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重心に関する毒電波(WTテコンドー)

※ このnoteは理系大学生のWTテコンドー修練者向け(以下の数式が理解出来る程度の知識がある前提)に書いています。

二物体の重心
複数物体の重心

静止した場合の重心と荷重

 物体の重心は各質点の位置に寄って決まるので、人体の重心は姿勢によって決まります。例えば、準備立ちの時に姿勢が悪ければ両足の荷重が均等にならないのは重心が左右のどちらかに寄ってしまうためです。

チュンビソギ

例えば、全額水平軸上の座標$${x_r}$$、$${x_l}$$を右足と左足の接地点、重心の座標を$${x_g}$$とした場合、それぞれの足が受ける垂直抗力$${N_r}$$、$${N_l}$$と人体全体が受ける重力$${W}$$の間には、

$$
W=N_r+N_l
$$

という力のつり合い式と、原点回りの力のモーメントのつり合い式、

$$
x_r×N_r+x_l×N_l=x_g×W
$$

の二式が成り立ちます。この二式をまとめて重心の式にすると、

$$
x_g=\frac{x_r×N_r+x_l×N_l}{N_r+N_l}
$$

が得られます。これは、各座標を位置ベクトルと考えると、

$$
\vec{x_g}=\frac{\vec{x_r}×N_r+\vec{x_l}×N_l}{N_r+N_l}
$$

となり、座標$${x_r}$$と$${x_l}$$を$${N_l:N_r}$$に内分した点が重心の座標$${x_G}$$となる事を意味しています。

例えば、左右の荷重を$${N_r:N_l=1:3}$$とすれば、重心の位置は$${x_r}$$と$${x_l}$$を3:1で内分する点となり、荷重の大きな$${x_l}$$側に重心があることが分かります。

前屈立ちで荷重を7:3にした場合、重心の位置は両足の間で3:7とする位置にくる。

勿論、この2式は「力のつり合い」と「力のモーメントのつり合い」が前提となっている事から静力学に限定した話であり、蹴りの動作中など運動する物体には適応できません。

キャンセル(クラッシュ)と重心

 前足を使って相手のカットをパリングする技術はキャンセルあるいはクラッシュと呼ばれています。前足キャンセルのコツの一つが重心を前に出して相手にぶつけるという事だったりします。上の動画を見ると、上半身は後ろに倒れているものの骨盤の位置が前に出ており、足を上げた事で身体全体の重心の位置が前に出ているのが分かると思います。
 これにより、相手の蹴りとぶつかっても当たり負けせず、(相手の蹴りによって若干押し返せれる事で)元の位置に足を下すことが出来るのです。

 例えば、現実の世界トップ選手たちのキョルギにおけるキャンセルのシーンを見ていても、軸足の接地面よりも前に骨盤を出しているのが分かります。重心を前に出して相手にぶつけるというと少し抽象度が高い表現になりますから、これを動作として見た時には骨盤を軸足に乗せずに骨盤を前に出すというのがポイントになります。骨盤を前に出すためには軸足側で床反力を前方向に得て重心を前に出す必要があり、軸足でしっかり地面を踏むことが大切になります。蹴り脚側で地面を踏むと、重心が後ろに動く方向に外力を得てしまうので、脚を挙げるときには挙げる側で床を踏まず、軸足側でしっかりと床を踏んで骨盤を前に出すのが大事です。