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ゲイであることは、僕の一部であって、全部ではない
12月は面白い映画が多そうだ。
でも、仕事とプライベートで忙しく、なかなか映画館に行ける時間がなさそうな予感。
12月上旬に公開される映画は、年末年始に封切りされる大物映画に寄り切られる形で上映期間が短くなりそうなので、観たい映画が観切れるか不安。
そんな中、「彼女が好きなものは」を観た。
予告編は一度しか見かけなかったので、あまり推されている映画ではないのかもしれない。
原作物で、数年前にNHKでドラマ化(タイトルは改題されている)されていて、それも観ていた。なのだけど、内容が胸にずんときて、最後まで観た記憶がない。めちゃくちゃ重たく描いているわけではないが、内容は結構重い。今回の映画もしっかり重い場面が多かった。
原作、ドラマ、映画と、どれもタイトルが違う。原作のタイトルに用いられるワードが好ましくないのかなと思ったりする。映画のタイトルだけ見ると、割と軽い感じがするので、もしかしたら観てからイメージが違うと思うかもしれない。
「きのう何食べた」でほっこりほんわかした人にこそ、これを観てほしい。
主人公の恋人役に今井翼が出ていた。
ドラマ版では谷原章介だったのだが、ゲイ的目線だと谷原章介はナイナイと思っていたので、このキャストは良かった。
ああいうエロいイケオジ、結構いる。既婚者と付き合っても自分が虚しくなるので、俺は付き合わないけど。
ヒロインの女の子はドラマ版の方が腐女子感がよりあってリアルな感じはあるが、映画版のキャストはより明るい感じ。
病院で母親と話す場面では、母親の言葉に嫌気がさし、主人公の感情のこもった言葉が胸にきた。
学校でLGBTについて意見交換する場面では、ほんとに白けてイライラした。
体育館での場面は、ぐっときた。
自分は、ゲイになんて生まれなければよかったと思ったことはないと自覚しているし、結婚したいとも、子どもを作りたいとも、親に孫を見せたいとも思っていない。
なのだけど、主人公の、自分が一番悩んできた、自分が一番自分を嫌い、という台詞は重かった。
もしかしたら、自分の心のずっと底にも、そういう気持ちがあったのかもしれない。
ゲイとして生きる中で、仕舞い続けた方がいいと思って、隠し込んでいたのかもしれない。
世の中、綺麗事や理想を言うのは簡単だが、人の感情はそう変わらないのだろうと思う。
やはり多くの人にとっては、ゲイは異質なものだ。
でも僕らだって、常にゲイを意識してるわけじゃない。
プライベートですら意識しない時もある。ゲイ友と会ったりする時くらいだ。
それは、ノンケが、プライベートでセックスしたり、子作りしたり、家庭では親や夫、妻の顔をしている一方で、職場では普通の社会人として振る舞うことと一緒である。
ゲイだって、プライベートではゲイだけど、社会に一歩出れば普通の社会人だ。
この作品上、主人公は高校生だから、なかなか学校以外の世界は難しいのだろうが。
その人の異質な部分を一つ見つけたからと言って、それがその人の全てを表すわけではない。
人間関係の中で、例えば一人の人の嫌な部分を知ったとする。それで、その人の全てを嫌ってしまう人もいる。一方で、そういう部分もあるけど、他の面では良い部分もある、と思う人もいる。
そういう風に思ってもらえたらなと思ったりする。
ゲイだと分かった瞬間に、当人を攻撃するか、翻って自分を攻撃するしか出来ないのはなぜだろう。
異質なものに加担してしまった自分が許せないのだろうか。
ゲイがその人の全てかのように接してしまうから、当人もゲイであることを隠そうとしてしまうような気がする。
そのループから抜け出すには、どう変わっていけばいいのだろうか。