初めての独唱
先週の土日に、人生初の独唱を
お客様の前で歌いました。
本当は、一昨日のうちに感想を書いて
投稿する予定でしたが、
がんばった自分へのご褒美に
ある演奏会を聴きに行っていたのと、
練習を録音するための音楽用ICレコーダーを
会場に忘れてきてしまい、
受け取りに伺っていたりしていて、バタバタ。
最終的に抜け殻となり、
更新できませんでした。
それでは、本題に入ります。
人生初独唱までの道のり
昨年、合唱団に入っていた頃に申し込んだ
バッハのカンタータを古楽器アンサンブルと
少人数での合唱ができる
ワークショップに思い切って応募し、
昨年9月頭に参加しました。
でも、合唱団の定期演奏会への練習と並行して
自分だけで音取りから練習までして行っても、
どうしても入れないところがあって
1音落としてしまったり、
声量が圧倒的に足らなかったりと
悔しいところだらけの出来になりました。
声楽の個人レッスン開始
その際に歌唱指導をされていた
プロの声楽家さんと出会え、
ご縁があり、運よく先生から個人レッスンを
受けられることとなりました。
そして、古楽器の温かな音色の中で
バロック音楽を歌える楽しさがまた味わいたくて、
今回のヘンデル作曲「メサイア」
の第一部とハレルヤコーラスを歌う
古楽器ワークショップにもすぐに参加を希望。
無謀な挑戦のはじまり
そして、独唱への参加も募集していたので、
メサイアの中でもダントツで大好きな
'But who may abide…'を、ぜひ歌いたいと
独唱への無謀な希望を付け加えました。
声楽家の先生からは、希望は叶えてあげたいけれど、
とりあえずレッスンで実際に独唱を聞かせてもらってから
判断させてください。とのお返事でした。
そりゃそうだよな、と思いました。
この曲は、プロ歌手でも難しいと思う、
難易度の高い曲で、
合唱初心者が独唱できるような
代物ではなく、どう考えても
無謀な挑戦になるからです。
独唱した曲との出会い
私は、メサイアを全曲演奏する演奏会を
聴きに行くための予習として、
昨年4月に初めてメサイア全曲を聞きました。
その中で、ダントツでかっこよくて、
どこかメタルとかの激しいロック音楽とも通ずる要素を感じて
ついヘビロテしていた曲が、今回独唱した曲でした。
あまりのかっこよさに様々な歌手の方々の演奏を
ストリーミングサービスで聴けるものを全部聞いていたら、
中でもアンドレアス・ショルさんという
カウンターテノールの方にドはまりしてしまって、
ショルさんが歌っていらっしゃる歌で
気になるものから順に見様見真似で
ネットに落ちている無料楽譜を参考にしながら
片っ端から勝手に練習して遊んでいました。
もちろん、その中にこの曲もありましたが、
様々な技が盛り込まれた、声域的にも
大変難しい曲で、なかなかうまく歌えず、
だからこそ、おもしろくて
何度も練習をしていたのでした。
ですから、実質的には5月から
練習をし始めていたので、
9月に先生の前で歌わなければならない時には
ほとんど暗譜していました。
運命のジャッジ
それまでは、家で一人で歌っていたので、
人前で、しかもプロの声楽家さんに
聴かれている前で歌うことに
めちゃくちゃ緊張しました。
でも、どうしてもこの曲を歌いたくて、
その時にできる歌を全力で歌いました。
すると、先生は、3度目のレッスンで
「いいですよ!」と明るくOKを出してくださったのです。
私は、うれしすぎて、思わず飛び上がりました。
そこから、本格的にその曲や、
メサイア第一部の合唱曲の練習が始まりました。
声楽の基礎を学ぶ
先生は、まず、私の発声の癖を見抜いて、
それを取り除く色々な方法、
また、歌い方の基礎を教えてくださいました。
そして、私の練習方法の問題にも
アプローチしてくださり、
家でどういう練習をするのがよいか、
短い時間でも、いかに集中して練習するか、
そういったマインドまで教えてくださいました。
全体を通して、
いかに、自分の楽器(体)を表現したいものに変換するか
ということを目標にしていらっしゃると感じました。
また、つい「ワオ!」と言ってしまうほど
素晴らしいお手本を目の前で魅せてくださるので、
これを活かさないと勿体ないと思いました。
家での練習方法を変えた
そこで、家では、娘の電子ピアノを
娘の外出中に貸してもらって、
きちんとピアノで正しい音取りをして、
細かく切って、部分を集中して練習する日や、
全体を通して歌う中でひっかかる部分を見つけ、
そこだけを集中的に練習するという方法と、
散歩やストレッチをしながら、
呼吸法や体の使い方の
イメージトレーニングをしたりと、
それまでとは、全く違う練習方法を
あれこれ試行錯誤していました。
発表会があると知る
その後、レッスンの中で、先生から
歌っている姿に対する指摘があり、
その中で、
「今回もお客様を入れますし」と
おっしゃったのです。
私は、???となり、
「え?お客さん?」
と聞き返すと、先生が
「そうですよ?
