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怠慢と圧力

 忘れ物をすると、いつも恥ずかしくなってしまう。自分だけ用意が整っていなくて、一人で先生に謝りに行くのも億劫になる。隣の人に見せてくれと乞いても、他のクラスの人から借りろと言われる。部活仲間は異性しかいないから、廊下でやり取りをしていると「仲が良い」と周囲に思われていないか不安になる。

 夜に様々な行動をするのは危険である。外に出歩けば変わった人に声をかけられて、深夜番組もつまらないものばかりで、机の蛍光灯を点けて黙々と勉強していても悲しくなって泣いてしまうことすらある。だから、なるべく早く就寝したいものだが、ルーティーンであるこの日記と絵にだらだらと時間を費やすから、結局遅くまで起きてしまう。

 朝に強い人に憧れる。身近では祖父がそうだったらしいが、朝 4 時に起床して勉強し、東北大学法学部に入学したらしい。父も才能があって、夜遅くまで起きていてもちゃんと 7 時には起きるし、仕事が遅くなっても疲れた表情を一切見せずに元気に振る舞う。父は弘前大学医学部卒で、今は小児科医をしている。国境なき医師団にも参加したことがあり、アジア諸国に行ったこともある極めて優秀な人物だ。

 一方、僕はどうだろう。小学生の時に 1 日 30 分に制限されていたゲームが大好きで、中学生のときには 5 万円ほどでノート PC を買って Minecraft をずっとプレイしていた。高校に入ると今度はゲーミング PC を買ってしまった。これがいけなかった。締め付けられていたものが突然開放され、びろびろと伸びた状態で修復不可能となった。

 高校 3 年の夏も平常運転、朝から晩までゲームをした。親が入れてくれた予備校にもだんだん行かなくなり、借りだけが僕の手元に残った。申し訳ない気持ちと、現状疲れていて何もしたくない気持ちが交錯してまた心を締め付ける。

 「医者の息子」という言葉から、どのような印象を持たれるか。「息子さんは頭良いのだから、親を継ぐんでしょ?」と言われるか、「え、そうだったの!?」と親が医者なくせに頭が悪いことに驚くか、だいたいこの二つだ。いずれも僕の心にひどく刺さる言葉だが、そもそも僕が頭が良ければよかった話だ。どこからやり直せばよいのだろうか。

 祖父や父の経歴から、僕の経歴もそこそこ良いものにしなければならない気がする。近場だと北海道大学総合理系だろうか。しかし、運の悪いことに今年でセンター試験は最後となる。だから、受験生はワンランク下の大学を安全策として受ける可能性が高い。本来なら京大や東大を目指せる人が受験してくるかもしれない。そんな中、何も勉強すらしていない奴がまぐれでも受かるだろうか。

 誰か、僕の頬を殴ってほしい。僕に気合を入れてほしい。このままじゃ落ちるところか第一志望を変えるだろうけど、それは絶対にしたくない。プレッシャーが日々のストレスとなり、毎日、いや毎時間トイレに駆け込むはめになっているのだ。今日も僕のお腹は痛い。