氷結
七月に付き合って11月に別れたことがある。
それが人と付き合った最初なので、その後 「交際」 「女性」 「十代」あたりを語句として体から引っ張りだす必要があるたびに、そこへ、夏の青みと冬の茶色みもくっついてくるようになった。
冬の茶色みは茶色いカマキリくらいの茶色で、
夏の青みは、
夏の青みははずかしいけどポカリスウェットのCMの青色だ。
あれにあらがえるものか。
『アイスの実』のCMでは神田沙也加が、「とれたてのっ アイスの実っ ですよ〜〜〜〜〜〜〜〜」と言って防波堤から飛び込んでいた。
「バブルマン」という、ラベルのキャラクターがドリルのロボットの炭酸ジュースが
、、、、、
その年だけ売ってて、「ブルーレット置くだけ」と同じ青色だった。
この前みたフィッシュマンズのドキュメント映画の最終盤にあの青があった。あれもいい映画。
恋と失恋。交際と破局。
最高。
【こんなにいいことがあっていいのかよ】の夏と、【しばらく黙らせてほしい】の冬は、このように対比で言いやすいため、季節感とともに自分へへばりついている。
これをありがとう。
短歌の本の宣伝をしてくれる本屋さんが、ツイッターアカウントにあげるための、自著を持った僕の写真が要るときに「一冊を両手で」恥ずかしくて持てない人間である一方、交際と破局はべつに最高に「両手で持つ」ようなベタさで語るのを許しているのはそれら…………の源流にあるのが、どう じたばたしたところで夏で冬でポカリスウェットでテポラポッドだからだ。
どうしても語りたくない場合は、恋゛(ごい)みたいにいったん濁らせる。
自分の恋の話は、ぜんぶ恋゛バナ゛(ごい゛ばな゛)になってるといい。夢見ている。
この酒ってずっと売ってるなあ、と思いながら缶表面(かんひょうめん)のそろばん駒(ごま)ボツボツをさわる。この前不買運動をするところだったけど、別にしなくて済みそうだ。
氷結をこんなふうに言うのも恋゛(ごい゛)の一環だ。
恋人は他の島から、石垣にある学生寮、高校の敷地にある、高校の附属の、「ノルウェイの森」の上巻みたいなところに住んでいた。一階が男子部屋。2階が女子部屋。問題がよく起きていた。
実家で、お母さんのをちょっともらうことがある、と言っていた。
「お風呂あがりとかにもらうよー。」
「もらうよー。」なんて言い方じゃなかった。
言い方を再現できないくらいに遠い雑談になってしまった。
「缶チューハイなんてジュースみたいなもんだよ」
と続けていた。
これから何回もこれと同じ言い方を、いろんな県でいろんな人から聞けたがこの言い方の一個めはこれで、それは、自分の心臓の付近にこう書いてあるハンコが押されているようだ。
超、青(あお)の朱肉の。
沈むとしみだすじゅるじゅるのブルウな汁(じる)の。
「缶チューハイなんてジュースみたいなもんだよ」
氷結を買って飲むことがある。
これ飲んでるって言ってたなーと思わないのはむずかしい。
YouTubeでニューヨークを見ながら自分の作った料理を食べながら飲む。
ニューヨークのYouTubeにマリーマリーが出てるのを見ながら自分の料理を食べながら飲む。
YouTube含め いま書いた全部があの時期にはこの世になかったことを思うと気がスッとする
逃げてきた山小屋で、時効が成立した0時みたいな爽やかさだ。
顔じゅうにひげがある気分だ
手の中で、ボツボツの無いほうへ缶を回転させて原材料をみる
ウォッカ入ってるじゃんこれ
ウォッカ。
すごいなあの人