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【上野千鶴子・スギちゃん対談】偽企画のビラを撒いた犯人に話を聞いてみた【独占取材】



事のあらまし


新学期を迎えたある日、Twitterを開くと奇妙な投稿が目に飛び込んできた。

※プライバシー保護のため、一部モザイクがかかっている箇所があります。

どうやらワイルド芸人・スギちゃんフェミニスト・上野千鶴子の対談が、東大の「駒場祭」にて行われる旨のビラが撒かれているらしい。議題は「男らしさ(ワイルド)ってなあに?」。何だこれは。

流石に冗談だろうと思いキャンパスに向かうと、確かに教室の隅々にまでこの「スギビラ」がバラ撒かれている。見渡す限り一面のスギちゃん、そして上野千鶴子。秋学期開始一発目に目にする光景にしてはあまりにおぞましい。

▲通称「スギビラ」。

この2人が対面した所で話すことなんて何一つないだろう、とは思いつつも、スギちゃんと上野千鶴子が横並びになって語り合う奇妙な構図が頭に浮かんでくる。

男らしさを売りにして商売しているスギちゃんに上野が説教でもするのだろうか。スギちゃんも生活がかかっているから仕方ないというだけで、心底自分がワイルドだとは思ってはいないだろう。あまりに気の毒ではないか。自分の芸に潜む男性性をクソ真面目に糾弾され、「ごめんなさい、ワイルドという言い方は配慮が足りませんでした」と言って謝罪でもするのだろうか。世も末である。

さすがに釣りか?


何はともあれ話のタネくらいにはなりそうだと思った私は、試しにビラに記載されたQRコードを読み取ってみた。すると、何故か読み取れない。おまけにビラ左下に記載されている「@Utokyo_sugichan」というアカウントも見つからない。

なんだか「釣り」臭い。よくよく考えれば当たり前なのだが、「ワイルド東大生の会」なるバカバカしい会は存在せず、架空のイベントをでっちあげた釣りビラらしい。それを裏付けるように、しばらくすると私が所属しているサークルに、駒場祭委員会から以下のメールが送られてきた。

お世話になっております。駒場祭委員会です。今回は、虚偽の情報を記載したビラが駒場キャンパス内の教室にて配布された件について注意喚起を行いたく、ご連絡いたしました。現在、駒場キャンパス内で「駒場祭特別講演会『男らしさ』ってなあに?」と記載されたビラが教室内に置かれていたとの報告が、X(旧Twitter)などで多数寄せられております。

こちらのビラに関しましては、駒場祭においてそのような企画の出展予定は一切なく、さらに記載されている駒場祭の日程も誤っているため、明らかに虚偽の情報であり、悪質な内容となっておりますのでご注意ください。また、くれぐれもSNS等で拡散を行わないようにお願いいたします。貴団体内でもこの旨を周知いただけますと幸いです。何卒よろしくお願いいたします。

例年駒場祭に呼ばれるゲスト・著名人はよくてホリエモン、悪くて茂木健一郎。いい加減食傷の感がある。もうネタも尽きてるだろうし、「駒場祭委員もせっかく認知したなら実現してくれよ」と思った。他方、このビラに関するツイートが複数見られる上に、そのどれもがかなり拡散されており、かなりの大事に至ってしまっている。

なんと、スギちゃん本人に問い合わせる教員も現れる。

▲ 阿古智子教授。専門は東アジア地域研究。こともあろうにスギちゃん本人に問い合わせ。さすが教員、徹底した情報リテラシーのたまものである。

その結果、スギちゃん本人にまでこのおかしなビラが到達してしまうという事態にまで発展した。スギちゃんもさぞ困惑しただろう。

▲何が「ワイルド~」なのかはよくわからない。

流石のスギちゃんもあまりの驚愕に「だぜぇ」が出てこなかったようだ。残念ながら、上野千鶴子側からの反応は見られなかった。

その後、学生自治会からも「拡散しないように」と注意喚起がなされた。残念ながら、デマなのは確定だろう。そもそも、実現するにはあまりにドリームマッチ過ぎるので、よく考えればわかることだった。

▲双方の事務所にまで話が行ったらしい。上野千鶴子はどう思ったのだろう?

