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テトリス未経験者ほど絶対にオススメしたい「テトリスエフェクト」の音楽体験

こんにちは。テトリスエフェクトの回し者です。

まず、テトリスエフェクトをほとんど知らない人に向けて。

簡単に言うと「音楽とエフェクトなどの演出に凝りまくったテトリス(VRで遊ぶことも可能)」です。

どんなふうに凝っているかというと、ただ背景やBGMが豪華という話ではなく、テトリミノの回転やドロップ、ライン消去といったすべての動作に音楽的な効果音がついて、プレイヤーが音楽と世界を作り出しているような体験ができ、さらに、テトリスを進めることでその音楽や背景が連動して発展して最後にはなんか凄いことになる、というテトリスです。

音楽的な効果音。一つずつの操作が、ランダムでありながらも音楽的に有機的に繋がるように制御されている。

バックで流れるBGMのコード(和音)に合わせて、自分が鳴らすピアノのコードやフレーズが変化するステージも。

ラインを消していくとステージも音楽も変化する。


ご覧の通り、各紙でBest Game of 2018やサウンド関連の賞を数々受賞しており、トレイラーからもその凄さ、気持ちよさが伝わってくるのではないでしょうか。

ここまで読んで「へー!やってみよ!」と思った方は以下何も読まずにテトリスエフェクトを買いに行っていただいて構いません。どうぞ!心ゆくまで楽しんでください!






さて、

これを読んでいるということは、あなたはまだテトリスエフェクトの購入ボタンを押していない、あるいは興味本位で見ていますね。

なるほど、たしかに映像は凄い。音楽もカッコ良さそう。でも……

テトリスなんでしょ?

そう思っているのではないでしょうか。

上手い人がやっているの見たら凄そうだけど、

私テトリスやったことないし

こんな風にかっこよくならないんだろうな、とか、

演出が派手になっているだけで、

結局やるのはテトリスなんでしょ?


……わかります。

しかし、遊んでみたら、その体験は想像をはるかに超えるものでした。そして至った結論として、

これは、テトリス未経験者のほうが、感動的な体験ができる!

という事です。


成長しながら旅をするテトリス

誤解を恐れずに言うと、テトリスに慣れていてサクサク遊べる人にとっては、たしかにテトリスエフェクトは「豪華になったテトリス」としか言えないかもしれません。

テトリスエフェクトにはJourneyモードというストーリーモード的なマップがあり、(特にストーリーが展開されるわけではないのですが)30以上の様々なステージを、徐々に上がる難易度に従って順番にプレイできます。

おそらく、テトリス経験者であれば、NORMALはサクッとクリアできると思います。ザーッとプレイして、色んなステージで音楽と背景が楽しめて、やっぱりテトリス面白いな!と思ってすぐに終えられるくらい。そういう意味では、気軽に楽しんでほしいです。EXPERTに挑戦するか、MASTER MODEに挑戦したほうが、より本格的に楽しめるはずです。

しかし、不肖じーくどらむす、テトリスのルールはなんとなく知っていても経験はほぼゼロ。NORMALでプレイして、最初の落ちてくる速度がめっちゃ遅いステージならまだしも、レベルが上って速度が上がるにつれて何度もゲームオーバーに追い込まれます。

「なんだこれ、テトリス難しいぞ」

「途中一回遅くなるから、そこまで頑張れば生き残れる!」

「待てよ?上のミノが消えないと下の穴が消せないじゃん」

「ホールド使えば結構融通きくじゃん」

「設地してからも暴れてたら意外と持つぞ」

「なるほど、平らにしすぎても置き場所が無くなるんだな」

等、テトリス初心者にありがちな罠を踏み抜きながらも成長していきます。

このあたりで、

「やばい、テトリスが普通に面白い」

という純然たる事実に気が付きます。

さすが世界一売れた(※最近マイクラに越されたらしい)ゲーム。こんなの無理!と思わせてからのリカバーがいろいろ効くという絶妙な調整も洗練されていますし、何よりゲームメカニクスがこれだけシンプルなのに奥深い。ミノの置き方、ホールドの選び方、リカバーの方針など、考えて成長できる要素が非常に多いです。たしかに、達人級になると入力の速さや正確さがものを言うようにもなるんでしょうが(だから少し苦手意識もあった)、それ以前に「テトリス的なセンスや考え」というのが確かにあって、それが成長していくのを感じることができます。

そのように成長しながらも苦しんでいる間は、数多くのステージや音楽、演出で楽しませてくれるので、今まで途中で投げ出してしまった!という方でも、飽きずに成長できる楽しさが詰まっていると思います。


