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戦隊レンジャーの横に立った母の思い出。

こどもの頃よく行ってたジャスコが気付いたらイオンになっていた。近くにもっと大きいイオンモールができたので、旧ジャスコには行かなくなった。行かなくなって20年以上が経ち、勝手にもう無くなったもんだと思っていたんだけど、近くを通ったらびっくりするくらいボロイ外観のイオンがその場所にあった。看板が変わっただけで、他は何もいじらなかったんだな、とその時知った。
ちょうどご飯でも食べたいタイミングだったので、20+n年ぶりに旧ジャスコに立ち寄った。入ってみると、中にはまっっっったく人がいなくて、内装なんかも30年前から変わりませんと主張してるかのようなオンボロ感に溢れていた。「よく潰れないな…」と思いながら歩いていたら、フロアの中央らへんにめちゃくちゃしょぼいステージがあった。そのステージを認識した瞬間に、めちゃくちゃ古い思い出が突然蘇ってきた。たぶん、25年くらい前、そこがまだ全然ジャスコだった頃の思い出。

当時3歳下の弟はオーレンジャーが好きで、毎週オーレンジャーを観ていた。私ももちろん一緒に観ていて、オーイエローが特に好きだった。
ある時、こんな片田舎のジャスコにオーレンジャーがやって来る!とのことで、家族みんなで観に行った。前述の、今ではやたらしょぼく感じたあのステージの前に、近隣のちびっことその家族がかなり集まっていたと思う。オーレンジャー5人が現れ、バラノイアを蹴散らして、最後にこどもたちと握手までしてくれるという素晴らしいイベントだった。
そのショーにはなんと、オーレッドの中の人であるゴロー(宍戸勝さん)も来ていて、ショーが終わった後、観客がゴローに直接質問できるコーナーまであった。積極的なちびっこたちが我こそは!と挙手し、選ばれた子がステージに上がってゴローに直接質問していた。内気な私には手を挙げるなんて選択肢はなかったが、弟はどうだったかな。挙げてたかもしれない。

ちびっこたちが一通り質問し終えたあたりで、MCのお姉さんが観客に向かって

「それでは次に、おとうさんおかあさんの中で、ゴロー隊員に質問したい方はいらっしゃいますか~?」

と投げかけた。

「はい!!!!」

と、真っ先に、かつ唯一手を挙げたのは母だった。

正直、ここまでの説明には事実と異なる部分もあるかもしれないんだけど、ここからの記憶はとても鮮明で、とても自信がある。

もちろんMCのお姉さんは母を指名してくれ、母は喜び勇んでステージに上がっていった。内気な私は、母のこういう、目立ちたがるというか、結果として目立つことを嬉々としてしちゃうところがとても苦手で、この時も、母が何か恥ずかしいことをしないだろうかとドキドキハラハラしながら観客席からその様子を見守っていた。

ステージに上がった母は、ゴローに「オーイエローとオーピンク、どっちが好きですか!?」という、瞬間的に思いついたにしてはこどもの夢を壊さない、絶妙にどうでもいい質問をした。ゴローは「ふたりとも大事な仲間なので、どっちの方が好きというのはないですね」と、これ以上ない模範解答をにこやかに述べた。そしてMCのお姉さんが「おかあさん、ありがとうございました~」と母に退散を促し、私は(母が恥ずかしいことしなくてよかった)と胸をなでおろした。

が、その時MCのお姉さんが気付いた。

「あっwwおかあさん、ゴロー隊員と手繋いでたんですね!www」

私は心臓が止まるかと思った。母は笑いながら

「あっやだ~!思わず繋いじゃってました~!」

と言いながら繋いだ手を会場に見せてからゴローの手を放し、うふふふという感じでステージを去った。

あの時私は心から「穴があったら入りたい」と思った。そこからの記憶は特にない。このことをちゃんと思い出したのはかなり久しぶりだったけど、この出来事は私の記憶の片隅に残り続けると思う。当時の私にとっては「恥ずかしくて仕方がない思い出」だったが、自分が母になった今思い返してみると、あの時の母は、若い俳優さんと絡める機会を逃すことなく即座に挙手し、まあまあいい質問をし、その隙に若い俳優さんと手を繋いでしまったわけで、めちゃくちゃ羨ましい。ただ、今私にその機会が訪れたとしても、挙手して質問するまではともかく、ちゃっかり手繋いじゃお、なんてとても思いつかないと思う。まじすごいけど、まじで有り得ない。そして正直、娘である私ですらMCのお姉さんが指摘するまでまったく気付かなかったので、母どんだけ自然に手繋いだんだよ、そしてゴロー、不意に手繋がれておきながらよく自然に振舞えたな、と25年越しに感心した。小さかったからステージよく見えてなかったのかもしれないけど。あの時観に来ていた他のおかあさんたちはどう思ったんだろう。母、終始どんな気持ちだったんだろう。今度聞いてみよう。

誰もいない、しょぼいステージを云十年振りに眺めながら、私はそう思った。

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