【企画】【OcculTrigger】×「ある駅のジュース専門店」
※本作は【OcculTrigger】10周年企画に先立ち、マッチ棒(X ID:@Match_464)様にご参加いただき執筆したリプレイ風小説です。【OcculTrigger】は現代ファンタジー×悪堕ち×オカルトをコンセプトとしたTRPG及びそこから派生したシェアワールド小説のシリーズを指します。詳しくは以下HPにてご覧ください。
「とりいとらぼ。」https://gearfox.web.fc2.com/
サラセとは人間がそう呼び、故に広まった名前である。己の正体を半ばとはいえ表しているその名前を当人はどう思っているのか、聞いたものはいないし聞けたものではない。
人喰いの『化物』、それがサラセという存在だ。
広まっている噂に題をつけるならば、「ある駅のジュース専門店」が適当だろう。名前の読めない異界駅に存在する、ジュース専門店。そしてその店員であるサラセを含めてその噂は完成していた。
まだサラセに力が足りなかった頃は、人間を誘き寄せて駅の中へと招き入れるしかなかったが、噂を広め、人間を喰らい、力をつけた今では狙った人間を追い込むことも出来るようになった。
そうなれば、『あちら側』もサラセの存在を認識して、人間に対する脅威であるとするのは時間の問題であった。だから、これはそういう話だ。
―――――
さて、そのような理由で名前の読めない異界駅を自ら訪れた男の名を鷹巣涼介という。彼は日本生まれ日本育ちだが、『エクソシスト』としての能力が発現してしまったため、ローマにあるエクソシストたちの協会に認知されて悪魔祓いに勤しんでいる。
とはいえ、全てが全てを強制された訳ではない。彼自身が善なる人間であり、他の人間を助けるための力があるならば自分が助けてやらねばと自然に思えるような心を持っていたのだ。
そういう人間から死ぬのがホラー映画のお約束ではあるのだが。
涼介が名前の読めない異界駅、そしてそこに巣食っている悪魔を討伐しようと考えたのは先述の理由からである。その悪魔は、罪のない人間たちを己の縄張りである駅に引きずり込み、喰らってしまうのだという。
(涼介:調査判定:6+3=9、消極的成功)
故に、涼介はその悪魔について事前に調査してきた。警戒心を解くためか、見目麗しい成人男性の姿。ジュース専門店の店員を名乗り、ジュースを勧めてくる。その後で、何らかの手段でもって人間を無抵抗にさせて、喰らう。
ならば、ジュースを勧められる前に何とかしなければならない。恐らく、ジュースを勧めるという行為に呪術的な意味合いがあるのだ。涼介は聖なる力が宿るロザリオを握り締めて、甘い匂いが漂う駅の奥へと進んでいった。
―――――
その訪問者がいつもの人間とは違うらしい、と気づいたのは経験から。大体の人間は異界駅の雰囲気に呑まれ、挙動不審になるか怯えるか、平常心とはほど遠い反応を見せていた。
なのに今回の人間は、少なくとも表面上は冷静だった。黒いコートのような服に、白いストールのような何かをかけた男。その男は十字と数珠玉をつなげたようなネックレスを手に握り締めて、サラセの店へと向かってきている。
「……いらっしゃいませー」
「っ!!」
だから、サラセは先んじて声をかけた。いかにも無害そうな顔をして、店員であると主張するように。しかし、男の警戒は解けず、なおかつ男は手に持っていた十字をサラセに突きつけてきた。
「ふ、不浄なる者よ!! その正体を顕せ!! 私は唯一なる神の名においてそれを命じる!!」
「何ですか、それは?」
ばちん、と何かが弾けた感触。サラセは着けていたマスクの紐が千切れて落ちたことを遅れて認識した。露わになるのは、サラセの本性である■■■■の柄に似た、不吉で歪な異形の模様。
(涼介:超常的存在を目の当たりにしたことによる精神力判定:6<9:成功、-1精神力減少:精神力8)
「不浄なる者め、神の鉄槌を食らえ!!」
サラセの顔に走る模様を見た男は一瞬息を呑んだもののすぐに立ち直り、十字を高々と掲げた。何をするのだろう、と目を細めたサラセの目前、掲げられた十字が輝き始める。
刹那、表皮がひりつく感覚。サラセが己の手を見れば、薄らと焼けたような痕が出来ていた。男もそれに気づいたようで、意気揚々と口を開く。