ワークショップの最後に発表会がありますから。」
とのお返事。
???!!!
「え?!この間みたいに
最後にみんなで合わせて
終わりじゃないんですか?!」
と大慌て…
「私、そんなところで歌って
大丈夫ですかね?!」
と急に怖くなったのでしたが、
先生は、明るく、
「大丈夫、大丈夫~!
発表会ですから!無料だし!」
と、私の慌てふためく姿に
笑っていらっしゃいました。
先生のこの明るさに救われることが
この後もずっと続きます。
感謝!!
他のソロ曲も練習
その中で、男声女声に関わらず、
他のソロ曲も勝手に練習して、
その表現方法や音楽の流れの違いを感じる
手がかりにしました。
歌の場面や歌の中の部分、
また指揮者さんたちの解釈によっても、
音符の捉え方や息遣いや呼吸の流れを
変えていらっしゃるのもなんとなくわかって
とても勉強になりました。
特に、今回歌ったアリアでは、
ダ・カーポ後のアドリブ?の仕方も
その歌手ごとにそれぞれ個性が出て
おもしろいのも魅力なので、
先生からのアドバイスも取り入れながら、
片っ端から試して、自分が好きなものを選んだり、
最後の部分は、2~3人の方々のアドリブを
自分流にミックスして練習し続けました。
昔、ギターソロをアドリブで弾いていた経験が
活かせたのではないかと思います。
メサイアワークショップ
そして、いよいよワークショップの
事前練習日となりました。
合唱事前練習
今回は、古楽器アンサンブルの方々が
たくさん合唱練習のために来てくださり、
とても歌いやすい中で練習できました。
お忙しい中、来ていただけ、
長時間の合唱練習にお付き合いいただけて、
感謝感激でした。
この時が合唱メンバーの初顔合わせでしたが、
少人数合唱に参加するだけあり、
メサイア合唱のご経験のある方々ばかりで
みなさんしっかりと事前練習をされていて
すごいなと尊敬しました。
私は、合唱曲も
先生について教えていただけていたことが
今回の合唱での自信になっており、
事前練習からしっかり歌えてよかったと
ホッとしました。
前日練習での独唱練習はガタガタ
事前練習から1週間後、
ついに、先生以外の人の前で
古楽器アンサンブルの演奏で
独唱をする初めての練習がありました。
私にいただけた練習時間は20分。
その時間を最大限に使って、
指揮者先生や器楽の方々との調整をするか、
自分の歌を指揮者さんの解釈に近づけるか
という作業をすることになります。
でも、緊張しまくって、
出だしから声がひっくり返ってしまい、
あまりのダメさ加減に思わず
歌うのをやめてしまい、
演奏を止めてしまいました。
指揮者が振り続けているのに、です。
気を取り直して、再度歌いましたが、
またもや出だしから声がうまく出ず、
いつもは息が続くところで
プツプツと息が切れてしまうし、
ここで吸うのは、歌詞の意味上良くないと
先生から教えていただいていたところで
吸ってしまったりもありました。
極めつけは、歌い終わりを
器楽の方々や指揮者さんの合図を
聴く、見る余裕なく、
勝手に終わらせてしまったことです。
もう、何が何だかわからなくなって、
指揮者さんと目が合ったまま
放心状態になっていました。
すると、後ろで見ていた先生が
私の両肩をガシっと掴んで、
「だいぶ緊張されてるようですが、
大丈夫ですか?」と
小さく声をかけてくださいました。
それで、ハッと我に返り、
「そうなんです、
めちゃくちゃ緊張して…」と
やっと声を発することができ、
緊張を言葉にできました。
そこから、後半をやり直してくださり、
それで、どう終わるかを確認し、
先生からも、個人的に子音の出し方など
歌唱指導が入り、その日は終わりました。
(私はもちろん、他のソリストさんたちにも、
個人的な指導をしていただけていました)
その日の、合唱とソリストの練習は、
朝10時~夜8時まで続きましたが、
他のソリストさんたちへの指導が
これからの自分にとっても勉強になると思い、
片付け指示があった最後まで聞いて帰りました。
ちなみに、器楽の方々は9時~8時過ぎまで
練習に参加していて、さらに飲み会まで。。。
ものすごい体力と集中力に、本当に尊敬します。
夫が迎えに来てくれて、帰り道の車内で、
練習の録音を聞いて落ち込みつつ、
なんとかしたい。
と、練習をして帰りました。
発表会当日
発表会当日、ステージの設営後、
改めての器楽との合同練習からはじまり、
さらに、トランペットのお二人も
加わる曲の練習もしました。
指揮者先生は、最後まで
細かい部分の調整をしてくださり、
状況などで柔軟に変更を加え、
さらに、それにすぐに合わせられる
合唱や器楽の皆さんの意識の高さを感じました。
一方、本番前のアリア独唱練習でも、
次への繋ぎ練習のため
途中から歌う時にうまく入れなかったり、
やはり出だしで汚い声になってしまうし、
やはり、ここでブレスをしようと思っている所まで
息が続かず、早いパッセージの後半で
階段状の音がただの傾斜になってしまったりと、
悔しさでいっぱいでした。
終わった後、ガックリきていると、
先生が励ましてくださり、
レッスンの時や家で何度もした
基礎を思い出させてくださり、
そうだった!これだ!と
落ち着きを取り戻せました。
本番前のゲネプロでも、
やはり歌の出だしに悔いが残ったので
本番までの時間に先生からアドバイスをいただき、
先生が隣で一緒に歌ってくださり、
「ああ、そうだった、できるんだ」と
思い出させてくださいました。
初めての独唱・メサイア合唱本番
そして、いよいよ本番となり、
シンフォニア、テノールの方の独唱に続き、
合唱曲。
その後、バスの方の独唱に続き、
ついに、私の独唱の出番です。
曲の前奏が始まってから立ち上がり、
足音を消しながら舞台端ギリギリで
いつものスタンスに足を広げて立ちました。
そして、前奏の最後で一息つくという
先生からのアドバイスを実行。
本番で初めて、
出だしをきれいに入ることに成功!
