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最後の考査

 緊張してきた。高校生活最後のテストである。小学生の時は、「たのしかった、うんどうかい!」と言っていたのも、今では漢字ばかり使って表記してしまう身体になった。

 最後といえば、全力を尽くす。ラストスパート。あともう一息。終わりよければ全てよしというように、昔から日本人は締めを大事にしてきたらしい。鍋の後のうどん、お祭りの花火大会、帰りの会。何か儀式を行なうことで、自分の心に「あ、終わった」と思わせるのだ。

 ベクトルの考え方によると、途中経過は関係なく、始めと終わりだけを重視する。最初の考査というものは、とても緊張した。赤点を取ったらどうしよう、成績は中学生の時より落ちそうだ、思っていたことはいずれも実現した。他の生徒は正の向きに進むのに、自分は逆ベクトル。最終的なゴールは同じだとしても、初めが正反対だとかなりヘコむ。

 好きな漫画の最終回。命がけで闘ってきた主人公たち。最後こそは幸せになってほしい。しかしここでも「落として」くる可能性がある――。

 全力といっても、精神の過度な背伸びは伴う。体がまともに動けないのならば、コマンドが本気= 100 でも、出力結果は何分の一かだろう。目標が数ミリ違うだけで結果が十倍にも百倍にもなる。どこでピリオドを打つか、目が正常に動作しなければ制御は難しい。