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カスタマーサクセスの役割とはWhy×Howである

カスタマーサクセスの本質的な役割とは何なのか?この議論はこれまで多くの社内会議やイベント、SNSから書籍に至るまで古今東西語り尽くされてきたのではないか。

もちろん暗中模索な黎明期の概念に唯一無二の定義を付与するような恐れ多いことを試みようとしているわけではない。会社のフェーズや事業モデル、顧客やプロダクトによってカスタマーサクセスの在り方は千差万別だろう。むしろ経営戦略から逆算して個社ごとに最適なあるべき姿に変異していて然るべきだ。

そんな中でカスタマーサクセスの役割をWhyとHowという切り口から覗き見た本考察が、一つ参考例として微力ながら皆様のお役に立つことを切に願う。

◆カスタマーサクセスのミッションとアクション

まず、カスタマーサクセスが
最終的に目指すミッション(Why)と、
それを実現するためのアクション(How)
という2軸で思考領域を分けてみたい。

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◆カスタマーサクセスが最終的に目指すミッション

左側の、カスタマーサクセスが目指すミッションとしては、大別すると
顧客のサクセス(成功体験の創出)と、
自社のサクセス(収益の向上)
2つがある。

ここで注意すべきなのは、カスタマーサクセスは「どちらか一方を実現すればいいわけではない」ということだ。あくまでの顧客を成功に導き、その結果自社の収益向上にも貢献するという、両者の成功の架け橋にならなくてはならない。

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顧客の成功とは、米Gainsight社が提唱している定義によれば、
CS=CX+CO」となる。
(※Customer Success = Customer Experience + Customer Outcome)
つまり、顧客の成功とは「優れた体験を通じて求める成果が得られている状態」だ。

あくまでも顧客のゴールや目的(=Why)を達成して成果創出(=CO)をすればいいだけでなく、それを得られる過程や方法(=How)体験設計(=CX)も優れたものにしていく必要がある。

例えば、
・BtoBなら、利益向上課題解決を、
・BtoCなら、利便性の改善楽しさの醸成を通じたQOLの向上を、
できる限り
早く
エフォートレス
再現性高く
実現できるような状態ではないだろうか。

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そのような、成功の創出を顧客だけに留めてはいけない。それでは、カスタマーサクセスが「ただの御用聞き」「無料のコンサル」「別称のコストセンター」というレッテルを貼られるのを甘んじて受け入れなくてはならなくなる。

顧客を成功に導いた結果として、自社の収益向上(つまり自社の成功)を同時に実現しなくてはならない。言い換えれば、顧客の成功を通じてLTV(顧客生涯価値)を向上させるということだ。
多くの場合、成功体験を得た顧客はその会社やプロダクトを選び続けたり(継続利用リピート購入など)、プロダクトに支払う対価を上げたり(アップグレードアップセル購入頻度や数量の増加など)するだろう。

例えば、SaaS型の事業モデルで言えば、それらを定量化にすると、
継続率(裏返せば、チャーンレートなど)
客単価MRRARRなど)
の2つをLTV向上の一手としてKPIに据えることが多い。

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これらの経営的に非常に重要な指標に対して、カスタマーサクセスがもたらす顧客の成功に起因する影響は決して小さくはないはずだ。

カスタマーサクセスは自社の経営戦略やビジネスモデル、プライシングなどの設計などにも関与しながら、「顧客の成功が自社の成功に還元される流れ」を創る役割を担っている。

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◆カスタマーサクセスの取るべきアクション

そのような経営的に重要なミッションを実現するために、右側のようなアクションを起こしていくことも不可欠だ。

よく誤解されがちなこととして、カスタマーサクセスは社外(=顧客)に向き合ってさえいればいいだけの役割ではない。カスタマーサクセスは社外にいる顧客の成功に伴走しつつ、顧客の成功を全社的に支援できる体制を社内に構築していなかければならない。

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まず前半の顧客の支援について、カスタマーサクセスの役割とはWhyとHowを伝えることだ。つまり、
Why to use(プロダクトを使う目的・ゴール・メリットなどの訴求)
How to use(プロダクトの使い方、成果の出し方などの説明)
の2つを顧客にインストールしていく。

顧客に寄り添いながらプロダクトを通じてどのような目的を達成したいのかを明確に握りつつ、その実現に向けたプロダクトの活用方法を導入から定着、成果創出まで伴走していくイメージだ。

顧客志向(Why)が欠ければプロダクトの機能説明(How)しかできず、ノウハウやユースケース(How)の知識が浅いと成功事例や目指すゴールの話(Why)に終始し具体的な活用を促せない。

