海苔巻きしょうゆ味。
今週から仕事始めの会社は多かったと思う。
例年であれば、年末なら仕事納めでカレンダー、
年始ならお年賀の菓子折りを持って取引先の担当者が挨拶に来られる。
というわけだったが、コロナのせいで年末年始の挨拶がほぼなくなってしまった。
これの意味するところは、いやらしい言い方をすれば、カレンダーもない、お菓子もない
年になってしまった…ということになる。
ところが、さっきゼロックスの近くで 「ご自由にお取りください」のおかきの缶を
発見する。
あれ?このおかきはどちらの会社からですか?
あー、それね。〇△社の社長からよ。
年始の挨拶に行けないからって、わざわざ送ってこられてね。
コロナでお仕事全然発注できてないのに義理堅い方で頂くの申し訳ないわね。
〇△社長とは数年前にあるプロジェクトがきっかけでお会いしたのだが、背が高くびしっとスーツを着こなし、口調もやんわり穏やかでかつにこやかな紳士で、とても印象がよかった。
こちらの名前もすぐに憶えてくださり、会話がすすんだのだが、なぜだかわからないけれどなんだか違和感があふれてくる。
うーん、感じもよいのになぜかなぁと全身見ていて、はたと気づいた。
ヘアスタイルである。
社長のヘアスタイルはおでこ全開の昭和ぽい感じなのだが、散髪屋さんがそんなぎざぎざに切りそろえるかなぁというくらい額の髪がギザギザになっていたのだった。
そうか。
この髪の毛はニセモンか。
あ、カツラ?
いや、違う。
カツラだったら全体にしろ、部分にしろもう少し顔にフィットしているし、そもそもギザギザになんてなりようがない。
そうか。
スプレーか!
ちょうど数日前にショップチャンネルで見たところだった。
黒い繊維の入ったスプレーを頭頂部に振りかけると、韓国のりをさらに細かくフレーク状にしたものが激しいスピードで一気に張り付いていく。
しかし。利き手でかけた側はキレイなのだが、反対側の手でスプレーするとやや雑になる。
その雑なスポットが違和感につながったというわけ。
この流れを社長の頭を注視しながら脳の片隅で順路を追って解読していたために、
先輩に「ちょっと!じろじろ見すぎ。失礼でしょ」と注意されたのを思い出した。
このスプレー、実はかなり高かった。
しかも、韓国のりフレークだけに何層にもかけていかないと頭皮が丸見えになってしまう。
当時は〇△社への発注が多かったので、さすが社長!部分カツラで手軽にごまかすなんてことはせず、日々オートクチュールのヘアスタイルを製作されている、まぁなんてきめ細やかでかつ仕事に手の抜かない社長なんだろう、と感心していた。
きっとこの社長に任せたら、なんでもうまくいくに違いない。
私はその社長のヘアスタイルを見るたびに、この社長は信頼できる、とまで思っていた。
そして、今日のこと。
社長、あのスプレー高いのに毎日どうしてはるんでしょうか。
もう半年以上、発注できてないので、そんなに羽振りもよくないはず。
ヘアスタイルに労力とお金をかけるのはあきらめはったのでしょうか。
いつも石原軍団みたいにコートを肩で着られていましたが、あのファッションでしたら確かに髪の毛は必要でしたよね。
ふとそんな思いが脳裏によぎり、「海苔巻きしょうゆ味」を1枚頂いた。
温かいお気持ち、ありがとうございます。 そんな優しい貴方の1日はきっと素敵なものになるでしょう。