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別れと出逢いとetc.
職場近くの喫茶店が閉店した。
19年やっていたらしい。最終週は盛大に賑わっていた。
僕は仕事の日のランチに週1で行く程度で、店長さんとは半年ほどの付き合いだったが、通勤路線が一緒でたまに電車内で出くわして結構話すくらいには仲良くさせてもらった。
喫茶店と言っても、いい意味で家庭料理の延長の感じで、日替わりメニューは和洋中混ぜこぜ。
火の入れ加減とか、ソースの作り方とか、食べながら自分の自炊に取り入れたものがいくつかあった。
一人暮らしの生活というのは大きな生活の変化がない。恋人も友達もいない僕の場合は尚更。
その中で、自分の生活にさりげなく、たまに新しいことが溶け込んでいくことは嬉しい。
店長さんの歳は二回りくらい上だと思う。
連絡先を交換しようかとも思ったが、大人の男女だ。
連絡先を交わす意味とは何かを考えて、やめてしまった。考えすぎかな。
でも、普通に食事に、というわけにもいかないだろう。
ノンケの世界って窮屈だねぇ。
そう言えば、職場の飲み会の場で、その場にいなかった若い女性社員が古い銭湯に通っているという話を聞いて、銭湯話で盛り上がりたいものだと言ったら、男どもの冷やかしが凄かった。
どんな話でも男が女性の話をするとそういう興味だと解釈する男の思考回路はどうなっているのだろうか。
そういう思考回路で見られているのだと思うと、窮屈でならない。
結局、連絡先も知らないまま、いつかどこかでとお別れした。
少し寂しい気もするが、僕の人との距離感はそれくらいが好ましいとも思う。
ある日の自炊の最中に、ちょっと思い出すようなそれくらいが。
話は変わる。
出張先で行った定食屋さんでのこと。
僕はその店に入るのは2回目だったけど、初回で結構店主さんと仲良くなっていて、入ってすぐ数ヶ月振りだと話し込んだ。
その後座ったカウンターで隣のおじさんに、常連だと思われたのか話しかけられて、同じ出張族だということで仲良くお話した。結構可愛いおじさんだった。
他の街で僕が行く店なんかも聞かれて、何軒か教えてあげた。
タイミングが合えば、またどこかの街の店でばったり会うかもしれない。
この時も連絡先を交換してもいいかなと一瞬頭をよぎったけれど、いやいや初対面だからと思い直す。
初リアルで2回目がアリだと思ったらすぐ連絡先を交換する定番のパターンが、こっちの生活でも頭に流れてきてしまう。
最近、より分別がつかなくなってきた気がする。
あぁ、怖い怖い。
僕は子どもの頃から社交的でない性格だけど、一見の店には躊躇なく入れるタイプで、それが意外なのか他人にはよく驚かれる。
これまでのゲイのリアルの積み重ねかもしれない。
ハズれても笑い話、ってところも同じだし。
名前も知らないその人を、ちょっと心に留めておいて、たまに忘れたり、たまに思い出したり。
元々、友達だ知り合いだと交友関係をどんどん作っていくタイプではなかったけど、引越しや転勤族のせいか、人間関係は出来上がって、そして自然に流れていくものになっていった。
もう会わないと決めたわけではないけれど、会わないんだろうなと思う人達がたくさんいる。
身軽と言えば身軽で、薄情と言えば薄情だ。
これまでは、いつも僕からお別れすることばかりだったが、これから僕がお別れされて残される側になるんだろうなと思う。
留めておくかどうかは自分の問題なのだ。
ちょっといい別れと出逢いがあったから、ふと思ってしまう。
ゲイとも自然に出逢えればいいんだけどな。
逢おうと思って逢うから駄目なんだろう。
でもそれだと逢えないまま歳だけとっちゃうんだよな。