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アナログ

 ピアノの曲を聴くと心が落ち着く。最近の音楽は打ち込みが多いものだから、たまにはコンサートに行ってプロの自然なピアノの音色にうっとりしてみたい。

 アナログなデータをある閾値ごとで区切り、数値化して圧縮したものがデジタルデータだ。そのため、いくらハイレゾとか高音質とかいっても、アナログに比べればかなりのデータを失っている。いくらゆっくりにしても音が歪むことはない。ベクター画像に似ている気もするが、自然の全てが関数で表されるかどうかは疑問に残る。

 犬が mp3 の音楽を聞くととても音質が悪く聞こえるそうだ。なに人間はこんな曲を聴いているんだと思う、と情報科の先生が教えてくれた。人間の耳は精度が悪いと言える。自分たちが満足すればそれで十分と考えているのだ。

 しかし、デジタルはアナログに勝てないのはデータ量からみても明らかだ。世の中はデジタルだけれど、決してアナログな音楽はなくならないと思う。AI にも負けない音楽が。

 人間が満足するというのは、心からのと表面的にとの二つある。自分の心を預けても良いような信頼できるモノをお持ちだろうか。自然体を見せても受け入れてくれる。そんな状態で音楽を聴いている人はあまりいないと思う。無意識の中では音楽に足りない何かのせいで不満足である気がする。

 聴いているのもいいが、そのうち好きな曲をピアノで弾きたくなることがある。けれどたいていは難しくて諦めてしまう。そして Youtube で「弾いてみた」の動画を見て満足する。もう生で聴いてみたいなど思うことはない。

 今のデジタル疲れはパソコンやスマホに原因があるのは知られているが、実は普段聴いている音にも要因があるのではないか。どこに行っても機械から流れる音を聴く。ラジオはアナログだが、そのラジオですらネット、デジタルで聞けるようになってしまった。もし疲れている自覚があるなら、勇気を出してピアノやオーケストラの公演を聞きにいっても良いと思う。曲は「デジタル」で繰り返し聞けば大丈夫。本番は感動するに違いない。