【おしみんまる・守谷日和】ユニット結成に至った「掛け合いの可能性」

2023年8月17日 19:53

ヨシモト∞ホールのユースメンバーに所属し、『いろはに千鳥』
(テレビ埼玉)や『ぴったりにちようチャップリン』(テレビ東京)などTV番組でも活躍中のおしみんまる。
2020年R-1ぐらんぷりでは決勝進出し、全国の劇場やTVに出演するほか演劇舞台作品にも多数出演する守谷日和。
2人は昨年のキングオブコントで、ユニット「おしみん守谷まる日和」として初出場ながら準々決勝の戦績を残している。

取材の中でそれぞれ見えてきた「ピンのやりがいとユニットのおもしろさ」。ユニット結成当初を振り返ってもらう中で、性格も芸歴も違う2人がそれぞれのバランスで「笑い」に向き合う素顔を垣間見ることができた。

ユニットの持つ可能性が「新鮮」

ーーヨシモト∞ドームでお2人が定期開催されている「ユニコーンライブ」、毎回拝見しています。

守谷日和　みてるって（人から）初めて言われました。
めちゃくちゃ嬉しいす。（劇場所属じゃない）ユニットの僕らがライブやらせてもらってるだけで、まずはありがたいですけど。

おしみんまる　ユニコーンライブでは新ネタをやるんですけど、うーん、僕ら2人とも、ネタ作んの遅いんすよね。

守谷日和　遅いすねえ。

おしみんまる　だから……あるんすよ。もっとこんなことやりたい、あんなことやりたいみたいなのが。新しい試みが。やりたいけど、実際は結構バタバタッと作っちゃう感じ。

守谷日和　まあバタバタすね。けど、僕は新しい試み、やってます。

「やってます」、とくり返す守谷日和さんにおしみんまるさんは思わず吹き出す。
和やかな雰囲気で取材が進んでいく

おしみんまる　（笑）。

守谷日和　やって、ます。（笑）。

おしみんまる　ああそう。

守谷日和　そうは言っても新しい試みなんで、普段よりさらに台本に時間がかかるんですよ。というか、出だしは「こんなんやりたいな」で書きはじめるんですけど、途中で分からなくなる。

普段はピンなんで、作った台本で無理やり走り切れる。でも、2人やと「相手が何言うんやろ」とか想像しだしたら、ワケ分からんようになるんです。

で、考えても分からないから台本作って押見さん（おしみんまる）にアテるんですよ。押見さんやったら何て言うかなって。
そしたら僕では考えつかないような言葉で返してくれるんで、「2人でネタ作るってなんて楽なんだろう！」って思いますね。「こんな広がり方とか、可能性があるんやぁ〜！」って。

ユニット初舞台のツッコミに「最高やん！」

おしみんまるさんは以前組んでいたコンビ「犬の心」で
2014年のKOC決勝5位の記録を残した

おしみんまる　僕はコンビ（犬の心）解散してピン芸人になって、まだコンビ歴のが圧倒的に長いんで。広がりのあるなし以前に、2人の方がやりやすさはありますね。

守谷日和　嬉しい〜。
僕はピンで12、3年やってきてるんですけど、1人でできることってめっちゃ限られるんですよね。どっかでオチをつけないといけないから、ピンは投げっぱなしのボケって絶対ダメなんです。

おしみんまる　ツッコミがないと（成立しない）。

守谷日和　そう、だからやりたくても物理的にできないことがいっぱいあるんです。それで、自分の投げたボケをツッコミさんに回収してもらって笑いになるって感覚とかないままずっとやってて。

今は押見さんとやらせてもらって、長い間できなかったことができてる感覚が新鮮で、すごい楽しいですね。

そもそもこのユニットって、何の面識もない頃に僕からオファーして始まったんです。
社員さんからヨシモト∞ドームのライブで「ユニットでネタやりませんか？」って連絡がもらった時に、ユニット相手がいなかったんでどうしようと思って。

前から押見さんの感じ好きやったんですけど、喋ったことはなくて。ピンでツッコミできる人って限られてるし「とりあえず1回やりませんか？」でオファーしたら、OKしてくれたんです。

