古典の世界から現代までの「美」の基準の変化
動機:歴史の教科書などにみられる見返り美人と現代の女性のビジュアル美の基準が大いに異なっていることから、その美の基準の変化について気になったため。
1,時代ごとの美人の基準
<平安時代>
平安美人の美人は一般に、ぽっちゃりしている、肉付きがよくてぽてっとした丸い顔、雪のように白い肌、長くて艶のある綺麗な髪の毛が主な特徴である。
この時代は食べ物を満足に食べられる人が少なかったため、肉付きのよい女性が美人とされいた。平安時代の美人として有名なのが小野小町である。
<江戸時代>
日本画などに描かれていた美人の特徴は、肌が白い、切れ長の目、おちょぼ口等があげられ、他にも、指が長い、素足がきれい、髪を整えなくても美しいなどの特徴が挙げられる。
平安時代に比べると、指や足など顔以外の美しさが求められるようになり、美人の特徴が細かくなっていることが分かる。
<明治~現代>
明治から現代にかけては、大きな目や高い鼻、二重瞼のほうが美人と呼ばれるようになる。モデルなどにみられるようにぽっちゃりとした体形よりもスリムですらっとした体形が特徴となっている。しかし、現代の美は多様化しており、体形や顔のつくりによらずファッションを楽しんだりすることがこれまでと比べて型にはまらない美しさを追求できるようになっている。
2 変化の要因
Ⅰ社会的要因
時代ごとに異なる文化や価値観が美の基準に影響を与える。たとえば、平安時代の貴族文化では高貴さや優雅さが重視され、白粉や引き眉、お歯黒が美しいとされていた。一方、現代ではナチュラルな美しさや個性が重視されている。(文化と価値観の変化)
また武士階級が台頭した鎌倉時代から戦国時代には、実用的で健康的な美しさが重視されるようになった。江戸時代の町人文化の発展は、より多様な美的基準を生み出した。
Ⅱ経済的要因
経済成長により、人々の生活水準が向上し、ファッションや美容に費やす余裕が生まれた。これにより、美容製品やファッション雑誌が普及し、美的基準が広く共有されるようになった。(経済成長と消費文化)
また、経済のグローバル化に伴い、海外の美的基準やトレンドが日本にも影響を与えるようになった。特に明治以降の西洋文化の流入は、日本の美的基準に大きな影響を与えた。(グローバル化)
Ⅲ技術的要因
美容整形技術の進歩により、理想の美を追求する手段が増えた。特に、二重瞼の整形手術は現代の美的基準に大きな影響を与えた。(美容技術の進歩)また、テレビ、映画、インターネットなどのメディアの発展により、国内外の美的基準やトレンドが瞬時に広がるようになった。SNSの普及も個人の美意識に対して大きな意味をもたらした。(メディアの発展)
Ⅳ国際的な影響
明治時代以降、西洋の美的基準が日本にも浸透した。特に二重瞼や高い鼻などの西洋的な特徴が美しいとされるようになる。(西洋文化の影響)また、現代では、インターネットやSNSを通じて、世界中のファッションや美的トレンドが共有され、日本の美的基準にも影響を与えた。韓流ブームのその一例で、韓国の美容トレンドが日本に大きな影響を与えることとなった。(グローバルなファッションと美容トレンド)
これらの要因が複雑に絡み合いながら、日本における女性の美的基準は時代とともに変化していった。