「どうだ、神の鉄槌は全ての不浄なる者を浄め退けて……」
「退けて、何?」
(涼介:攻撃:7+4=11)
(サラセ:防御:5+5+10=20)
(11-20=-9:涼介の体力減少:体力3)
横薙ぎに、男の腹を打ち据えたのは太い蔓。サラセの手であり武器でもある巨大なそれは、大蛇のように屹立し、男を見下ろしていた。
―――――
涼介は痛む腹を押さえつつも立ち上がる。正体を顕した悪魔の顔には、おぞましい葉脈のような模様がびっしりと張りついていた。確かに、マスクでそこを隠してしまいさえすれば、噂にあったようなイケメン店員といった風ではあるが、だからこそ異質が際立っている。
しかし、涼介は愚かではなかった。今の一撃で、彼我の力の差をほぼ正確に読み取ったのだ。自分では、この悪魔には敵わない。ならばどうするか、確実に勝てる増援を呼ぶべきだ。
「不浄なる者よ……唯一なる神の名において命じる!! この場より動くことなかれ!!」
(涼介:サンクチュアリ使用:対象サラセ:サラセは『カミ』ではないため無効)
悪魔の周りに、神の威光を示す光の剣が突き立った。これでこの悪魔は暫く動けなくなる、そう思い、背を向けて走り去る。だから、涼介は悪魔の呟きを聞くことは出来なかった。
「……手品の次は鬼ごっこ? ふふ、いいねぇ」
涼介は異界駅の中を駆けた。異界探索の常として、一度そうであった場所が次もそうであるとは限らない。だから、開いていたはずのシャッターが閉まっていたとしても、駅の構造自体が変化していても、それは覚悟していたことだ。
「神よ、我に加護を与えたまえ……」
(涼介:潜入:11+2=13)
(サラセ:追跡:5+9=14)
(13-14=-1:涼介の潜入失敗)
(サラセ:攻撃:7+5+10=22)
(涼介:防御不可)
(22-0=22:涼介の体力減少:体力-19:死亡)
(サラセ:攻撃対象死亡により特殊演出あり)
だから、涼介は『エクソシスト』が奉る唯一なる神へと祈りを捧げ、極力足音も吐息も殺して走り続けた。だから、涼介は気づけなかった。彼の背後から、細い根がびっしりと蔓延り追いかけてきていることに。
そうして、走り続けた涼介はようやく駅の出口を見つけた。ちかちかと明滅する白い光、ここから出さえすれば、あの悪魔を滅ぼすことが、でき、る?
涼介は、いきなり力が抜けて動けなくなった自分を、妙に冷静に俯瞰していた。気が抜けただとか、気力が尽きただとか、そういう理由じゃない。甘い、蕩けるような、匂い、臭い、が。
「もう鬼ごっこはおしまいですかぁ? あれだけ自信満々だったのに……残念だったねぇ?」
絡む、引きずられる、せめてもの抵抗にと指先で床を掴もうとしても、つるりと滑ってしまう。爪跡さえも遺せず、涼介は暗闇の中へ、異界の奥へ……人喰いの『化物』の、胃袋へ、消えていった。
サラセ(PL:マッチ棒様)
格:10
体力:4+3+10=17
技能:5+3+12=20
直接攻撃:5
直接防御:5
探索:5
追跡:5
精神力:6-8=-2
表の職業:その他(任意の値に+3→体力に+3)
裏の職業:化物(体力+5、技能+3、精神力-8)
生業:
覚醒・改(半妖):攻撃、防御時の判定値に+10
トランス:攻撃、防御時に受けるダメージを無効化する。一度のセッションで2回使用可能。
ポゼッション:防御に成功した時、減少した相手の体力分、自分の体力を回復する。一度のセッションで2回使用可能。
鷹巣涼介(たかす りょうすけ)(GM:とりい とうか)
格:5
体力:4+1+7=12
技能:4+2+7=13
直接攻撃:4
直接防御:4
調査:3
潜入:2
精神力:2+2+5=9
表の職業:労働者(体力+1、精神力+2)
裏の職業:エクソシスト(体力+3、技能+2、精神力+5)
サンクチュアリ:カミの登場を阻止する。一度のセッションで1回使用可能。
企画を開始する前に、サンプルとしてご協力いただきましたマッチ棒様に深謝申し上げます。また、マッチ棒様が執筆されているホラー小説、「ある駅のジュース専門店」は以下リンク先にて掲載されております。
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