おしみんまる　「俺なの？」って感じだったけど。

守谷日和　そのユニットライブに出ることになったんですけど、台本作るのが遅くなって、前日に送ったんですよ。
ざっくり設定やボケは考えたけど、ツッコミのセリフは考えられなくて。
押見さんのセリフの箇所に「押見さんがこれまでの芸歴で培ってきた経験を活かして、最高のタイミングで、最高のツッコミセリフをお願いします」って書いて。

おしみんまる　あ〜書いてあった！　それ書く時間あるんだったらセリフ考えろよ。

守谷日和　そこの文章考えちゃいました。

おしみんまる　こういうとこ、ピン芸人が書いた台本だなぁって感じですね。

守谷日和　いざそのネタが始まって、どんなツッコミがくるんだろうって思ってたら、すごくて。こっちが全く考えてなかったセリフだったんですよね。

僕が言いそうとか考えつきそうなモンじゃなく「それ！？」って着眼点で、しかも良い間で。お客さんにもウケて、「めっちゃ楽しいやん！」ってなったんです。「自分では出てこない言葉で、最高のタイミングでそんなんできんの？」と。「おいおい、最高やん！」って！

おしみんまる　ちょっとテンションが。妙だな。

ーー守谷さんにとって、これまでにない経験だったわけですね。

守谷日和　でね！　2回目同じネタやったら、そこのツッコミのセリフ言ってくれなかったんですよ〜。覚えてないんか〜いって。

おしみんまる　じゃあメモっとけよ台本に！

ツッコミの毛布をかけ続けている

守谷日和　こんな感じでやってくれんねんやったら、またやりたいなって思って。そこからユニットが続いてますね。

おしみんまる　僕としては、そういう「空白」の状態で台本をもらってるから、ネタというよりコーナーやってる感覚に近かったっすね。「ツッコミワードをそこに当てはめましょうゲーム」みたいな。だから気楽で、とにかくウケればいいやと思えた。守谷みたいな特別感もないし、あんまり覚えてないし。

いや、だからね、守谷はずっと1人が寂しかっただけなんですよ。自分のボケを誰かにツッコんでほしかった、つまりなんか、温もりを求めてた野良猫みたいなことなんすよ。
その後いくつかネタやっても「あの時の温もりをもう1度」って感じで。あの時より良い「ツッコミの毛布」をかけてんだけど、守谷からしたら最初の毛布が温かすぎて。

守谷日和　アレ以上の毛布をかけてくれたんですか？

おしみんまる　かけてるよ俺は！　今かけられる一番高い毛布をかけてるよ。出し惜しみしないから。

守谷日和　あ、それ聞けて良かったです。出し惜しみしてはんのかなぁと思ってました。

おしみんまる　それはお前が温もりに慣れたから！

守谷日和　ちゃいますちゃいます。慣れたとかそんな失礼なことないですよ。
押見さんには僕から組んでくださいってお願いしてる立場なんで、毎回毎回ありがたいです、毛布。たまに、「コレ毛布かな？」って思う時もありますけど。

おしみんまる　毛布だよ。ぜんっぶ、ぜんぶ、毛布だよ。

ピン300、コンビ900理論

ーー先ほど押見さんから、守谷さんの台本に「ピン芸人が書いた台本だなぁと思った」という話がありましたが。やはりコンビとピンでは、考え方も違うところがあるんですね。

おしみんまる　まぁそれはね。

守谷日和　基本、ピンの人って話できないですからね。誰かと一緒にやってきてないから。ネタ作りも練習も準備も全部1人でやりたいことやって、自分が1番おもろいと思ってる変人、それがピン芸人ですから。

おしみんまる　ピン芸人のユニットライブを主催してて思うのが、お客さんのいる芸人が出演するときでも、毎回集客がキビしくて。
俺たちはピンでお互いのいいところを引き出し合おうと頑張ってるけど、裏目に出てるのかも。「俺が俺が」ってなっちゃって、引き出せてないのかもしれない。

