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鉄筋コンクリートの建物は100年以上持つように造られています(経済的検証)

世界最古の鉄筋コンクリートの建物は1902年から1904年にかけて、フランスのパリ16区のフランクリン通り25番地に建築されたアパートです。120年を経た今でも健全な状態で使われています。日本最古の鉄筋コンクリートの建物は旧横浜正金銀行本店で、現在は神奈川県立歴史博物館として使われています。1904年7月竣工なので、やはり建築されてから120年が経過しています。

1933年に建築された、東京メトロ「清澄白河」駅出口前に所在する“清州寮”という鉄筋コンクリート造4階建ての共同住宅は、現在も店舗や事務所や住居として使われています。そのすぐ近くの清澄庭園に隣接し、清澄通りに接面して通り沿いには“東京市営店舗向住宅”が連坦しています。この建物群も鉄筋コンクリート造の地下1階付2階建で、1928年に建築されました。1階はリニューアルされた店舗が多く、3階が増築された住戸も多いです。

関東大震災後の復興支援住宅として、1924年から1933年にかけて東京に14か所、横浜に2カ所建築された同潤会アパートは、残念ながら全て取り壊されました。2013年に取り壊された台東区の上野下アパートメントが最後でした。これらの建物は2階建~6階建の中低層の建物で、敷地に建築できる延床面積に大きな余剰があったので、跡地には超高層の建物などが建築されました。建物が取壊された主な理由は経済合理性の問題で、現在の地域環境により適合した、もっと利用価値の高い建物に建替わりました。

銀座1丁目には1932年に竣工した、鉄筋コンクリート造の奥野ビルが建っています。旧名は“銀座アパートメント”で、高級賃貸共同住宅として建築され、現在はギャラリーや物販店、事務所などが入居しています。銀座エリアだけでもこのような築後90年以上の建物が、何棟もまだ残っています。東京大空襲を生き延びた建物ですが、銀座という貴重な立地に建っていますから、限界まで建物の延床面積を増やすことが合理的な地域です。それに加えてガス管などの付帯設備の使用も限界の時期なので、徐々に建替えが進行しています。

鉄筋コンクリート造の建物の歴史はまだ120年ですが、物理的な理由で取り壊された建物は、施工不良によるものが多いのではないでしょうか。同潤会の建物は建築後70年~80年で全て取り壊されたのですが、主として経済的理由だと思われます。
日本の都市は今もスクラップ&ビルドによって激しく変貌しつづけています。しかし、建物を取り壊すということは、それと同時にそこで育まれてきた文化や歴史やコミュニティも、同時に破壊することになってしまいます。付帯設備を適宜交換したり、建物の使い方を工夫したりすることで、せめて200年を目標に、鉄筋コンクリート造の建物を永く使い続け、地域の文化や歴史を守り、故郷の想い出を大切にできればいいなと思います。

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