山水郷チャンネル #01 ゲスト:坂本大祐さん(オフィスキャンプ東吉野)[前編]
山水郷チャンネル、第1回目のゲストは、坂本大祐さんです。
Profile: 坂本大祐 デザイナー/クリエイティブディレクター
人口1,700人の東吉野村に移住して14年目。2015年 国、県、村との合同事業、シェアとコワーキングの施設「オフィスキャンプ東吉野」を企画・建築デザイン・運営を受託。開業後、同施設で出会った利用者仲間と山村のデザイン事務所「合同会社オフィスキャンプ」を設立。奈良県をはじめ、日本全国のデザインや企画をひき受けている。また2018年、同じようなローカルエリアのコワーキング運営者と共に「一般社団法人ローカルコワークアソシエーション」を設立、全国のローカルでコワーキング施設の開業をサポートしている。
坂本さんは、「遊ぶように働く」をコンセプトに、奈良県の東部地域にある東吉野村にシェアとコワーキングの施設「オフィスキャンプ東吉野」を立ち上げ、運営されています。
身体を壊して堺から東吉野村へ
基本的にはデザインって名前のつくことはほぼなんでもやってきました。2社ぐらいインハウスで働いてから、フリーランスという経歴を辿っています。
キャリアの中でちょっと珍しいと思うのは、元々は建築の学校を出ておりまして。なので建築デザインからグラフィック、webとかいろんなこと、場合によってはアパレルも若干やってました。こんな仕事をしながら、15年前に大阪の堺から、奈良県の東吉野村っていう所に移住したんです。
移住は、自分の場合は後ろ向きの理由が多くて。
身体を壊したってのが一番大きな理由ですね。親が先に移住していて、体悪いんやったら1回こっち戻ってこいよ、なんて言われて実家に帰ったのが正直なところで。山村留学で中学校1年生の1年間、この村で過ごした経験がありまして。それが縁になって親が移住を決めた、みたいな流れもあるので、その辺で繋がっていると。
川を中心に開ける村・東吉野村
東吉野村は、紀伊半島のど真ん中あたりにありまして。山ばっかりの所なんですよ。人口 1,700人で65歳以上の比率が54%っていうそんな村です。人はもちろん少ないんですけど、その分環境が非常に素晴らしくて。飲めるんじゃないかというくらいきれいな川が村の自慢で。
この川に沿って集落が開けているんですね。
この背景にある緑なす山々がポイントで、この山が村の基幹産業である林業の中心地だったわけです。木を運ぶために、筏流走路という形で和歌山の方へ筏に組んだ木を流してたいた。流通経路として川を活用していたので、アクセスしやすいようになっていて、村の生活者のすごい近いところに川があるんです。
コワーキングスペース「オフィスキャンプ東吉野」
2015年に、山村のコワーキングスペース、オフィスキャンプ東吉野というものをつくりました。
こういう古民家なんですけど、築100年ぐらいの古民家を、国と県と村三者と我々移住者がタッグを組んで、デザインし、改装し、最終的に私が運営まで担うっていう、ちょっと変わったスタイルでこの場所は機能しています。
拠点ができた事で、まず人に来ていただけるっていうことが大きいと思ってるんですね。突然訪ねてくださる方もいらっしゃって、そういう人たちとの偶然の出会いから、移住に繋がったり仕事に繋がったり、はたまた村の人との関係性に繋がっていったり、いろんな入り口にこの場所がなっているイメージです。
2015年にこれを開業する前に、2組の移住者を迎えたんです。その2組は両方ともデザイナーで、彼らは新生児が家にいる。家で働くことはできるけどなかなか大変。じゃあみんなで共同で使えるオフィスがあると便利だよなぁという話から、それをうまく行政の方に声を拾っていただいて。且つ、開いていくことで外からクリエイティブな人たちに来てもらうきっかけになるかもわからないですよね、と。その場所を行政と我々民間でタッグを組んでやりましょうというプロジェクトになったんです。
この場所を運営するKPIは、ここに決まった数以上人が来るってことと、可能であれば移住が決まるっていうことが目標数値なんです。逆に言うとそれさえ達成していたら好き勝手やってくれていいっていうコントロールなんですよ。
オフィスキャンプの日常の一コマを撮影した写真。大きな机を囲んでコワーキングをする場所に、反対側にはコーヒースタンド。観光をはじめ多種多様な方が集まる。
ゼネラリストになる
自分みたいな者が山間の村にいることで何が起こるかなんですけど。
デザインが大事だということは、いろんなところで、いろんな情報を捕まえて、村の人達でも分かっている人がいらっしゃるんですよ。
ただ、そこからコネクトする先がなかなか見つからない、且つ皆さんシャイな人たちが多い。でも地方の情報ってめちゃくちゃ早いので、近いところにそんな事やってるやつがいるらしいっていうのは、あっという間に、もうSNS並みに広がっていって。で、コンタクトいただいた事があって。
ここで自分がよくわかったのが、都市でやっていたデザインは、自分の場合は業種を絞ったデザイン、グラフィックだったらグラフィックをやる、webだったらwebのこの部分、ロゴだったらロゴデザインっていう風に切り分けた中の一つをやらせて頂いてたんですけど。
地方になってくると、こういう風なことをお願いしたいっていうのがもうゾロっと出てくるんです。新しく作った商品があんねんけど、これを何とか世の中の人に知ってもらって売りたいと思ってるけどどうしたらいいかな、ていうオーダーなんですよ。
じゃあそれは写真も撮らなあかんし、もちろんロゴもいるよな、場合によったらパッケージもやらないといけないし、ウェブサイトもあった方がええんちゃうかなとか、結局それをほぼ全部引き受けてやるっていうことになるんですよ。バサッとデザインっていうワードで括ってやりますよって言い切るみたいな。そこからできないところは外注するって方法もあるかも分からないですし、学びながらやるって方法もありますし。
なのでトータルで仕事をするようになるっていうことですね。それが結局自分のデザインそのものを変えたというか、こちらに来て実戦で身についていったことなんですけど。
全てのものがつながって、最終的にアウトプットまで流れるっていうことに本来はなるはずで。コストと人がたくさんいる場所ではそれを細分化してやる方が効率いいんですけど、1,700人って規模の村の中で考えるとそれを細分化しているコストも暇もないっていう状態なので、全部やる。
なのでデザインっていう行為が、要はアウトプットを作るための行為ではないんだってことを、実戦の中で学んでいく。それによって随分変わりました。
初回の放送では30分の予定でしたが時間が足りず、次回以降から45分番組に。
動画ではNOTEに書ききれなかった内容や、オフィスキャンプの名前の由来や助成金についてなど、視聴者から届いた質問にも答えています。
ぜひYouTubeでご覧ください。
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