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山水郷チャンネル #22 ゲスト:真鶴出版(川口瞬さん/來住友美さん)・伊藤孝仁さん/冨永美保さん(建築家)[前編]

山水郷チャンネル、第22回目のゲストは、真鶴出版の川口瞬さん、來住友美さんご夫妻と、その建築を担当した伊藤孝仁さん、冨永美保さん(tomito architecture)の4名です。

Profile:川口瞬・來住友美 真鶴出版
2015年4月に真鶴に移住。「泊まれる出版社」をコンセプトに、真鶴に関する書籍の制作やウェブでの情報発信をしながら、その情報を見て実際に訪れた人を宿に受け入れる活動をしている。
宿泊ゲストには1〜2時間一緒に町を案内する「町歩き」をつけており、普通に来ただけではわからない真鶴の魅力を紹介している。出版担当が川口で、宿泊担当が來住。
Profile:伊藤孝仁 AMP/PAM(アンパン)代表
建築を入り口に、その背景に広がる世界と社会をリサーチし、これからの都市/地域/建築のあるべき姿を探求するAMP/PAM(アンパン)代表。大宮/郡山/福島/前橋でプロジェクトが進行中。2014年から2020年までトミトアーキテクチャ共同主宰。現在、アーバンデザインセンター大宮(UDCO)デザインリサーチャー。
Profile:冨永美保 tomito architecture
2014年に設立した、神奈川県横浜市にある建築設計事務所。
大切にしているのは、日常を観察して、さまざまな関係性の編み目のなかで建築を考えること。小さな住宅から公共建築、パブリックスペースまで、土地の物語に編みこまれるような、多様な居場所づくりを行っています。

「泊まれる出版社」真鶴出版の活動、その2号店を設計されたtomito architectureのお話をお聞きしています。
前編では真鶴町についてと、真鶴出版とtomito architectureが出会うまでを中心にお話いただきました。

真鶴という町

【川口】真鶴という町がどこにあるかと言うと、静岡県と神奈川県の境くらいにある、ギリギリ神奈川県の場所にあります。

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(上の写真)こんな感じで小さな半島になっていまして、上から見ると一番先端が鶴の頭で、翼を広げているように見えると言うので真鶴と呼ばれていると。半島自体は数十万年前の火山の噴火でできた7平方キロメートルの半島になります。
山の方を見るとちょっと岩肌が見えている所があるんですけど、火山でできた所なので石材料があって、高級な墓石として使われる小松石が採れます。

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半島の先端の方を見てみると、すごく眺めの良い景勝地の場所があったり、お林と呼ばれる元々天皇家の御料林だった場所なんですけど、海が見える森として森林浴に使われたりしています。

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町中の方は、上から見るとこういう感じでとても眺めが良い摺り鉢型の地形になっていて、下から見ると田舎の港町が広がっています。今でも毎朝、魚市場が開かれていて、美味しいお寿司とか、干物が名産になっています。

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年に1回、7月27日28日に貴船まつりと呼ばれる舟祭りがありまして、日本三大舟祭りの一つなんですけど、真鶴に一番人が集まる、年に一回のお祭りになります。
美味しい魚を食べて海で遊んで帰る、というのがスタンダードな真鶴観光なんですけど、僕らが紹介する真鶴っていうのはもう少し違って、真鶴の暮らしを紹介しています。

景観を守る条例 「美の基準」

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真鶴は石積みの技術で斜面に石垣がたくさんあって、それで家が建てられているので、細い路地がすごく発達しています。それを背戸道(せとみち)と呼んでいて、(上の写真のような)細い路地が町中に広がっていて、その脇には絶対に石垣があります。そんな小さい路地で育まれたコミュニティがまだ残っていて、町を歩けば必ず知り合いに出会う。人口7000人くらいで、7平方キロメートルっていう町の大きさは箱根の芦ノ湖と同じくらいの大きさで、湖くらいの小さい町になります。

この背戸道とかコミュニティっていうのは偶然残っているものではなくて、27年前に住民が自ら守った風景なんです。

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真鶴には「美の基準」と呼ばれる町づくり条例があり、簡単に説明すると、イラストと言葉と写真を使って作られているすごく珍しい条例です。「小さな人だまり」の項目だと「人が立ち話を何時間もできるような交通に妨げられない小さな人だまりをつくること。背後が囲まれていたり、真ん中に何か寄り付くものがある様につくること。」という感じで、条例とは思えない文学的な文章で、こんな風にしたらいいんじゃないかっていうのが、69個のキーワード、「静かな背戸」であるとか「実のなる木」とか、「触れる花」とか、文学的な言葉でまとめられています。