音楽とともに「壁を突破する」感動

そんな感じで何度かゲームオーバーしつつも順調にステージを進んでいくと、最終ステージを前にして、「壁」が立ちはだかります。どこでその「壁」が来るかはもちろん人によると思いますが、終盤ステージは曲もヴォーカル入りになってきて、これまで以上に感情を揺さぶってきます。

終盤ステージの一つ。心地よいヴォーカルラインに、自分のライン消しの音がシンセパッド的に重なる。

テトリミノの落下速度は容赦なく上がっていき、「待って!!今曲がいいところなのに!!あぁっ!そんなところに置いたつもりじゃなあああああ」とか言ってる間に死にます。

そして最も大きな「壁」は最終ステージ、「再生(英題:Metamorphosis)」になるでしょう。

速度はもちろんのこと、この最終レベルだけ、クリアに必要なライン数が90になっています。これまでのステージは36ラインでしたから、2倍以上長いわけです。

このステージで何度もリトライし、後もう少し!というところの音楽を何度も聴いて覚えていくわけですが、ここで、テトリスという非常に忙しいゲームで、一体どうやって音楽が心に残るのか?演出見たり音楽聴いてる暇なんて無いんじゃないの?と思うかもしれません。

しかしここには大きなトリックが隠されています。


「遅くなる」テトリス

テトリスのゲームは、基本的に、開始からラインを消すごとに徐々にレベルが上がっていき、だんだん難しくなっていきます。

しかし、テトリスエフェクトは違います。
ほとんどすべてのステージにおいて、

遅いスピード(Level3)

速いスピード(Level7)

少し遅いスピード(Level4)

というように、最後に逆に遅くなって、その瞬間に緊張の糸がとけて、同時に爽やかな景色と音楽の変化が怒涛のように脳内にインプットされます。

自分が特に好きなステージ「ドルフィン・サーフ」の音楽変化。20秒あたりで速くなり、1分10秒あたりでまた遅くなります。

これは、ディレクターの石原さんがGDC講演でも述べていましたが、演出や音楽を印象に残すために、意図的に入れられた仕様です。


最後の裏切りと高揚

さらに、最終ステージ「再生」では、遅くなってからもう終わりかと思ったところで、さらにもう一段階速くなります。

LINESが60/90に達したところから速くなります。

その手前の速度でいっぱいいっぱいだった自分の感情はまさに、「ふざけんじゃねぇええええ」と思いながら、ここさえ超えれば……!ゲームクリアが目の前に……!という、最高に緊張する場面です。

その最高の緊張に対して、音楽的にさらに高揚感を出してくるのがニクい。歌声の後ろに3連付で8のシンコペーションを刻むシンセが入り、ミノを落とした時の音は一発の和音だったものが装飾音つきの甘美なフレーズへと変化し、色鮮やかなエフェクトと相まって、恍惚の時間となるのです。


音楽が「意味を持つ」瞬間

インタラクティブミュージックを研究してきた私にとって、音楽とゲームの関係はただ単に「同期している」だけではなく、より深いものであるはずだ(あるべきだ)という思いがありました。

何かに合わせて音楽が変わっても、プレイヤーがそこで感動していなければ、それは技術をひけらかしただけで、効果的とは言えません。言い換えるなら、ゲームそれ自体が面白くないと、音楽による演出の効果も元も子もないという事です。

音楽が変わった瞬間にプレイヤーが何を感じているか。その意味が音楽という形で理解されることで、初めてインタラクティブミュージックの真価が発揮されます。そしてこのテトリスエフェクトは、その真価を十分に発揮しているタイトルと言えます。

高速化するミノに対する焦りを表現する変化

減速したミノに対する安心や開放感を表現する変化

そして、最後の裏切りのような高速化からたった一筋の希望を表現するような圧倒的な変化

これは、テトリスにまだ慣れきっておらず、集中してプレイしているからこそ即座に感じ取る事ができる変化であり、その感情と完璧に重なり合う音楽の変化こそ「意味のある」音楽体験、と感じました。


以下、自分が初めて最終ステージをクリアした時の拙いプレイ映像ですが、この感動は、自分でプレイしてリアルタイムの緊張感と自分の努力とが音楽と結びつかない限り、動画を見ただけでは同じ感情には至らないので、
「ネタバレ注意」との覚悟で、見たい人だけ見てください。


どうぞ。

PS4版:

PC版:

https://www.epicgames.com/store/ja/product/tetris-effect/home


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著者のTwitterはこちら。ゲームの音楽演出について研究・解説したりゲームを作ったりしています。


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じーくどらむす
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