ドーパミンの出るチーズケーキ。
たいていの場合、プロのシェフやパティシエが作ったものはお店で作ったその瞬間にサーブされて食べるのがベストだと思う。
ところが、このチーズケーキだけはお店で食べるより家で食べる方が絶対に美味しい。
通常チーズケーキは冷たいけれど、こちらのは熱々ほかほか。私は少し焼き焦げが付いた方が好きなので、しっかりオーブントースターで焼く。
北海道で有名な「LeTAO(ルタオ)」のチーズケーキ「ドゥーブルフロマージュ」などは冷凍で届けられるから、常温で静かに解けるのを待てばいいだけなので準備といっても受動的な感じ。
ちなみに、洋菓子の片仮名ってなかなか覚えられないけど、これは「北海道の白いふわふわチーズケーキ」でたいてい通じる。
一方、神戸の「観音屋」は、能動的かつ積極的な姿勢で口に入るまでの工程が必要とされる。
まずは表面のセロファンをはがし、オーブントースターで表面のチーズがぐつぐつ言うまで数分焼く。スポンジ部分の半分くらいにまで溶けたチーズが垂れていたら、ベストタイミングのサイン。とろけるチーズがチーズフォンデュのようになっているので見た目以上に熱いから、注意しながらお皿に載せないといけない。
そして取引先や顧客への手土産の選択肢に秘書がこのチーズケーキを入れていたとしたら、単純にこのチーズケーキの食べ方を知らないか(きっと自分では食べたことがないと予想)、食べたことがあるのにあえて選ぶということは「気の利かなさグランプリ」で大賞を取っている秘書に違いないので3月でなくても蛍の光をかけてサヨウナラするのが正しいと思う。
そういえば、虎屋の羊羹などもそのたぐいに入るかもしれない。小形羊羹の詰め合わせなんかはそのままいただけるので嬉しいけれど、大きなのをドドンと入った箱で頂くと庶務の女性がナイフを探し出してきて、切り、紙皿に入れてみんなに配るというひと仕事が発生してしまう。
虎屋の羊羹は本当に美味しいし、安くはないし、しかも数本入っていると手土産としてはなかなか重たいのに何となくケチをつけられてしまう切なさ。一線を退いたシニアの方が準備してくれた資料のExcelがすべて一行ズレていたことが分かったときのようなそんな哀しさがある「夜の梅」。
あと、一時期異様に日本中で流行ったバームクーヘン。あれも大きなのをドドンと丸ごと入ったのを何度も頂いたことがあって、確かにご当地の美味しいバームクーヘンなのはわかるけど会社への手土産にするのであればユーハイムの1pcごとにカットしてある個装タイプの方が幾分も気が利いていて、いい。
ちなみにバームクーヘンは、巨大なのを欲しい分だけそぎ切りにして出来立てを売ってくれるユーハイムか和菓子の「たねや」さんが作った洋菓子の会社「クラブハリエ」がシンプルに美味しいと思う。
滋賀にあるのは、琵琶湖とミシガンクルーズとクラブハリエやねといって「馬鹿にしてるの?」と冗談半分本気半分で滋賀県民に怒られたことがあるが、何をおっしゃいますやら、彦根駅に静かにたたずむ「MICRO LADY COFFEE STAND」の珈琲も抜群に美味しい。
琵琶湖なのにミシガンて、、、というツッコミは、関西人を巻き込まずにお願いします。
さて先日、最近ハマっている北海道の珈琲「森彦の時間」と共にこのチーズケーキを楽しんだ。
少し焼けたチーズの下には、材料は卵と牛乳と卵と極々シンプルなスポンジケーキにとろりとかかっていて、口の中にチーズとスポンジの甘みが同席したところに、森彦が少し遅れて参加する。
いつのまにか「森彦の時間」は「至福の時間」になっていた。
賞味期間が極めて短く、食べるまでに準備が必要で口に入るまでにひと手間必要なチーズケーキ。
それが「観音屋」のチーズケーキ。
創業45年、激動に変化する時代は努力をおこたるとすぐに変化してしまう。シンプルな製造の食べ物ほど材料が素直に味に出る。
※アルミ箔は取ってからオーブントースターに入れてください。写真はせっかち関西人がやらかしただけです。