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69個のキーワードの中から一部を抜粋

「美の基準」がなければマンションが建って、景観が壊れていたはずだった。
バブルの時にリゾートマンションラッシュで熱海とか湯河原とか、神奈川のエリアにもどんどんマンションが建っていた時に、真鶴にもマンション計画が持ち込まれて、真鶴の場合は反対運動が住民から起きて、対抗する為に最終的にできたのがこの「美の基準」という条例になっています。

出版と宿泊を合わせた「泊まれる出版社」

【川口】「泊まれる出版社」というコンセプトで真鶴出版という出版活動をしていまして、町の移住促進のパンフレットを作ったり、「やさしいひもの」というタイトルで町の名産の干物を説明する冊子を作って、干物引換券をつけて、書店でこれを買って真鶴に来ると干物がもらえる、という販売物を作ったりしています。ウェブもやったり、映像もやったり。町の80年前にできた本の復刻版を作ったりだとか、住民十数人でみんなで町の魅力的な場所を見つけて地図を作ったりだとか。

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「やさしいひもの」

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8月から始まり、貴船まつりがある7月で終わる、貴船まつりを中心にしたカレンダー。7月27、28日の貴船まつりが真鶴の一年の中心とされている。

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新刊「小さな泊まれる出版社」。tomito architectureと一緒に作った2号店の設計の経緯や、そこで考えた事を載せている本。

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「泊まれる」っていうのは、自宅の一室をAirbnbで貸し出しをして、(上の写真のような)日本家屋で泊まれるというのを始めました。
宿と出版って全然関係ないように思えるんですけど、共通している事は「人と地域の関係を繋ぐ」という事で、「町歩き」と呼ばれるコンテンツを泊まった方に必ず体験してもらっています。

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これはイベントの時なので人が多いんですけど、普段は2、3人が多いです。

【來住】初めて真鶴に来て、1泊2日だと、真鶴の美の基準や、石の良さ、背戸道の事を知る機会がないので、そういうご説明するのと、真鶴自体が小さな町なので、歩くと必ず2、3人は私の知り合いに会うんですよ。

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こんな所に来ても何もないでしょ、と言いながら麦茶でもどう、ってお茶を出してくれたり、私が普段町で暮らしていて、町の人にしてもらってる事を一緒に体験してもらって、真鶴の人やコミュニティを感じてもらうツアーになっています。

【川口】元々は外国人に来てもらおうと思って始めたんです。外国人がいきなり真鶴の町を街歩きするのはわかりづらいから説明してあげようかっていうので歩いてたんですけど、だんだん日本人の方が増えてきて。
日本人の方にも町歩きをやったらすごく好評で、2年目にはもう9割が日本人のゲストになりました。もっと気軽に真鶴に通えるようにするには?というので、3年目で2号店をオープンする事になり、tomitoと一緒に作る事にしました。

今までにうちを通して17世帯45名の方が移住してくれていて、その中にはピザ屋を始める人、パン屋を始める人、カレー屋をポップアップでいろんな場所でやっていたり、来週はコーヒーの焙煎屋さんが移住してきてくれたり、いろんな商いがちょっとずつ増えています。

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先月ついにオズマガジンという女性向けの雑誌で真鶴が表紙になりまして、観光地としてちょっとずつイメージを変えていけているのかなと思っています。


tomitoと真鶴出版との出会い「CASACO」

【冨永】伊藤さんは今はtomitoを独立して、AMP/PAM(アンパン)という事務所をされているんですけど、真鶴出版に至るまでのプロセスをずっと2人で設計していました。2014年2月にとあるプロジェクトがきっかけで、伊藤さんと一緒に設計活動をスタートして、真鶴出版のお2人に会うのはその3年後なんですど、CASACOっていう一番最初に取り組んだプロジェクトを見に来ていただいて、ご縁が生まれて真鶴に行かせてもらってっていう事になるので、ここの話からさせていただければと思います。

このCASACOは、お金はないんだけれども、自分が借りた家をどうにかして開いて地域の人達と一緒に使いたいっていう思いがあるお施主さんからオーダーをいただいたのがきっかけでした。

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これは改修した後の建物なんですけど、2階部分がいろんな国から泊まりに来る人達がステイする家、その下部分がホームステイの学生さん達が泊まる家のリビングでもあるんですけど、同時に町の人達がやってきてコミュニケーションを取れるような場所でもあるというような中間的な場所。
どういう場所になったらいいかなという事自体も、伊藤さんと冨永とお施主さん達と一緒にチームで話し合って作った経緯があって、私達も、建築って図面を引いていればできるものじゃないんだなと思ったプロジェクトです。