その勢いで、最後まで歌い切りました。
もちろん、悔しい部分は
たくさんありましたが、
ワークショップで歌った中で、
最高の出来になったと思います。
そこには、指揮者先生が
隣でわかりやすく呼吸してくださったり、
吐息で一緒に歌ってくださったり、
私がやや走ってしまったところを
うまく合わせてくださったこと、
そして、器楽の方々が、
私の拙い歌に優しく寄り添ってくださり、
その曲の激しさを共有してくださった
素晴らしい演奏、
最後まであきらめずに
私を励まし続けてくださり、
的確なアドバイスをくださった
声楽の先生の存在がありました。
また、遠くで聴いていてくださいと
心に思いながら歌える存在の
カウンターテノール
アンドレアス・ショルさん、
そして、今回ご一緒できた
尊敬できるソリストさんも含めた
合唱メンバーのみなさんのおかげです。
また、「お母さんの声、ウルサイ」と
言いながらも、応援してくれた家族、
遠くまで応援に足を運んでくださった
合唱団時代にお世話になった先輩方、
クラシックには興味ないのに、
ご主人と一緒に応援に来てくれた
優しい友だち、会場運営の方々。
たくさんの存在が
本番での私の力になっていたと思います。
合唱
私の独唱が終わっても、曲は続きます。
独唱が終わり、自分の立ち位置に戻ったら、
すぐに合唱モードに戻りました。
両隣で歌ってくださっていた合唱の大先輩が
私の緊張を読み取り、労うように、
その合唱の入りを歌ってくださり、
とてもホッとしたのを覚えています。
そのまま、最後まで、
1音も落とさずに歌いきることができ、
初めてのアリア独唱、メサイアの合唱が終わりました。
先生とハグ
楽屋の鍵を預かっていたので、
皆さんが楽屋を後にするのを確認して、
めちゃくちゃかわいくて
美味しすぎるチョコレートを差し入れに
労いに来てくださった
合唱団時代の大先輩方とお話をして、
下に降りると、歌唱指導の私の声楽の先生が
いらっしゃいました。
お礼を伝えると、
「本番が一番よく歌えたんじゃないですか?
ご本人としてはどうですか??」と
喰い気味に、やや興奮して褒めてくださり、
少し驚きながら、
「本番が、一番うまく歌えたと思います」と
言うと、うれしそうに両腕を広げて、ニッコリ
「ハグしましょう!」と。
先生の無邪気な姿がうれしくて、
ガッチリハグしました。
そうしたら、急に涙があふれてきて、
止まらなくなりました。
それまでの緊張が
先生の笑顔とハグで一気に解けたのだと思います。
そして、思い切り
がんばってよかった。
そう思えました。
好きなことを思いっきりやろう
こんなに一つのことを頑張ったのは
人生で初めてじゃないかと思います。
がんばった人にしか見えない景色
それを45歳になって、
初めて見られた気がしています。
そして、やっぱり私は音楽が好き。
そう確信しました。
音楽が私に教えてくれたことが
人生の中でたくさんあります。
もちろん、悔しかったことや
音楽がキライになるくらい
辛かったことも沢山あります。
でも、それでも音楽は
私のライフワークだと思います。
音楽を通して、人とつながったし、
なんなら新しい家族ができて、
娘とも出会えました。
やはり、好きなものは好きと
はっきり言えるくらい、
好きなことを思いっきりやるのが
私がしたい生き方です。
その方が私は絶対、楽しいからです。
次のステップへ
私の音楽人生はまだまだ続きます。
先生から、私の声はアルトというより
メゾソプラノではないかな?という
お話があり、今後は自分の声に合う
パート探しをすることになっています。
改めて発声の基礎を学び、
その中で自分に合うパートを見つけ、
そこに全力投球していきます。
音楽を通して、また新しい自分に
会えるかもしれないチャンスに
ワクワクしています。