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喫茶店に蚊を連れてきてしまった

地元の言い方で言うと「蚊ぁ」だ

僕の白い、ポロシャツから飛び立つのをはっきりと見た

「がじゃん」とも言う
沖縄方言

歌もあった

兄ちゃんが小学校のときの先生が作った歌

CDも出していたらしい

その頃だし、8センチの短冊型だと思う

YouTubeには見つからない

こんど会うとき言ってくれたら、歌ってあげますよ

なんというか、すごくおじさんなメロディーなんですよね
でも言い出したのは僕なんで、しかたない

「そういう歌があるとか、そんなことよりこの人、おじさんだなぁ」と思われながら

歌いますよ。

学校の先生が歌ったところで、学校の先生はさいしょからおじさんなんだから
エネルギーの移動 が生じない

でも、この歌を大学から8年くらい付き合ってる彼氏が歌ったとしたら

「この人もなんだかんだ、そろそろおじさんの仲間入りなんだなあ」と彼女は思うとおもう

歌われているあいだ

これきっかけで。

そんなメロディー

ラストの詞は「僕は がじゃんに♪  勝ちました」だった

あれ 蚊の死で終わる歌だったんだな

ノワールだ

ノワール。

自分は台車で荷物の宅配をしてお金を貰っているので職場が外
夏〜秋なこのごろの一日には、いろんな時間で「蚊を払いながら」の手があるのだが、

その動きが喫茶店のそれぞれのテーブルに増えた

手で払いながら、喋りつづける

蚊の登場に

 顔も変えずに

  Tポイントの話を続ける

「なんかね 優待券だけで暮らしてる人もいるらしいのよ」

それ僕もマツコと村上の番組で見ました


チャリこぐの早い人ですよね

「だから工夫しだいってことなのよ結局」


昔の小説とかだけだよね、あぁいうのは、と思っていくように努めてしていったのに

「〜のよ」みたいなおばちゃんは東京の喫茶店とかには全然いるな

東京で、東京のおばちゃんになっていく何十年かを想像したことがあります
夜 布団の中とかで
市役所ではなく区役所に行くときどきを

蚊が顔に来ても
話題の中心が蚊にならない

そんなところでしみじみ 〈年上〉 だなこの人たちは、となる

「なにが起きてもおもんない」が「わたしたちはしゃべり続ける」、明日(あす)も。という最低限(さいていげん)さがなんだか、〈年上〉なのだ

微動だにしない
その表情

黒目が

「、」

というくらいにだけ蚊に対して動き、蚊の動きと動く

それといっしょに、

クッ

みたいに唇の端が糸で引っ張ったように持ち上がる

あー

〈年上〉だ

「蚊が来ても話題を蚊にせずにつぎつぎに話し続ける」の顔を見ていると、バイキング、に村へ来られ、扉を蹴られ、棚を倒され、手で冷凍室のブロック肉を食べられ、あらゆる宝物(ほうもつ)を持っていかれる側の気持ちと様子がすこしだけリアルに、心持ちとして自分のなかにあらわれてゆく


他の種族を殺し、役立て、肉を食う、とはこの〈顔〉のことなんだ

とすら自分に対してサービスめに思ってあげる

〈お前〉は「私のため」だ、と思う〈顔〉の「最低限(さいていげん)」さね。

この〈顔〉と、唇の「クッ」をなるべく減らしていく方向に、次の世紀に向けた、今の世紀中(せいきちゅう)から動くとよい、ようなそんなものがあるのかもしれないな。

冷房が強くなっている?
冷房が強くなると蚊ぁは飛びにくいのだろうか

さがしてもあの「・」がみえない

というか「手の動き」をしてたひとたちもいない、

入れ替わっている

頼めばああいうパスタが来るのか、今度いってみようかな、を前も思ったベージュ色のびしゃびしゃなパスタをフードの女の人が食べている 

ぶあつく四角いイカ 散りばまった みどり色のネギ


たべないだろうなー 自分は
けちだから
でも案外さらっとたべてる日があるかもな

がじゃん がじゃん
がじゃん がじゃん
がじゃん がじゃん がじゃん。

がじゃん がじゃん
がじゃん がじゃん
がじゃん がじゃん がじゃん。

僕は がじゃんに

勝ちました