良き日
8年来の友人が、引越しをする。
昔々、今住んでいる街よりももっともっと田舎に住んでいた頃、その友人に色をこいていた別の友人から紹介されたのが出会いのきっかけ。
ゲイの友人関係なんて、大体広過ぎて浅過ぎるものなので、友人を介してどんどん広がっていく一方で、長続きすることは稀。
そもそもゲイ友というハードルが低過ぎて、一回リアルして、もう一回会ってもいい人はゲイ友の分類になる(自分の感覚では。友達以外のカテゴリーがないっていうこともある)。
その彼を紹介してくれた友人とは、今も連絡を取れる状態ではあるが、連絡を取る感じではなくなってしまった。
まあ、ゲイ友とはそんなものである。
そんなに広い世界ではないから、お互い共通の知り合いはかなり多いのだが、それぞれ疎遠になった人達がいる。
会った時の近況報告で、今でも連絡を取っていることが分かったら、じゃあ次はそいつを入れて3人で、となってまた再会をする、というような。
そんなゆるゆるした感じ。
話を戻そう。
その彼とは、田舎の同じ街で数年過ごし、お互い転勤や転職で別の街に移り住み、今また同じ街に住んでいる。
そして、今回、自分の家から徒歩20分くらいの所に引越してくるようだ。
生活圏は別のゾーンだけど、平日でも気軽に会える距離になるのがとても嬉しい。
彼が移り住む駅の近くに、自分が前々から行きたかった飲食店があったので、ちょうどいいタイミングだから2人で行ってきた。
落ち着いた雰囲気で、地元の食材を、綺麗な器に、丁寧に盛り付けている店で、自分達よりも少し歳下の愛想の良いお喋り好きな店長が、上手くまとめ上げている店だった。
友人は童顔ではあるのだが、お互い30代。
30代のゲイ2人が地方で入る店を探すのも、少し気を使う。
田舎の店というのは、アットホームという名の身辺調査が激しい店もある。
そういう面からすると、都会の店は入りやすいなと思う。
店長は早番だったのか、お店の営業は他の店員に任せて早々に帰って行き、自分達はそこからいくつか料理をつまんだ後に、帰路についた。
自分の家まで連れ立って帰っている途中、犬の散歩をしている店長と再会をするというサプライズがあった。
自分達は気づかなかったのだが、店長の方から気づいて話しかけてくれ、少しの間立ち話。
店長に似て、飼い犬も人懐っこい性格で、尻尾をふりふりしてくれた。
改めて、今日のお礼と感謝を伝え合い、また来店すると伝えて、おやすみなさいと言い合った。
気分が良くなる不思議な夜だねと話しながら、その後、近所の銭湯に入りに行った。
自分がこの街に引越して来てからずっとお世話になっている銭湯で、友達を連れて来たよと番台のおばちゃんに言うと、とても喜んでくれた。
風呂から上がり、自分の家で2人でアイスをつつきながら、今日の夜を振り返る。
偶然と、思いも寄らない感謝をされて、こんな良い日もあるのだな、と。
一つ一つのたまたましたことが、振り返った時に必然だったように繋がっているように思えた。
そして、それを共有出来る友人がそこにいた。
そんな良い日。
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