「障害特性」という言葉の混同と使用時の注意点
「障害特性」という言葉は、基本的には「障害の特徴」を指しますが、その使われ方や解釈には文脈による違いがあります。以下に、それぞれの視点から整理してみます。
1. 障害特性の一般的な意味
定義:
障害全般の特徴を指す用語で、身体的・精神的・知的障害を含むさまざまな障害について、それぞれの特性を分類・分析するために用いられることが多いです。
具体例:
- 視覚障害: 視覚情報の欠如により、聴覚や触覚が発達する場合がある。
- 聴覚障害: 聴覚を補うために手話や筆談などを用いる。
- 運動障害: 日常生活動作に支援が必要な場合がある。
本来の使い方:
特定の障害がもたらす「性質」や「傾向」を科学的・実務的に整理するための概念です。
2. 発達障害における「障害特性」
発達障害に特化した意味:
発達障害(ADHD、自閉スペクトラム症(ASD)、学習障害(LD)など)の分野では、「障害特性」が主に発達障害に関連する行動上の傾向や特徴を指して使われることがあります。
例として挙げられる特性:
- 自閉スペクトラム症: 社会的コミュニケーションの困難、興味の狭さやこだわり。
- ADHD: 注意の散漫さ、多動性、衝動性。
- 学習障害: 読み書きや計算が苦手など。
背景:
発達障害は生まれつきの脳の発達の違いに基づくものであり、環境への適応の仕方や困難の形が個々で異なるため、「特性」を理解して個別対応を重視する必要があります。
3. 「障害特性」の混同と注意点
今回私が感じたように、「障害特性」という言葉がごちゃごちゃに混同されて使われる原因として、以下が考えられます:
(1)発達障害に偏った使い方が一般化
特に最近は、発達障害に関する議論や教育現場での取り組みが増えたため、「障害特性」が発達障害に限定されたような文脈で使われることが多くなっています。その結果、先天性や中途障害といった他の障害と混同されることがあります。
(2)「特性」という言葉のポジティブイメージの影響
「特性」という言葉が「個性」や「能力」と結びつきやすく、障害そのものの課題や支援の必要性が軽視される場合があります。これが、私が大変遺憾に思う「障害は個性だ」と言われる風潮とつながっている可能性があります。
(3)先天性障害と中途障害の違いが曖昧化
「障害特性」という言葉は先天性障害(例: 発達障害、遺伝的要因)と中途障害(例: 病気や事故による障害)のどちらにも適用されるはずですが、議論の中で区別されないことが多いです。
例:発達障害の「特性」と、中途障害における「生活の課題」が同じように論じられると、ズレが生じます。
提案: 定義を整理して議論を深めるための観点
様々な場面における発言では、以下のように整理して発信すると、読み手の理解が深まるかもしれません。
(1)「障害特性」の本来の意味を明確化
「障害特性は障害の分類や特徴の整理に用いられる科学的な概念で、発達障害に限定されるものではありません」と説明する。
(2)先天性障害と中途障害の違いを具体化
例:
- 先天性障害(例: 発達障害)は生まれつきの脳や身体の構造的な違いに基づく。
- 中途障害は病気や事故による身体機能の喪失に基づく。
(3)「障害特性」と「個性」を混同しない重要性
障害特性を正しく理解することで、「障害は個性」という表現の危うさを理解することが重要です。特に中途障害は「特性」として捉えるよりも、「生活の課題」や「支援の必要性」として捉えるべき場面が多いと思われます。
情報があふれる現代において、障害や特性に関する誤解を解くことは大切だと考えます。
特に、先天性と中途障害を明確に区別して語る必要性を伝えたい。
現代の混乱しがちな情報化社会に、新たな視点と方向性を示すものになれば幸いです。