ーー守谷さんは、ピンとコンビの集客に関する持論をnoteに書かれていましたよね。

守谷日和　これね。普通に考えて、ピンが1人で300人集めてるんやったらコンビで300人集めたんと評価がイコールになるのはおかしいと思うんです。普通に考えて、2人やったら600人、「コンビ」という存在に価値を感じるお客さんがいるから＋300人で900人集めてないと。

だからピン芸人が300人集めるってことは、コンビで900人集めてるのと一緒だよ、という僕の理論をnoteに書いたんです。

おしみんまる　いや、今の話でいくとさぁ。箱推しのお客さんは抜いてもコンビで600人集められるんだったら、解散したら1人で300人集められると思うじゃない。

守谷日和　はい。

おしみんまる　計算上そうでしょ。なるでしょ。……でもこれ、0になるんですよ。

守谷日和　（笑）。

おしみんまる　怖いでしょう。

守谷日和　それは押見さんが……。

おしみんまる　違う、みんーな。みんな。マジで。

守谷日和　お客さんの大体が箱推しやったんかもしれないすね。

おしみんまる　だから足し算じゃなくて、かけ算なのかもしれない。相乗効果でお客さんがついてくれてたと。ネタもそうじゃないですか。ピンはどうしたって、その人の魅力以上のものは出せないから。

守谷日和　それがおもろいんですけどね。

おしみんまる　そう考えると、東京吉本でいうと、佐久間一行さんとかめちゃめちゃすごいですよ。「佐久間一行月1ライブ」ってライブを毎月やって、お客さんがちゃんとついてきてるわけだから。

守谷日和　ホントすね。ピンで集客力のある人のいかつさが浮き彫りになる。
この後KOCの話もちょっと出ると思うんですけど。もちろん全力で頑張りたいんですけど、僕は本来ピン芸人で、KOCはたまたま大会の規定で出れるだけなんで。僕個人としての一番の目標は、もう、日本アカデミー賞です。ガチで狙ってます。

気持ちは同じく「昨年を超えたい」

取材時は1回戦前だったが、現在はユニット「おしみん守谷」として
勝ち進み、8/15に準々決勝を控えている

ーー今年のKOC出場にあたって、現状はいかがですか。

おしみんまる　（取材の6月時点で）まだ全然。コンビや定期的に会ってるユニットに比べたら一緒にやれてないし。ネタも何本かは試しましたけど、まだどれでいくかとかは。
でも、去年もそんな感じだったもんね。

守谷日和　そうすね。ユニコーンライブ以外でやれてないんで、ちょっとまだ分からない部分が多いです。僕らの好みのネタやユニコーンライブで反応が良かったネタが、他のコンビと並んだKOCの会場でウケるかは分からない。

おしみんまる　とはいえ、去年出て思ったんですけど。人が違えば結局変わるし、分からないのはそうだなって。そもそも前のコンビの時と、守谷という人間とのやり方って、全然違う。

守谷日和　ええ〜。そうなんすね。

おしみんまる　前は僕がネタ作って、ネタ合わせの時もああしてこうしてって言う立場だったんですよ。だけど守谷は守谷でやりたいことがあるから、まずそこが違う。
それから去年は守谷が作ったネタを2人で話し合ってちょっとずつ変えていったんですけど、ネタは作った方が主導権を握った方がいいなって思ったんです。そういうことを2人で手探りでやっていくわけだから、分からない部分もあって当然なんで。

守谷日和　とはいえ、去年より手応えは感じたいですよね。僕は準決勝までめっちゃ行きたい。

おしみんまる　去年が準々決勝まで行けたんで、せめてそこまでは。出るからには前年は超えていきたいですね。
去年、準々決勝の前日に守谷が車で来てくれて、深夜まで2人でネタ合わせして。いい大人なのに青春してる感があって、うーん、楽しかったんですよね。

守谷日和　そうでしたね。でもあれ、その日に僕がちょうど引っ越ししてて、レンタカー返さなきゃいけなかったんでついでに乗って行ったんですよ。めっちゃいい話っぽかったすけど。すんません。