今季ガンバ大阪振り返り
スペースで話した内容から思ったこと等を、文字にしておく。他の人の意見を音声で聞くと、着想を得られてすごくたのしい
ひとことでいうと、来季のポヤトスさんには、「守備整備をきっちりやれ」になるの。何か不思議。
・ざっくり今季振り返り
結論としては、積み上げがうまくできなかったシーズンだったと思う。
ファーストプラン
開幕戦が、ファーストプラン。ビルドアップ時、右WGはワイドに張る。左WGは張っても張らなくてもいい。
後方からていねいなビルドアップもやりたい。しかし、ポジションを守りながら繋げない場合、緊急措置として、左利きの左CBから、あるいは、GKから、ワイドに張った右WGへのフィードを用いる。
右WGは、相手SBに勝たなくていい。ボールを収められなくても構わない。相手左SBに十分な体勢でクリアさせなければいい。
ロングボールを跳ね返す場合、来た方向に跳ね返すのが、最も難易度が低い。そして、相手左SBの体勢を不十分にさせれば、相手左SBは、難易度の低い選択肢を選ばざるを得ない。
結果、ロングフィードの入ってきた方向へとセカンドボールがこぼれやすく、IHでセカンドボールを回収して前進できる確率が高い。それを避けようとタッチラインに逃れることもあろうが、それでも、ボールを前に進めることは達成できる。
さらに、仮に相手SBにボールを奪われたとしても、守備の開始点がタッチライン際となるため、中を切って縦を塞いで追い込んで奪い返しに行きやすい。
いずれにせよ、二次攻撃に繋げやすい構造となっている。(さらには、WGへのサポートの位置と、奪い返しに行くための位置とが一致しているので、攻防一体のフィードとなる)
セカンドプラン
ホーム札幌戦のように、WG両方を張らせる運用もあった。この場合は、両WGともに、ロングフィードのターゲットになる。ファーストプランとの比較では、相手にボールを保持されそうな試合で用いるプランだろう。押し込まれ、相手ネガトラで細かく繋げない場合の陣地回復で、WGへのフィードを使っていく。
基本的には、以上のファーストプラン・セカンドプランが、ポヤトスさんの志向だろう。
サードプラン
ロングフィードのターゲットとしてWGを用いるのではなく、CFW(ジェバリ)をワイドに流してターゲットとする、という運用もあった。8節京都戦~13節浦和戦頃。正確には、WGをフィードのターゲットとする運用との併用予定だったのだろうと思う。
このプランでは、ワイドに流れてフィードをジェバリが収める、WGがゴール方向へとスプリント、という動き方がセットとなる。そうすると、スプリントの距離を短くするために(≒フィニッシュ局面での精度を確保するために)、WGはワイドに張りたくない、となっていったように思う。
フォースプラン
なげえな?
14節横浜FM戦~21節柏戦、おおむね連勝中は、ファーストプラン寄り(セカンドプランもちょいちょい)。倉田が左WGに入り、IH仕事を始めたり等もあるけれど、ファーストプランの範囲内と捉える。また、無理をして後方で保持するため、CB脇に倉田・ダワン・山本あたりが落ちて保持していた。ミスったら致命傷を負うビルドアップ。
22節川崎戦頃から最終節まで、おおむねフォースプラン。(黒川を左WB/左WGとして運用する1-3-4-2-1系が2試合あるが、特殊運用として省く)
ジェバリのパサーとしての能力を活かすために、言い換えれば、WGをフィニッシュ局面に動員するために、両WGともに、ビルドアップ時にワイドに張らなくてもいい、となった。ジェバリは、ワイドに流れるのを少なくし、中央で収めるのがメインの役割となった。
ジェバリが中央で収めるのを前提として、WG及びIHが、ジェバリをサポートするのか、ゴール方向へのスプリントを行うのかを判断するという仕組み。
また、ジェバリ近辺の選手の密度が高くなりがちなので、詰まったら、オープンな逆サイドへの大きなサイドチェンジを推奨されていたと思う。ジェバリ近辺では細かくパスを繋ぎ局面打開を目指す、できそうにないなら逆サイドに振るという言い方でもいい。
この効果は、ロングカウンタの威力増大。ジェバリは、ボールを収めてからドリブルでの持ち上がりも、そこからのラストパス供給も高水準で可能であるので、彼の特性を最大限に発揮させたいとの意図だろう。ただし、勝ち点は付いてこなかった。
来季は、必要な選手を補強して、ファースト&セカンドプランをメインにやることになると思う。J1残留をもっと早く決め、残り試合を来季に向けての積み上げ、すなわち、ファースト&セカンドプランに関する認識合わせに費やしたかった。
てな振り返り。
それぞれの前線の守備
サードプラン、ジェバリをロングフィードのターゲットとする場合は、その分、運動量負担が増大するため、守備での運動量を軽減されていた。言い換えれば、横並び2トップで追う運用はできない。
他のプランの場合は、(相手関係やコンディションにもよるものの)、縦関係の2トップから、機を見て横並び2トップに移行し、追う守備もできていた。
・上振れは計算に入れ難い
ダワンとアラーノに関して、XGの割には得点できている。鈴木とジェバリに関して、XGの割には得点できていない。スペースでのこの旨の指摘は、すごく面白かった。
XG通りの得点数を出せる=そのリーグでのスタンダード水準FW
ジェバリも鈴木も、XGを下回る得点数しか出せていないとはいえ、J1スタンダード水準に満たないFWではない。ぜったい。
となると、ジェバリの負っているタスクを、他の選手に割り振りたい。それでXG通り・XGを上回る得点数を稼げるかを見たい。