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ちなみに、カスタマーサクセスがWhyとHowに加えて、
What to do(具体的に何をすべきか提案する・それを代行する)
にまで踏み込むと、それはもはやコンサルになる。

コンサルが必ずしも悪いというわけではないのだが、
・顧客が自走しなくなり、顧客対応の工数が圧倒的に上がる
・顧客数が増えた時にリソースがパンク事業成長のボトルネックになる
・顧客対応の属人化が進み、社内人材の対応品質に大きな差が出る
などの観点で、カスタマーサクセスは代走でなく伴走を心がけた方が良い

言うなればコンサルがレストランのシェフなら、カスタマーサクセスは料理教室の先生だ。席に座って待っていれば素敵な料理を作って持ってきてくれるシェフではなく、料理の仕方を教えて顧客が自分で料理を出来るように育てる先生を目指そう。きっと御社製の調理器具(プロダクト)は長く愛用されるはずだ。

ただし、あくまでもカスタマーサクセスが最重要視すべきは顧客の成功をいかに実現できるか?だ。なのでそこから逆算した時に、どうしても代行が必要な領域なら部分的にはそうすべきかもしれない。
カスタマーサクセスが有償でかなり踏み込んだコンサルティング支援を行うプロフェッショナルサービスという領域も存在する。
単なるその場しのぎとしての代行ではなく、戦略的かつ本質的に顧客の成功を実現できる最適な道を考えよう。

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では、そのためのWhyとHowとは具体的に何を伝えていけばよいのだろうか。

カスタマーサクセスの悩みの種としてよく挙がるのが「顧客が動いてくれない」ことだ。裏を返せばいかに顧客を動かせるかが良いカスタマーサクセスかどうかの分水嶺とも言える。

そのために重要になるのがWhy to use(使う理由)を伝えることだ。BtoBであれ、BtoCであれ、顧客は忙しい。あなたの会社のプロダクトを使うこと以外にやること・やりたいことが膨大にある。

よく顧客から出てくる「忙しくてまだ出来てません」という言葉を鵜呑みにしていないだろうか?「忙しい」というのは、つまるところ「おたくのプロダクトに割く時間の優先順位が低い」と言われているのだ。

この優先順位なるものを上げていかなければ、永遠に顧客がプロダクトを使ってくれる日は来ない。だからこそ「このプロダクトを使えば御社のゴールを達成できますよ、あなたにとってメリットがありますよ」ということを伝え、活用動機を醸成しなければならない。

そしてゆくゆくは単にプロダクトを使ってもらうだけではなく、会社のビジョンやプロダクトの世界観を伝えて、ファンになってもらおうではないか。そういう、顧客がプロダクトを使う時の心理的な心地よさも重要なCXの一部だ。将来的にはファンになった顧客が他の顧客を紹介して連れてきてくれるかもしれない。

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そのようなWhyを伝えつつ、その実現に向けてプロダクトの使い方や成果の出し方(How)も伝えていこう。

How to useの部分は大きく分ければ、
山登りの方法を伝え(プロダクトの基本的な活用方法)
頂上への登頂を支える(上記を通じて成果を出していく方法)
の2つだ。オンボーディングトレーニング(アダプション・エクスパンション)と呼んでも良いかもしれない。

オンボーディングで、顧客へのプロダクト導入をスムーズに完了させ、顧客が自走できる状態を作る。このフェーズは、基本的に多くの顧客に対して共通化がしやすく汎用的な支援施策を設計しやすい

そしてトレーニングで、成果創出に向けた問題解決や社内浸透や利用頻度の向上などを促進していく。このフェーズは、顧客ごとに要望や課題感が分かれてくるため、ヘルススコアなどで顧客ごとの状況を正しく検知しつつ、適切なタイミングで必要なアクションを打てるような仕組みづくりが不可欠だ。
ハイタッチのような人力だけの解決策に依存せず、テックタッチやコミュニティなどの打ち手を上手く併用しつつ、ツールやテクノロジーで効率化・自動化を図っていきたい

なおカスタマーサクセスの基本思想として、プロダクトの活用度と成果度に正の相関があることを前提としていることが多い。つまり顧客がプロダクトを使えば使うほど、使えるようになればなるほど、成果もそれに応じて上がっていくはずだ、と。
この前提が崩れるとカスタマーサクセスの伝えるHow to useの内容も大きく変わってくるので注意が必要だ。

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そういった、顧客に対する支援をカスタマーサクセスがどのように実行していくかの設計=Howを深め、同時に顧客の成功を志すことの意義=Whyを社内に広げていくことが重要だ。

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カスタマーサクセスは単なる職種でも部署だけでもなく、組織であり理念でもある。いかに組織全体でカスタマーセントリックな組織文化を築き、全社的に顧客の成功を一丸となって目指せるかが肝なのだ。