お施主さんが、借りた家だけど開きたいと言っていて、でも町に対して開くってどうやったらいいかが全然わからないまま相談に乗っていました。わからないから、この町の事を聞くワークショップを一番最初に開いた時の写真がこちらです。

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人が集まってて賑わっているように見えるんですが、実際に来てくれた町の人は手前でピースしている男の子1人。準備した人達が単純に集合写真を撮ったっていう感じになっちゃって、町の人達に話を聞こうかと思ったのに全然来てくれなくて、何でだろうかと思いました。

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そのうちに「東ヶ丘新聞」っていう300世帯にだけ発行する新聞を月1で発行して、情報を発信する事をやっていると逆に情報が集まってくるという風になりました。いろんな場所に取材に行ったり、この町の事、日常的な出来事を設計期間の2年間、町の人達と対話する時間が作れた。
これは、その見聞きした出来事を4コマ漫画のように書き出して、縦軸を丘の標高、横軸を時間軸として、この丘の出来事を生態系みたいにマッピングして関係性を眺めてみるっていう事をやった時の図です。

新聞を発行するようになって、元々は全然興味を示してくれなかった"丘の上のママさん軍団"が、どんな事がやりたいのかとか、怪しい人達じゃなさそうだ、という事をわかってくれるようになって、丘の上の空き家情報も教えてくれるようになりました。

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同じように、町の坂道が解体されるっていうニュースもいただいて、その坂道の廃材をもらえないかお願いをしたら、解体された坂道がそのままゴロッと運ばれてくるみたいな感じになって。野球部の子達にモルタルを一個ずつ剥がしてもらうのを手伝ってもらったりして、最後町の人達100人くらいで敷き詰めるっていうイベントをやって、軒先が生まれました。

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建物が完成してからの風景。近所のママさんが中でバーをやっている様子。

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近くに住んでいるママさん達がキッズスサークルをやったり、放課後に小学生達が遊びに来たりする場になっているんですが、私達もこの場所で何か活動をしてみたいと、場所を借りて、スナックtomitoっていうイベントを月1でやっていました。
それに真鶴出版のお二人が来てくれて、是非真鶴に来てくださいってお話をいただいて、こんな幸せな事があるのか、って夢見心地で真鶴に行ったのが、真鶴出版のプロジェクトのきっかけです。

真鶴出版2号店の設計・デザインの過程

【冨永】真鶴出版2号店のお話をさせてもらうと、2017年2月にプロジェクトスタートで、2018年6月に竣工しました。宿とキオスクと、お2人のオフィスが入っています。

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上から見ると真鶴出版はちょうど真ん中にある赤い屋根の所なんですけど、2本の背戸道に挟まれた辻のような場所に建っています。これがすごく面白いなと思っていました。三日月型って言うんですかね、コクーン型みたいな形をしている所でした。

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元々建っていた状態の絵です。めくるめく風景が背戸道沿いに広がっているので、建築の図面を書くのがそぐわないような土地だなと、単線の黒い一色の図面になった瞬間に町の質感が損なわれてしまうような気がして、感じた事をそのまま色に乗せられるように色鉛筆で着彩をしています。

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改修をしてこのようになりました。
道に面して並んでいたブロック塀を解体して、入り口を6個に増やしています。背戸道沿いに腹部分から入っていける一番近い所にキオスクがあって、ゲストの部屋が図面で言うと右側にある和室部分と、2階にもう1部屋あります。
ひとつの空間なんだけれども、バラバラの居場所があるという事がすごく重要だなと思って。キオスクとかオフィスとかゲストルームが部屋の単位で区切られていなくて、日が傾くにつれてちょっとずつ空間の重心が動いていくような、背戸道の連続するランドスケープの一部として感じられるような、外と中が一体なんだけれども、ちょっとずつ日が沈む、1日の中とか季節の中で、自分は動いていないんだけれども空間が動いていくような事が真鶴のこの2本の背戸道に挟まれた場所でできないか、っていう事を考えて作っています。

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改修のビフォーアフターの写真です。
石垣がすごく立派な所なので、手前側に開いても隣に見えるのは背戸道沿いの石垣なので、それなのであれば背戸道に対して大きく開いて、背戸道の一部を引き込んだような形になった方が、この真鶴にある建築の立ち方としていいんじゃないかとこういう形に変えています。