他方、アラーノとダワンに関しては、「できすぎ」…来季も同じ得点数を期待するのは、虫が良すぎるだろう。
・まずは守備の立て直しから
ここは本当に盲点だった。
前置きから語っていく。
試合内容は、フットボール・クラブにとって、(商品そのものではないものの)、主力商品に近い性質を持つ。
株式会社ガンバ大阪において、具体的に「経営計画書」のようなものが存在するか、存在するとして試合内容に関して盛り込まれているのか、といった点は分からない。ただ、「主力商品」に関する事柄であると考えると、盛り込まれていても「おかしくはない」
仮に経営計画書に盛り込まれていなくとも、社内においては、「どのような主力商品を作りたいのか」=「どのような試合内容にしたいのか」は、ある程度は定義されているはずだと思う。であれば、GMや強化担当者が代わったとしても、方針は維持されるはずだ。(…というかそうであって欲しい)
なお、クラブによっては、ファン・サポータをステイクホルダの一員と捉え、「目指す試合内容」「短期・中期・長期目標」を、サポーターズミーティングで発表することもある。しかし、上述は、基本的には、社内の共通認識を作るためのものであり、公表される性質のものではない。
公表されていない以上は、「どのような試合内容にしたいのか」を、推測するほかない。
というグダグダした話を前提として、「どのような試合内容にしたいのか」の一部は、ガンバ大阪U-23が体現してくれたと思っている。何なら、トップチームよりも、U-23の方が本体だったと思っている。
ひとことでいうと、手堅い保持。決まりごとが多く低リスクなビルドアップ~前進。崩しは、奪われた時のバランスを考慮しつつ、ローテーションを用いる。奪われた瞬間のリスクヘッジを常に行い、相手ハイプレスが来たら交わして前進できるプレス耐性を備えていた。
これと、2020年のトップチームのような「堅牢な守備」との組み合わせが、目指すべきスタイルだと思う。なお、21年、ここに保持攻撃を載せようとしてコケた。
「堅牢な守備」(ゾーン守備)だけならば、日本人監督でも実装可能だが、両者の両立は日本人監督では難しいとの判断で、ポヤトスさんを選んだんだろう。
ガンバ大阪が最大の成功を収めた2つの時期、すなわち、長谷川監督と西野監督とのいいとこ取りを目指す、っていうと分かりやすいかな。(いろいろと細かい話をすっ飛ばした表現だけれど)
ここで、守備整備の点で、少し問題になり得るのは、ジェバリの運動量だ。
保持時の運動量を減らす方が、非保持時の運動量を増加させやすかろう。そうすると、保持時の、ワイドに流して競らせる、前進段階で中央でボールを収めさせる等のうち、どこかの役割を無くすのが適切だと思う。
となると、サードプランは採用できない。ファースト&セカンドプランか、フォースプランかの2択だと思う。
勝ち点獲得ペースからは、フォースプランを何故やったのかが謎なんだけれど、ファースト&セカンドプランで来季やっていくため、他のやり方ではうまくいかないことを実証できたとして、プラス材料と捉えたい。
てなとこ。
ひとことでいうと、ファースト&セカンドプランで行くはずだよ!(これだけで終わる話)。あと、守備整備もしなきゃね!
その他補遺
ひとつめ。
守備極振りの2020年のチームでさえ、後方ビルドアップに関しては、今季のポヤトスさんよりも十分にできていた。
ポヤトスさんの今季のチームと、ツネさんのチームとを比較した際に、ビルドアップにおいて、ポヤトスさんの優位な部分は、「全体でのオーガナイズ」。要するに、上述「ファースト&セカンドプラン」部分。ビルドアップを後方の局面だけで考えず、もっと現実的に、長いボールを使って前進する術を持っている。
ふたつめ。
2021年の新潟(序盤)とガンバ大阪U-23(2018~2020)のビルドアップのスタイルの類似点に関しては、見れば分かるよね…とは思うんだけれど、記述しておく
CBが開いて、GKとCB2人とアンカー6役との関係で、ひし形を形成する。3バックの場合は、CB3人と6役との関係となる。そして、6役は相手選手の影に隠れ続けないように、適宜、「顔を出す」。IHは相手FW脇を通るパスコースを創出する。
この後方保持の仕組みが、新潟とU-23とで同じだった。今季のポヤトスさんのチームでは、「顔を出す」部分が、シーズン序盤を除き、雑。あまり顔を出してくれない。
みっつめ。
ふたつめと関連してだけれど、ビルドアップ~前進段階において、数的過剰(=不必要なほどの数的優位)にならないようにしながらも、いつ奪われても致命的な状況にはならない(はずだ)という位置構造を取る点が、スペイン系監督とツネさんとの共通項。片野坂さんの場合は、ここの考慮が非常に薄く、数的過剰になったり、奪われると危ない回し方をしたり、といったスタイルだね。
ついでによっつめ。
スサエタ・コンチャの2名のSMFの補強は、当時の監督だったツネさんのリクエストを受けての獲得だろう。では、何故、彼らを獲得したのかという理由について探るに、SMF/WGをどう動かせばいいのか分からないが、スペイン系のSMF/WGの運用がしたかった…なんだろうと思う。解任された2021年のSMF/WGの運用が上手くなかったな(個人の感想)というのが理由。出場試合数が少なすぎて、何を求められていたのか分からない部分はあるけれど、現在のファースト&セカンドプランのような動かし方をしたかったのかもしれない。
てなとこ(2度目)
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