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ヤングケアラーについて考える
訪問看護での業務中、高校生のお子さんが、精神疾患を抱えた中で、がんの母親を介護している現場に直面しました。部屋は散らかり、掃除も行き届いていない状況。
ふと「ヤングケアラー」という言葉が頭をよぎりました。
私が住む自治体では、まだ周知の段階であるように感じますが、東京都や埼玉県では条例が進んでいるようです。
ヤングケアラーとは?
子ども・若者育成支援推進法では、家族の介護や日常生活の世話を過度に担う子どもを指し、国や地方公共団体が支援を行うべき対象としています。(こども家庭庁)
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ヤングケアラーの実態調査から
令和2年度と3年度の調査によれば、小学生の6.5%、中学生の5.7%、高校生の4.1%が、家族の世話をしていると答えています。また、中高生の約2%が自身を「ヤングケアラーである」と感じていますが、5〜30%の子どもたちが「自分がヤングケアラーかどうかわからない」と答えています。
- ケアの対象として多いのは、「母親」や「きょうだい」です。母親の場合は精神疾患や身体障害を、祖父母の場合は高齢や要介護状態を抱えているケースが目立ちます。
- 家事(食事の準備や掃除、洗濯)や家族の見守りなどが主要なケア内容です。
- 平日のケアに費やす時間は「ほぼ毎日」が最も多く、7時間以上ケアに費やしている子どもも5~25%程度います。
さらに、ケアを行っている子どもたちは、健康状態が「よくない・あまりよくない」と感じている割合が高く、学校生活においても「遅刻や早退をすることがある」という回答が多く見られます。また、自分の時間が取れないことに悩む子どもも多いです。
相談経験については、約2〜3割が「ある」と答えていますが、学年が低くなるにつれて相談経験が少ない傾向にあります。中高生は「学業サポート」、小学生は「自由な時間がほしい」と答えることが多いようです。
東京都の支援
・相談窓口の整備
・ピアサポートの助成
・マニュアルの作成
・家族会の開催
・オンラインコミュニティの設立など
今の若者には、オンラインでの支援が役立つと感じました。
ただし、このような支援を受けるには、
・周りの人がヤングケアラーであることを気づいてあげること
・自分自身がヤングケアラーであるかもしれないことに気づくこと
が必要です。
そのためにも、もっと多くの人にヤングケアラーという存在を知ってもらい、相談窓口の情報を広めていく必要があります。
看護師として感じたこと
訪問看護を通じて、今まで想像すらしていなかった家庭環境に出会うことが多くあります。そこで、どうすれば目の前の家族を助けられるのか、何ができるのかと悩むことが多々あります。
看護師としての役割は、時に限界を感じることがあります。しかし、私たちが持っているのは単なる医療知識だけではありません。相手の立場に寄り添い、困難な状況を少しでも理解し、適切な支援につなげるための橋渡し役を果たすことができる。それが訪問看護師の本質であり、私がこの仕事に情熱を持ち続ける理由でもあります。
ヤングケアラーたちが抱える現実を知ったとき、自分にできることの少なさに無力感を覚えることもあります。しかし、その無力感を言い訳にせず、できる限りの知識を集め、適切な支援につなげるために行動することが重要です。それが、今の私たちにできる最大の貢献だと信じています。
私自身も、子どもの頃にハードな家庭環境を経験してきましたが、母親は私に学ぶ時間、遊ぶ時間、自由な時間を確保してくれていました。その環境に今でも感謝しています。だからこそ、今の自分がヤングケアラーやその家族に少しでも力を貸せる存在でありたいと強く思っています。