【検証】「サウジアラビア」の人権問題を見て見ぬふりをする日本政府は、なぜ「中国」の“人権侵害”だけを問題視するのか


記事の概要

日付:2024年5月28日
著者:古賀 茂明
媒体:AERA dot.(株式会社朝日新聞出版)

要約

サウジアラビアのムハンマド皇太子(MBS)の訪日が、国王の健康状態悪化を理由に延期された。(中略)しかし、MBSは権力欲が強く、人権侵害や報道弾圧などの批判も受けている。
サウジアラビアの人権問題については、国際的な批判があるものの、日本のメディアはほとんど報じていない。岸田文雄首相はサウジとの関係強化を図る一方で、人権問題には触れていない。
記事では、サウジと中国の人権状況の比較も行われており、どちらも報道の自由度や自由度ランキングが非常に低いことが指摘されている。
米国や日本が中国を批判する一方で、サウジとの経済協力を進めていることが矛盾していると批判している。日本政府のダブルスタンダードな外交政策を問題視し、中国への強い嫌悪感を煽るメディアの報道姿勢も批判している。

検証

結論から言えば、日本政府がサウジアラビアの人権状況に言及しない理由は、ダブルスタンダードな外交政策によるものではない。国連による取扱の違いをそのまま反映しているだけである。

中国の人権状況は国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)が報告書を出している。直近では、新疆ウイグル自治区で「深刻な人権侵害」が行われていると指摘されている。中国はこの報告書に反発しており、改善の意思も見られないことから、現時点でも深刻な人権侵害は継続しているものと見るべきだろう。
一方で、サウジアラビアの人権状況について、OHCHRは6年前のジャーナリストのカショギ氏殺害事件時に報告書を出したものの、以降は死刑等に関してHPで述べられている程度である。
もちろんジャーナリストの殺害は憂慮されるべきことではあるが、民族全体に対する人権侵害と同レベルに扱うことはさすがに無理がある。

では、サウジアラビアの人権状況に懸念を示しているのは誰かと言うと、主にHRWやアムネスティなどの国際NGOである。古賀もサウジアラビアの人権状況を述べる時にこれらの国際NGOの主張を取り上げている。
もちろん、HRWやアムネスティなどの国際NGOが嘘をついているとか、プロパガンダを垂れ流しているとか、そのような主張をするつもりは無い。国際NGOの意見にも耳を傾けるべきではあるものの、やはり国連による報告書ほどの重要性、信頼性はないため、報告書の有無により政府の熱量が異なることは当然であると言うべきである。

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