顧客志向を社内に浸透させていき、顧客に「製品でなく成功を届ける」という意識を組織全体で持つための方向性を提示していく。

その際、基本的に組織を動かすために必要なのは、危機感成果だ。
強い危機感や問題意識は物事を変える・始めるきっかけを与えてくれる。
そこに一定の成果を見いだせれば、踏み始めたアクセルを”全力で踏み込む”という意思決定の判断材料になる。

つまり、危機感と成果は着火剤と燃料みたいなものだ。
これらを組み合わせて、全社的に顧客の成功に向き合うメリットも挟み込みつつ、スモールスタート&クイックウィン(素早く初めて小さな成功を積み重ねる)を信条に少しづつ小波を起こしていき、大きなビッグウェーブに変えていこう。

成果の部分は、カスタマーサクセスが他部署と連携して貢献度を高めていくことで築いていこう。
例えば、営業やマーケティングチームに対しては、顧客の成功事例や具体的なプロダクトの使われ方などをフィードバックする。彼らのKPIであるリード数や受注率を上げるネタや、課題感として持っていることが多い顧客の解像度を上げられる情報を提供すると喜ばれるかもしれない。
プロダクトチームに対しては、顧客のタッチポイントを担っているカスタマーサクセスが、VoC(顧客の声)をフィードバックしていくことを求められる場合が多い。

そのような形で、カスタマーサクセスが組織内に顧客志向を浸透させ、他部署に貢献していければ、全社的にカスタマーセントリックな文化を醸成していく一助になれるのではないだろうか。

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もちろん、カスタマーサクセスがそれ自体のチームや部署として「いかにして顧客を成功に導けるのか?」というHow to CSを深めていくことも極めて重要だ。

How to CSを大きく分ければ、
組織づくり(CSMを始めとした人材採用、育成、役割・KPI設定など)
戦略設計+実装(顧客の支援策の立案、仕組みづくり、そして実行)
の2つになる

簡単に言えば、CSを実行するチームをきちんと作って、「いつ・どの顧客に・何をすれば成功するのか?」を明らかにし、ちゃんと実行しましょうという話だ。

組織面では、やはり人材の採用がキーポイントになってくる。
ただし、立ち上げ期に必要な人材要件と拡大期に必要な人材要件がそれぞれ変わってくることには注意が必要だ。ここまでお読みいただいた方はお察しの通りカスタマーサクセスの活動領域はべらぼうに広く、難易度も非常に高い
そのため立ち上げ期には比較的ジェネラリスト寄りのスーパーマンが活躍するケースが散見される。一方で役割分担や仕組み化がある程度進んだ拡大期の組織では、役割に応じて必要なスキルを高いレベルで持っている比較的スペシャリスト寄りの人材が必要になってくる場合が多い。

戦略面では、顧客の成功のメカニズムを解明することが重要であろう。
つまり、御社のプロダクトをどのように使えば顧客が高い確率で成功するのか?を明らかにする。逆に、どういう状況に陥ったら顧客が解約(チャーン)してしまうかも同時に把握しておく必要がある。
それらをサクセスジャーニー(ロードマップ)やプレイブック、ヘルススコアなどの形に落として、カスタマーサクセスのアクションの効果の最大化を図ろう。

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そして、最終的には「自社の活動が顧客の成功に結びつく流れ」を創ること、それを全社規模で実現できることが重要である。

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◆カスタマーサクセスの本質的な役割

冒頭の「カスタマーサクセスの本質的な役割とは何なのか?」という質問に答えるならば、タイトルに記した通り「カスタマーサクセスの役割とはWhy×How」である。

そしてカスタマーサクセスは、「自社の活動を顧客の成功に結び付ける」架け橋に、さらに「顧客の成功を自社の成功に結び付ける」架け橋にならなくてはならないのだ。

◆カスタマーサクセスカンファレンスの開催意図

来月開催するカンファレンス、「BRIDGE 2020」もそのようなカスタマーサクセスの将来像に繋がる架け橋にしたいという想いを込めて命名した。

このnoteに著したようなカスタマーサクセスの具体的な実践方法や取り組みの成功事例を、国内の先駆者約40名が17テーマで語る場となっている。

BRIDGE 2020」がカスタマーサクセスに携わる全ての皆さまにとって、一年の総括と来年への架け橋になりますように。

◆開催概要

・日時:11/8(日) 19:00-21:00 - 前夜祭
    11/9(月) 12:15-20:15 - Day1
    11/10(火) 12:15-20:15 - Day2
・場所:オンライン
・参加費:無料
・お申込み&詳細:https://www.bridge.customer-success.college/

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