持続可能な地域づくりのために。これからおこなうべきエネルギーを起点とした2つの取り組み
未来の子どもたちに、地域の美しい風景を受け継いでいくために、今私たちができることは何でしょうか。
那須野が原のみならず、多くの地域で「持続可能な地域づくり」が重要な課題となっています。
今回は、持続可能な地域づくりを実現するために、私たちがこれからどのような取り組みを進めていくべきか、また地元企業に課された役割について、お話ししたいと思います。
エネルギーから始まる地域産業創出
“持続可能な地域づくりの実現”を叶えるには、再生可能エネルギー(以下再エネ)開発と導入が必要不可欠です。私はさらにその再エネを活用して地域産業を創出することで、経済循環を生み出し、より豊かな地域社会を築くことができるのではないかと考えています。
再エネ活用のアイデアとしては、那須にバイオマス発電所をつくり、電気と熱を起点にした産業を創出する、そして那須を「水素の街」にするという2つのプランを思い描いています。
バイオマス発電所をつくり、電気と熱を起点に産業を創出
【畜産系バイオマス発電】
那須は日本で2番目の牛乳生産量を誇りますが、それと同時に牛の排泄物(糞尿)によって土壌汚染や臭気の問題が発生してしまっているんですね。この問題に対する一つの解決策として、私はその排泄物を利用したバイオマス発電所*の設立を考えています
*バイオマス発電とは:木材や農産物の廃棄物、家畜の排泄物、一般家庭から出る可燃ごみなどの生物資源を利用した発電方法
バイオマス発電所をつくり、原料として牛の排泄物を利用することで、原料コストをほとんどかけずに電気と熱を生み出すとともに、排泄物による土壌汚染や臭気問題を解決する道筋をつけることができるのです。
また、排泄物で電気を生み出す過程で生まれた残りカスの液体を“液肥”と言うのですが、液肥は農作物の肥料として再利用することができます。その肥料を使って地域で育てた農作物を那須野ヶ原のブランド野菜として売り出す……なんていうことも考えられますよね。
そうすると、ブランド野菜を求めて県外からお客さんが来るかもしれないですし、肥料自体をブランド化することで、地域内だけでなく近隣地域も巻き込んでブランド野菜を盛り上げることができるかもしれません。
そしてバイオマス発電では、電気とともに熱も生み出します。しかし畜産の盛んな青木地区に発電所を作ろうと考えた場合、その地域には熱を利用する産業が少ないため、熱が無駄になってしまいます。
そこで例えば、苺栽培のハウスを発電所の近くに導入し、熱を利用して苺栽培を行うのが良いのではと考えています。苺とミルクの相性は良いので、苺ソフトクリームなどの商品を共同で売り出して、苺農園と牧場を一緒に観光地化するのも面白そうですよね。
エネルギーを生み出し、農業そして観光へと繋げていく。那須は農業と観光の町なので、そことの親和性のある産業を創出するための施策を進めるのが良いと考えています。
エネルギー開発はまちづくりでもあり、地域産業づくりでもあるのです。
【木質バイオマス発電】
那須の山々には樹齢70〜80年のヒノキや杉が多く、すでに伐採の時期を迎えています。このまま放置すると、大雨の際に木の根ごと流される危険があり、これらの木材を地域でどのように活用していくかが課題の一つとなっています。
私はその解決策として、木質バイオマス発電の導入を提案しています。伐採された木材を燃料として活用し、電気と熱を生み出すことで、エネルギーを効率的に活用することができます。畜産系バイオマス発電所と同様に、地域の資源を使ってエネルギーを生み出す方法です。
また、ヒノキや杉を伐採した後の山には広葉樹を植え、山の治水能力を高めたいと考えています。最近では、クマやシカなどの野生動物が食料を求めて人里に降りてくるケースが増えていますが、広葉樹の森を作ることで、動物たちの食料不足を解消できるのではないでしょうか。これにより、人間と動物が共存できる地域づくりにも繋がります。
さらに、伐採された木材は単にバイオマス発電で燃やすだけでなく、那須らしさを感じさせる木工製品としても活用できます。
那須の自然と調和した木工製品を開発し、地域の魅力を高めると同時に、観光客に購入していただけるような事業展開も視野に入れています。未利用資源を価値あるものに変え、地域全体の活性化に繋げていきたいと考えています。