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上は「美の基準」との関係を検討していた時の図面ですが、最終的に出来上がった物とは全然違う、途中の図面です。
黒ポチがしてあるのが、今計画しているものが69個のキーワードのどの部分に属しているか、関係があるかを示した図です。
なんとでも言えるくらい寛容な言葉が「美の基準」の中にはあるんですけど、かと言って全てに該当すれば良いという事でもないし、どうやってそのキーワードを一つの建築の一連の空間体験の中に落としていくかっていう事について大変に苦心しました。
69個のキーワードをチェックリスト的に使ってしまっては、美の基準が持っている生々しさというか、その場所だからこういう事ができるというような、その土地その状況を尊重する事が達成できないんじゃないかと。なので、「美の基準」を一度参照はしながらも、体に叩き込ませて、でもある程度距離をとりながら設計をしていきました。

背戸道を歩いているとすごい狭い道に生活風景がギュッと凝縮されて両側から出てくるので、それがくねくね曲がっていて面白いんですね。

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その小道を歩いている時の体験をどうにかして建築と関係させたいと、背戸道沿いの風景を5歩に1枚のペースで描き起こして、めくる絵本みたいに、1本の道を通りながら違う風景にどんどん出会っていく、そういう体験はできないかなと考えながら描いた図面です。


真鶴に馴染むようなリノベーションをしてもらいたい

來住】ずっと建築士さんを探してはいたんですけど、身の回りにいなかったのでネットで探していたんですね。
ある時、tomitoが記事を書いているcolocalというウェブサイトがあるんですけど、そこにCASACOの生態系の図を発見して。真鶴は美の基準がありますし、町がすごく好きだったので、真鶴に馴染むようなリノベーションをしてもらいたいなって思っていたので、こんな生態系の図を描かれている方なら絶対にやってもらえそうだと。
ホームページを調べたら、お2人の顔もすごい優しそうだったので、話を聞いてもらえるかなと思って、ネットで調べていたら、ちょうど3日後にCASACOでスナックtomitoをやるっていう情報をゲットして、建築も見られるし、お2人にも会えるなら、と行きました。その時はとりあえず、真鶴にもしよかったら来てくださいっていうお話しをしました。

冨永】町歩きをしてもらって、それがすごく面白くて。自分一人で歩いていたら絶対に気づけないような"町の質"って言うんですかね、どうしてこうなっているのかとか、何故の部分を教えてくれるので。出会った人達とも、仕込みなんじゃないかってくらい話すし。絶対に一人じゃできない深度がある体験でした。
美の基準が非常に緩いキーワードになっていて、この町らしい"遺伝子"じゃないですけど、どうやったら土地の形と建築の形を合わせられるかを考えた時に、すごく良い手引き書だなと思いました。
ただ頼り切ってはいけないと途中で気づいて、やっぱり状況とか敷地が全てだなと思った時に、手引き書ではあるんだけれどもガイド過ぎない、その距離感を保つ事がとても重要だなと思って設計をしました。

伊藤】真鶴出版のお2人とは、いわゆる施主とデザイナーという関係ではなかったと思います。1つのプロジェクトを実行するメンバーみたいな感覚はお互いに持っていたと思いますね。同世代っていう事、僕らもまだ2つ目3つ目くらいのプロジェクトだったっていうのもあると思います。
やりながら学ぶ側面も多くて、來住さん川口さんの1号店の元々の住宅の暮らしぶりから学んだり、真鶴で町歩きしていく中で、都市部で生活している身に対して真鶴の暮らしって、全然違う根っこを持っている、違うリアリティの上に成立している感覚があって、それを教えてもらうような形で真鶴に入って行きました。

冨永】自信満々で持っていった提案が、お2人と話して帰ってくるまでに、全然違ったって思う事が多くて。途中から來住さんが"真鶴の化身"みたいに思えてくる時がありました。移住してから何年かしか時が経っていないのに、きっとこの土地だったらこういう事を言うだろうって來住さんが言う時があって。それは何でなんだろうと思った時に、町の声を聞くっていう事が時間の長さじゃないんだなという事をすごく感じて、それに対してものすごく感動しました。
今も、知りながら作りたいとか、新しいお施主さんと出会う度に全部"プロジェクト"としてやりたいと思うんですけど、本当にこういう体験っていうのは尊いなとすごく思いました。


真鶴出版2号店の設計についてのお話は、後編へ続きます。
前編ではこの他、川口さんと來住さんが真鶴を選んだ理由や、日本列島回復論を読まれて感じた事などをお話しされています。
ぜひYouTubeでご覧ください。

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