ここで疑問となるのが、「誰が」「何故」このようなビラをバラ撒いたのか、ということだ。キャンパス全域にビラを撒くためには推定2000~3000枚のビラが必要になる。それだけの枚数のビラの発注には一定の出費が必要となるし、わざわざお金をかけて精巧なビラをデザイン・発注する意図が分からない。おまけに目障りだ。

単なる愉快犯なのか、何らかの問題を提起するために撒いたのか。真相は闇の中だ。











自称「犯人」、現る


それから5日ほど経った頃、我々の元にとある一通のメールが届いた。



なんと、例の偽ビラをバラ撒いた犯人を名乗る人物からの連絡だった。犯行の概要を話す代わりに、匿名で記事にして欲しいとの要望らしい。

写真を確認したところどうやら「本物」らしく、我々はこの人物にインタビューを試みることにした。以下の文章は、犯人と何度か重ねたやり取りをインタビュー形式にしたものである。







_まず、なんでこんなビラを撒いたんですか。

面白いと思ったからです。友人何人かと集まって「なんかふざけたことしようぜ」と話し合っていたんですが、その時にこの案が出ました。そのうちの誰かが「上野千鶴子と誰かの対談をでっち上げたら面白いだろう」と言ったたんですが、そこで私が「スギちゃんがいいだろう」と言って生まれたのが本ビラです。他にもメンズコーチ・ジョージなどの案も出ましたが、単純にスギちゃんと千鶴子が並んでいたら面白いと思ったので、スギちゃんにしました。


_ということは、特にメッセージなどはないということですか。

はい。何一つないです。怒られた時のために何か用意しておこうと思って、「フェイクニュースに対する東大生のリテラシーを強化するため」とか色々考えたんですが、バカがバレるだけなのでやめました。愉快犯です。名義を勝手に使った駒場祭、スギちゃん、千鶴子さんには本当に申し訳ないと思いますが、正直言って配ったらダメな理由が特に見つからなかったので、敢行しました。後、これで誰かが怒り出したらそれはそれで面白いと思ってしまった所もあります。


_普通に名誉毀損罪ですね。ちなみに、犯行時のことを詳しく教えて頂けますか?

水曜日の5限が終わった後に敢行しました。私ともう一人で、できるだけ講義で頻繁に使われている教室を中心に配りました。学生会館にビラが届くように頼んでおいたんですが、箱を開けた途端に3000枚のビラがドンと現れたので思わず笑ってしまいました。

よく見たら駒場祭の日付が間違っていたり、QRが反応しなかったりと間違いが多くて頭を抱えました。このQRはグーグルフォームに繋がっていて、所属・氏名と「スギちゃんさん・上野先生に質一言」的な欄を作ってあって、どんなコメントが来るか楽しみにしていたので、かなりガックリ来ましたね。しかし、個人情報を集める虚偽のグーグルフォームなどが出回っていることを考えると、かえって良かったのかな、と思います。

▲3000枚のうちの1500枚。全体はこれの2倍あるらしい。

駒場キャンパスの講義棟の約半分には配ったと思います。誰もいない教室をこのビラでいっぱいにするのは楽しくもありましたが、やっていて正直気が狂いそうでした。空っぽの机の上が次第にスギちゃんと千鶴子で埋め尽くされていくので、最初は笑いながらやっていましたが、途中から恐怖に似た感情を抱き始めたのを覚えています。


▲犯行風景その1。机を埋め尽くしていくスギちゃん&千鶴子。


▲犯行風景その2。

お金をかけたこともあり、最初は机を一個飛ばしにビラを置いていました。でも3000枚もあるので全然減らなくて、最後は教室中に敷きつめていました。それでもまだ1000枚余っているので、欲しければ差し上げます。連絡下さい。正直早く処分したいんですが、捨てたら呪われそうなので家に置いたままになっています。

▲犯行風景3。壮観である。


▲犯行風景4。教員の机にも配置し存在感をアピール。


_しかし、Twitterではちょっとしたパニックになっていましたね。

最初に投稿されたこのビラについての写真付きツイートが、200RTまで伸びたんですよ。本当に開催されるのかと思って喜んでくれる人なんかもいて、嘘ついておいてなんですが純粋に嬉しかったですね。実現したら面白かろうというのが動機だったので、一番このイベントが実現してほしいと思ってるのは私たちですから。

他方で、思った以上に拡散されて途中から怖くなってきたのと、思った以上にマジで開催されると思ってる人がいてそれも怖かったです。しかし、どう見ても嘘でしょう、これ。スギちゃんが頻繁にエゴサしているのは知っていたので、本人に届くのは最初から半ば期待していたんですが、ここまで大事になるとは思っていませんでした。

▲「配るのが辛くなって途中から千鶴子を一つ目にして遊んでいました」


_今後もまた似たような犯行に及ぶ予定はありますか。

なくはないですね。


_次はなるべく人に迷惑をかけない方向でお願いしますね。ありがとうございました。

こちらこそ、ありがとうございました。






まとめ


あのビラ事件の真相をめぐってSNSでは多くの言葉が飛び交ったが、真相はバカな東大生によるバカな悪戯だった。一瞬は騙されそうになっただけに、犯行の一部始終をきいた当初は激しい憤りに駆られた。

しかし今では、それを差し引いても魅力的な対談だったのではないかと思ってしまう。誰でもいいので、どうかあの対談を実現させてください。よろしくお願いします。



【文責】うんこうん太郎

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