小学校の放課後、学校から帰ったら何をして遊ぼうかと、仲良しの友達と相談していた。
友達が言う。
「何して遊ぼうかぁ・・」
特に意味もなく僕が答える。
「そうじゃのぉ・・河原へ行ってなんかしょうか?」
「・・・そうしょうかぁ」
「じゃ、家にランドセル置いたらウチに来てくれる?」
「うん!すぐ行く」
僕んちの目の前にある土手を越えればすぐに河原に出るのだ。
・・・・・・・
河原では、流した木屑を目掛けて石を投げて当てっこをしたり、平たい石を川面に投げては石が水面を何回跳ねるかを競って遊んでいたのだが、やがてそれにも飽きた僕達は、先週の洪水で流されて来た瓦礫の中から、なにか目ぼしい物はないかと物色をし始めた。
竹竿やポリ容器や木切れや何かの紐などの色々な物が、アッチの草むらに引っ掛かりコッチの川岸にへばり付いている。
すると、竹竿を手にした友達が突然声を挙げた。
「おいっ!竿やら板やら、いっぱい転がっとるでぇ・・橋、作らんかぁ?」
「はし~~っ❓️」
「うん!橋っ❗️」
「ほらっ!そこの中島まで橋を掛けようや!材料ならいっぱいあるでぇ」
「えぇっ?この岸からあそこまで?・・3メートルはあるでぇ」
「やろうやぁ、やろうやぁ❗️」
・・・・・・・
川は上流に近い中流域にあったので、河原には丸い石が沢山転がっていた。
まずは橋桁の代わりにするための大きな石を沢山持って来ては、岸から中島までの間の2ヶ所に積み上げていった。
橋桁が出来ると、竹竿や棒切れや板などを集めて来ては岸と橋桁、橋桁と橋桁の間、中島と橋桁の間に橋を掛けていく。
・・・・・・・
2時間も経ったのだろうか、2人は汗をかきながら夢中になって〈土木工事〉に励んだ結果、ガラクタを集めて作ったとは思えないような立派な〈橋〉が完成したのである。
その〈橋〉にはご丁寧に欄干まで付いているのだ。
僕達2人はお互いの努力を称えあっては大いに喜んだ。
作業のために裸足だった足に靴を履いて、2人で感激の〈橋の渡り初め〉をした。
靴のまま足を濡らすことなく中島まで行くことが出来るのだから、それはもう凄いことなのだ。
中島まで行った2人は歓声の声を挙げた。
「やった~っ❗️」
「やったやった~~っ❗️」
2人は何度も何度も岸と中島の間を往復しては喜んでいたのだが、やがて夕方になり暗くなってきたので後ろ髪を引かれる思いで〈橋〉を後にし、家路についたのだった。
・・・・・・・
次の日の朝一番に、僕は1回〈橋〉を見てから学校に行こうと思っていたのだが、前日の疲れからか寝坊をしてしまって、土手のすぐ向こうにある〈橋〉を見る余裕も無く、急いで学校に行かなければならなかった。
・・・・・・・
小学校では〈橋〉のことが気になって授業なんて上の空だ。無論、友達も同じ気持ちで、早く放課後が来ることばかりを願っていた。
・・・・・・・
やっと学校が終り、急いで河原の〈橋〉を見に行ったのだが、2人は信じられない光景を目にしなければならなかった。
〈橋〉が無くなっていたのだ。
「❗️・・・・・」
「・・・・・・・」
綺麗サッパリと橋桁代わりの2ヶ所の石の山まで無くなっているのだ。
誰が何故〈橋〉を壊してしまったのか分かるはずもない。
2人は〈橋〉が無くなった川面を無言で見詰めるばかりであった。
当時、現在のように〈携帯〉とか〈スマホ〉があったのなら、あの〈橋〉を写真に撮って、是非とも皆様に見て頂きたかったと切に思うのだが・・・スマホなんて持っていたひにゃぁ、瓦礫で橋作りなんて超アナログな遊びなんかする訳はなかった。