見出し画像

Cursorを触ってみた感想とこれからのAI時代について

やっとというか今話題の Cursor を触ってみたので、触ってみた感想やこれからのAI時代について今の気持ちを書いてみたい。昨今のAIの進化が速すぎてこの感想も数ヶ月後には陳腐化しそうではあるがそれはそれで…。

作ったもの

Cursor の COMPOSER という機能を使ってAIにコードを書いてもらったところ一日でこれができた。すごい。全く新しい体験だった。

https://github.com/yuzoiwasaki/hasami-shogi

はさみ将棋アプリにした理由は自分が将棋が好きだからというのと、そこそこ難しくでも簡単という絶妙なラインな気がしたからだ。

自分はいつも趣味でアプリを作る時は勉強の意味で触ったことがない技術(あるいはあまり得意ではない技術)を採用するようにしているのだが、今回は React + TypeScript + Tailwind CSS という構成にしてみた。

触ってみた印象としては、所々間違えはするが十分プロダクションコードとして使えるレベルであり、総合的に見て人間より優秀だと思う。

触ってみた感想

とにかく新しい体験でありすごい。これまで人間が頑張ってプログラムを組んでいたのが、間違いなく今後はAIがプログラミングをするようになる。

エンジニアという職種自体はなくならないと思うが、純粋なプログラマの数は大幅に減るだろうし、AIが書いたコードをレビューする役割に変わるなどあり方も変わっていくのではないか。少なくとも10倍は生産性が違う。私自身もエンジニアであるわけだが、真面目に今後の生存戦略を考える必要があると思う。

一方で、そういった仕事関係の感情を抜きにすると純粋に楽しい。それは新しい技術を触って喜ぶエンジニアの気質もあると思うが、それ以上に新しい学びの形を体験できて興味深いという意味合いが強い。

これまでの学びの形は、例えば本で読んで勉強し試行錯誤しながら自分で理解していくというものだった。これはエンジニアリングにかかわらずそうである。しかし、AIが出てきたことで最初に雑にAIに作ってもらって後からその中身を学習する、質問も都度AIに気軽にできるという体験に変わることになる。

これは大きな意味での学びのパラダイムシフトだと思う。例えるなら、私がエリック・クラプトンの体に乗り移ってギターを弾いた後、一からギターについて学ぶことができるわけで感覚を掴むスピードは格段に上がるだろう。これはワクワクする体験だ。改めて興味のある分野について勉強してみるのもいいかもしれない。

エンジニアの生存戦略

では我々エンジニアは今後どうしたらいいのかというと、しばらくはAIとの共存時代が続くと思う。AIがプログラミングしたコードを人間がレビューしたり修正したりというような。社会にはある程度の弾力性(あるいは恒常性)があるので、すぐに大半のエンジニアが職を失うことはないだろう。

しかし、上記のようにあり方は確実に変わることになる。多かれ少なかれAIについて学ぶ必要は出てくるだろうし、コーディング力以上に設計力がより重要になってくるかもしれない。それさえもAIに任せてしまえばいいのかもしれないが。

もう一つはエンジニアリングと別のスキルとの掛け合わせである。例えば、ビジネスが理解できるエンジニア、マネジメントができるエンジニア、内部統制に強いエンジニアなど、容易にはAIに代替されない分野の専門性を持ったエンジニアはこれからも生き残っていくだろう。コミュニケーション力やリーダーシップもそのうちの一つかもしれない。

また、現時点ではAIが書いたコードを理解できない人間だけでシステムを運用できるかというと難しいのではないかと思う。理解できないものを運用するのは単純に怖いしリスクでもある。AIに悪意のあるコードを仕込まれる危険性だってないわけではない。その意味で、一定の専門性を持ったエンジニアはこれからも重宝されていくだろう。

これからのAI時代について

これからのAI時代について考えた時に、個人的に注目しているトピックを挙げていく。一つ目は上記でも書いた学びのパラダイムシフトだ。これは今後の教育に大きな影響を与えるだろう。

二つ目はプログラミングのコモディティ化、そしてある種の民主化である。これまでは相当な努力をして身につける必要があったプログラミング能力が、AIの助けを借りることによって全く知識がない人間でもプログラムを作ることができるようになった。アイデアさえあれば、すぐに自分が実現したいサービスを実装することができる世の中になったともいえる。これも大きな変化になるだろう。そしてもちろん、この知識のコモディティ化とそれによってもたらされるエンパワーメントはプログラミングに限った話ではない。

三つ目はAIで代替できないものをどう扱うかについて。例えば農業や漁業といった第一次産業をAIで代替するのは現状では難しい。それはIT化が難しいという産業自体の特性と、そもそもあまり儲からないため投資するモチベーションが低かったという背景がある。だが、AIによってその他の分野が大幅に効率化される中、改めて第一次産業にどう向き合うかは重要なテーマになっていくだろう。見方を変えれば、人間はある意味で最もプリミティブな産業に回帰していくのかもしれない。

もう少し身近なところでいえば採用やマネジメントもそうだろう。これは農業や漁業とは別の意味で人間にしかできないことであると思う。少なくとも私はAIにマネジメントされたいとは思わないので、今後はこうしたより人間的な役割が重要になっていくのかもしれない。

最後に

昨今のAIの進化による急激なうねりは、確実に今の仕事の質を変え、否応なしに職を失う人を生み出すものである。一方でこの人口減少社会における一つの大きな希望であり、今後の更なるブレイクスルーによって持続可能な社会を実現するための可能性を秘めた技術でもある。

幸福論で有名なアランの言葉に「悲観主義は気分によるが、楽観主義は意志による」という一節がある。気分に流されて悲観主義になるのは簡単だが、そうではなく意志を持って前に進んでいかなければいけない、我々はそんな時代に生きているのかもしれない。そしてこの大きなパラダイムシフトをリアルタイムで経験できることは、本来とても楽しい体験であるはずだ。

エンジニアの生存戦略という文脈でいえば、実は私はそれほど心配していない。なぜなら、未知の物事に対して学び続けることができる姿勢こそエンジニアの最大の強みだからだ。だとしたらまさに望むところではないか。今という時代の最先端に立ち合い続けることができるなんて、こんなに面白いことはない。

上記のアランの幸福論にはもう一つ有名な一節がある。それは「幸せだから笑うのではない、笑うから幸せなのだ」という言葉だ。

笑おう。結局のところ、我々は前に進んでいくしかないのだから。

いいなと思ったら応援しよう!