子の直近のライブ出演予定(一部)
◯ヨシモト∞ホール本公演「ワラムゲ!」(ヨシモト∞ホール)
2023年12月1日(金)18:10開場 18:30開演
◯バラエティネタライブ 入間NETA PARADISE(ヨシモト∞ドーム ステージⅡ)
2023年12月2日(土)14:45開場 15:00開演
所属する∞ホール、ステージⅠ、Ⅱを中心に出演。オンライン配信がある公演も。この他、歩子出演予定のライブはこちらから。