大物司会者との共演時における注意点
コロナ禍で各業界が大打撃を受ける中、「安定的」と言うには恐れ多いが、ゴールデンと言われる時間帯のテレビ番組が大物司会者を交代させることは稀である。
かつてのお笑い第2世代の番組を第3世代が凌駕する荒れた時代のような争いを現状の第7世代と言われる若手中心の芸人たちや彼らを扱うスタッフ勢が同じ道を歩むことは今後あるかどうか。時勢的にも革命を起こすような番組を今の安定した番組を終わらせてまで始める勇気やスポンサーも難しい。多くの地上波番組を中心に出演し続ける芸人たちが「共存」することで、司会者も交代することなく「安定」した番組の運用ができ、更に番組の質も上がる。これはただのバラエティ番組好きのおっさんが考える、安定した大看板番組の大物司会者との共演に見る、また呼ばれる、司会者にハマる考察を書いていく。
【 明石家さんま司会の番組の場合 】
言わずと知れた不動の司会者、芸能界トップの話術で幅広い世代の支持を生み続ける笑いの天才「明石家さんま」氏。おこがましくも語らせていただくが、彼の番組に出演したゲストの発言や絡み方でその後の明暗がひどく分かれる。日本テレビ「踊る!さんま御殿!!」を中心に話を進めるまず最初に記しておくが、彼はどんなゲストと絡んでも必ず笑わせるパスを必ず一人一人に出している。初対面初共演のゲスト有名人や芸人に気づかれないことが多いがこれは録画した番組を繰り返してよくみてほしい。彼の優しさと笑いに対する貪欲さがにじみ出ていることが理解できるはずだ。ここがつながればまた同番組、さらに彼の別番組に呼ばれたり、そして他の様々な番組に呼ばれ始める。厳しく見えることのほうがほとんどだが、彼は優しい。
若手芸人や話題の人がゲストに来た場合、よくあるのは服装や見た目を別のものに例えて仕掛けてくる。軽いジャブのようなテストだが番組前半に行われるこのプレイでその番組が面白いか、とても面白いかが分かれる。そして司会者として態度が変わる。最初の関門。
関西から東京へきたプッシュされ始めの芸人たちが呼ばれたときによくあるこのパターン。だが緊張のせいか技術の無さなのかこの例え紹介に対する答えでその例えを大声で繰り返し全力で否定する。
「なんや○○みたいな顔しやがって」
「○○⁉」「○○ちゃうわ!!」
ここでさんま氏はほんの少し悲しい顔をする。わからんかったなと。さんま御殿に出演したときのダイアンがまさにこう反応して不必要な空白の間が生まれた。
彼の好きなパターンは「言われたことに乗る」、「否定しながらも次のステップに進む」、「彼の考えにない行動をとる」などがある。
「言われたことに乗る」「否定しながらも次のステップに進む」パターンでは、気に入られたワードならその後にフジテレビ「さんまのおわらい向上委員会」などでよく言われる「定食」と昇格し、尋常ではない記憶力を持つさんま氏と数年合わずとも同じフリをされ同じフレーズを放つ、それさえ忘れていなければ確実に番組に呼ばれる回数が増す。
理想的な例として挙げていく。
言われた人のモノマネで高評価を得続けているお笑いコンビ、中川家。お二人のいくよくるよのフリに対しての手数の多さではどの芸人よりも圧倒的であり、クオリティの高さも天下一品であろう。残念ながら関西のノリが関東圏で全く伝わらないことが多いが、その空気感はさんま氏の大のお気に入りだ。ちなみに関東圏には全く通じないその空気感を中川家をはじめ関西芸人に出させる司会者が東野幸治だ。
「マイケルムーアじゃねえわ!ドキュメンタリー映画撮ってねえわ!」この後半部があるか無いかで格段に反応が変わる文章を作り出したお笑いコンビ、ハリセンボン近藤春菜。ひとつ素晴らしい発想を足したことで同パターンの展開「定食」が多数生まれ、番組中沈みそうな空気が出始めても持ち直させるボランチ的存在となり幾度となくさんま氏の番組に出演されている。ボランチ的芸人はこういった昇級テストを幾度とクリアしていきそのポジションを確立している。若手との、結果はどうであれやりとりを好む彼が、否定だけで終わることは表情に出るほど好まない行為だ。フォローにも力が顕著に出ていない。そんな時にもボランチの存在は必要不可欠だ。さんま御殿における、例えば二世タレントを集めた回ではボランチやストライカーのいない会話に色々なもったいなさを感じるが、これはまた書く機会があればまたその時に。
全く予期せぬ行動をとられ新しい展開が生まれてしまう。こういったハプニングはさんま氏にも番組にも恐ろしく良い刺激になってしまう。さんま御殿に出演した俳優黒沢年男が詰問を重ねられすぎてフリーズしたり、お笑いコンビ、ドランクドラゴンの鈴木拓が地上波とは思えないほどやさぐれたりした時、皆さんが思い描けるあの笑顔以上の笑顔が画面いっぱいに映った。表現は良くないがポンコツ人間を好み好まれる彼ならではの展開だ。しかし突き抜けた何かを持っていない人がわざとらしさを抑えながらこんなことをしてもすぐに見抜かれる。天然を装った読者モデルなどがよくやる空気の読めない感じなど番組の進行等彼の思想の妨げになると感じた出演者には、冷たく当たるが触れないわけではない絶妙な間合いで会話を成立させる。
予期せぬパターンは置いておいて、準備を怠れば全く反応できない結果となってしまう。問題は指し伸べている手を何も解らずに否定だけで終わらせるダイアンのような芸人だ。同じ反応を向上委員会に初出演時のインディアンスに見られる。周りのフォローがなければ悲しい結果にしかならなかった現状を彼らは省みているのか問いたい。ぐちゃぐちゃになろうと彼が若手の芸人や出演者に手を指し伸べ続ける理由はさんま氏自身、若手の頃に番組でのアクロバティックな答えが当時トップクラスの芸人、故横山やすし氏に一目を置かれ様々な番組出演と彼との付き合いに発展するきっかけになったことがあるからだろう。明石家さんまという男は常にその灯を絶やさずに芸人を続けている。その灯を受け継ぐ司会者がもう現れてもいい時期だろうがまだまだだろうか。或いはダイアンの二人に期待しているのかもしれない。
最初の関門でここまで書いたが、書き続けていけばまだまだ切りがないので今回はこの辺で。申し訳ないが敬称略とさせてもらいます。
バラエティ番組と若手芸人の発展を願って。
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