那須を「水素の街」に
那須の人々の生活は那須疏水と共にあります。
農業用水として那須の農業を支えているのはもちろんのこと、今では水力発電の動力としても活用されていますが、昔はその動力を精米・脱穀で利用していたという歴史もあります。
私は那須という地域を支えてきた那須疏水の次の時代の使い道として、「水素エネルギー」という新たな歴史を思い描いています。
那須が「水素の街」になったら面白いなと思うんです。
水素は水を電気で分解することによって生まれます。水素の原料の水は那須疏水にあり、その流れで電気が既に作られています。これを組み合わせることで水素を作ることができます。水素エネルギーは燃焼時にCO2を排出しない非常にクリーンな未来の燃料です。
那須疏水の水で農作物が育ち、水力発電で生まれた電気が街中で使われ、水素エネルギーを活用したバスやトラクターが走っている。
那須疏水から生まれたクリーンなエネルギーで、地域のエネルギーを賄えるようになったらとても素敵ですよね。
そんな未来をつくるためには、地域で水素をどううまく活用し、経済的に循環させるかが非常に重要になってきます。実際問題、クリーンエネルギーへのシフトにはコストがかかるのです。
例えば水素エネルギーの活用にバス会社が賛同してくれて、水素バスを導入したとしても、乗客の人数や1日の便数が変わらないと持続させることは難しいでしょう。
行政のサポートや地元企業との連携がないと経済的に回らず、地域で定着させるのは難しいのです。
それこそ、那須はクリーンなエネルギーや地域資源で地域経済が回っているという「持続可能な街」というブランドを強力に構築し、那須のイメージをアップすることが重要です。そして、観光客数を増やし、地域主幹産業である観光と農業を更に発展させる。地域経済をより強力に回すツールとしての再エネ・そして水素であるべきだと考えます。
しかし、1人ではできなくても複数のステークホルダーが関わり、緻密な経済循環の計画を立てることができれば、水素の街のビジョンを描くことができると私は思っています。
だからこそ、みらい電力や鈴木電機といった地元企業のリソースを使って、経済循環の仕組みをつくっていきたい、そしてそのビジョンに共感してくれる仲間を増やしていきたいと考えています。
もちろん、大きな投資は必要ですが、現在のエネルギー開発も先人たちの投資のおかげで成り立っています。私は、この計画の延長上に投資金額に見合う結果があると信じています。
“共感”が那須野ヶ原の未来をつくる
先ほど、地元企業のリソースを使って経済循環の仕組みをつくるといったことをお話しましたが、私が2022年に設立した電力会社『那須野ヶ原みらい電力』は、まさに“地域の経済と再生可能エネルギーの循環装置となること”を目標に掲げ、那須塩原市と協力しながら運営をしています。
現在のみらい電力の事業は、那須疏水でつくられた電気を市内の小学校などの公共施設へ販売していますが、これはまだまだ第一段階です。
2〜3年後には地域の一般の事業所、そして最終的には一般家庭にまで電力の販売を広げたいと考えています。
那須疏水でつくられた電気を地域の皆さんに購入していただき、そこで得た利益を先ほどお話した再エネを起点とした経済循環の仕組みづくりのために使っていく。それが会社としての目標であり、地域の資源を利用して事業をおこなう企業としての使命だと感じているからです。
もちろん、みらい電力の電気を買うということは、今購入している電力会社から切り替えを行っていただくということです。
価格については同等レベルで販売していますが、電力会社としてのブランド力では東京電力などの大手電力会社と比べると大きく差があるでしょう。
そんな中で、みらい電力を選んでいただく理由は“共感”しかないと考えています。
私たちは、みらい電力が思い描く那須野ヶ原の未来を具体的に発信することでそのビジョンに共感していただき、「地域課題を解決してくれるみらい電力だから買いたい」と思っていただけることを目指しています。
そしてその共感が、資源循環や経済循環を生み出し未来の“持続可能な那須野が原の実現”につながっていくと信じています。
鈴木電機 公式HP
那須野ヶ原みらい電力 公式HP
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